20. 山の上の都市
エレメントの街を出発して4日目、私はいま木も生えないほど高い山の上にいる。
なぜこんな場所にいるかというと、昨日チャオに作ってもらった『幻獣の抜け道』がここに通じていたからだ。
どうやら『幻獣の抜け道』はある程度の距離と方角は絞り込めるけど、どんな場所に出られるのかはわからないみたい。
幻獣が住めそうな場所に出るため、比較的モンスターのいない地域に出るんだけど、そこが人の暮らせるような地域であるとも限らないんだよね。
とりあえず、昨日はこの山の上でキャンプをしたけど、今日はどうしようか。
「リザーブ、ここがどの辺だかわかった?」
『はい。エアドローンによる調査の結果、エレメントの街から高速魔導車で10日ほど離れた場所にある高山とわかりました』
「エレメントの街から10日かぁ。だいぶ離れたなぁ」
『はい。もう追いかけてきていた者たちも追いつけないことでしょう』
リザーブの言う『高速魔導車』というのは、一般的な魔導車の倍はスピードの出る魔導車のことだ。
その高速魔導車で10日分も離れたということは、普通の魔導車で追いつけるような距離ではない。
距離ではないんだけど、これからどうするかなぁ。
「チャオ、ここからすぐに離れられる?」
「キュイ!」
「離れることは簡単なのか。どうしよう?」
『この周辺地域を調査して回ることを提案します』
「リザーブ?」
『この周辺地域はセントラルシステムの地図にも記載されていない地域です。なにか新しい発見があるかもしれません』
新しい発見か。
エクスプローラーとしてはそういうものも目指したいよね。
でも、問題は装備が貧弱なことかな。
だけど、リザーブはそこも大丈夫だという。
このような地域ではモンスターも生息できないだろうと。
『この周辺には植生がありません。食べる物がなければ動物が暮らすことはできず、それを餌にするモンスターも当然生息できません。注意すべきはゴーレムのような魔法生物ですが、そのような存在も極端に標高が高い山地にはほとんど生息しないことがわかっています。比較的脅威度の低い地域かと推測されます』
なるほど、この周辺にモンスターがいる可能性は低いんだ。
気を付けなければいけない相手はゴーレムくらいで、それならグレネードランチャーでなんとかなりそう。
足場まで崩れる危険は考慮しなくちゃいけないけれど、崖すれすれを走らなければ大丈夫だしね。
よし、周辺地域の調査をしてみよう。
とりあえず、なにをすればいいのかな?
『普通に走り回っていただければ周辺の情報を私が記録いたします。道が塞がれていけない場所にはエアドローンを飛ばして情報を得るといいでしょう』
なるほど、とにかく動き回ればいいのか。
ワイルドアンクレットなら多少勾配がきつくても登っていけるし、最悪アンカーを打ってウインチで引き上げることだってできる。
リザーブによれば未確認地域の情報はセントラルシステムに売ることで、いい報酬になるらしいし気合いを入れていこう!
「……とは思ったものの、あるのは岩の大地と壁、雲ひとつない青空だけだなぁ」
「キュウ……」
チャオはお昼寝をしている。
窓越しに差し込んでくる日差しがちょうどいい感じに当たって気持ちいいんだろう。
というか、私も気持ちがいい。
少し私もお昼寝したいかな。
『報告。この崖の裏側に人工物と思われる建物を発見いたしました』
「ふえっ!?」
ぽかぽか陽気で緩んでいた気分が一気に覚醒した。
こんな山の上に人工物!?
「それって本当なの、リザーブ!?」
『はい。崖の上に奇妙な物が確認できたため、エアドローンを調査に向かわせました。すると、そこには人間種サイズの生物が建造したと思われる建物が複数確認できました』
「こんなところに建造物って……モニターで確認できる?」
『はい。いまモニターに映します』
モニターにエアドローンからの映像が映し出される。
するとそこには、確かに石造りの建造物が建ち並んでいた。
ただ、それらの建造物は明らかに風化しており、手入れされなくなってからかなりの年月が経過しているみたいだ。
これって新しい遺跡かな?
「リザーブ、この都市まで行ける道はある?」
『現在調査中です。少なくとも崖沿いを通って行くのは困難でした。通れなくはありませんが、かなりぎりぎりの幅しかなく、お勧めできかねます』
リザーブが止めるってことは本当にぎりぎりなんだろうな。
私が走り回って調査するのもエアドローンの調査範囲を狭めるかもしれないから、停車してしばらく待つことにしよう。
それまで私もお昼寝っと。
起きるまでの間に都市へ繋がる道が見つかってるといいな。
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