15. サポートシステム『リザーブ』
翌朝、なにか湿った温かいものが私の頬をくすぐる。
こそばゆくて目を開けると、そこにはチャオがいた。
「ミャオ!」
「おはよう、チャオ。どうしたの?」
「キュ、ミャ!」
チャオはなにかを口に運ぶ仕草を見せる。
ああ、これは……。
「お腹が空いたの?」
「ニャ!」
正解とばかりに軽く跳び上がるチャオ。
そういえば、昨日の夜、なにも食べていないんだっけ。
眠気に負けて晩ご飯を食べなかったことを思い出したよ。
ああ、私もお腹が空いたな。
「チャオ、ちょっと待ってて。着替えるから。着替えが終わったら厨房に行ってみよう」
「キュ!」
私は飛びついてこようとしたチャオを空中で受け止め、なでながらベッドの上に戻す。
それから衣装ケースを開けて着替えだ。
村から着てきた服はもうぼろぼろだったため、処分していいかを聞かれたので処分してもらった。
代わりに私の衣装ケースには運転がしやすい細めのパンツに長袖のシャツ、その上に羽織るジャケットが何種類か収められている。
これはカーライル様が買い与えてくれた服だ。
この屋敷に出入りする以上、それなりの服装をしておけということらしい。
私からしてみれば命令のふりをしたプレゼントに思えてクスリとしてしまう。
ちょっと考えすぎかな?
私は黒のパンツに空色のシャツ、ネイビーのジャケットを取りだして着る。
これは最近の私の好みだ。
気分でシャツやジャケットの色は変えるけど、黒のパンツルックはほとんど変えない。
汚れが目立たないのはいいことである。
この仕事、結構汚れることがあるからね。
「すみません、朝食の用意ってもうできていますか?」
私は着替え終わったらチャオを連れて厨房まで行った。
そこでは何人もの料理人が今日の食事の準備に追われている。
うーん、声をかけちゃまずかったかな?
「おや、ルリさん。昨日の夜はお食事を取らなかったらしいですが、なにかありましたか?」
「あ、はい。お爺ちゃんの部屋にいたカーバンクルが逃げ出して探すことになってしまい、疲れたのでそのまま寝てしまいました」
「なるほど。朝食の用意はもうすぐできますので食堂にてお待ちください。……ところで、その肩に乗っている動物は?」
「カーバンクルです。私が飼うことになって」
「そうでしたか。その子の食事も一緒に運びます」
「よろしくお願いします」
食事の準備はほとんどできていたみたいだ。
あと、カーバンクルの食事も出てくるということは、チャオがこの屋敷に来たあとの食事も用意してくれていたのだろう。
説明が省けて助かるよ。
食堂で席に座り、10分ちょっと待つと料理が運ばれてきた。
今日もいい匂い。
「……あれ? この野菜と果物のお皿は?」
「カーバンクルの食事ですよ。調理してある物は嫌いらしく、生の野菜や果物を用意しています」
なるほど、これは覚えておかないと。
お昼は私が用意しなくちゃいけないからね。
私だけだったら、露店で買い食いすれば済むんだけど、チャオはそういうわけにもいかなさそう。
いいことを知ったな。
チャオが食事を食べている姿はなんだか一生懸命でかわいい。
食事が終わりお皿を下げたら、いよいよ朝の業務に出発だ。
チャオは部屋に置いていこうと思ったんだけど、私にしがみついて離れないので仕方なく連れて行くことにした。
ちょっと大丈夫か不安ではある。
なにせ、カーバンクルだしねぇ……。
『「GZ-5172 Type-W ワイルドアンクレット」始動を確認。HELLO WORLD.サポートシステム「シード」起動しました』
私がワイルドアンクレットに乗りエンジンをかけるとサポートシステムも起動する。
でも、チャオにはそれがわからないから急に聞こえてきた声に驚いて周りをキョロキョロ見回してるよ。
そういえば、前に乗せたときは瀕死のときだったっけ。
あの時のことはさすがに覚えてないか。
「大丈夫だよ、チャオ。私の魔導車のサポートシステムが起動しただけだから」
「キュウ?」
「ああ、サポートシステムって言ってもわからないか。私のことをいろいろ助けてくれる……仲間かな」
「キュ! キュキュ!」
私の説明が伝わったのか、チャオが飛び跳ねながらくるくる踊ってる。
サポートシステムを仲間だと感じてくれたのかな?
でも、それだと初期名称の『シード』じゃ味気ないな。
なにかサポートシステムにも新しい名前を……そうだ!
「ねえ、シード。あなたの名前って変更できるんだよね?」
『はい。変更可能です。変更なさいますか?』
「うん。『リザーブ』に変えて」
『承知しました。サポートシステム名変更プログラム実行……HELLO WORLD.サポートシステム「リザーブ」起動しました』
よし、これでサポートシステムの方も大丈夫。
さて、エクスプローラーズギルドに行って荷物の配達依頼を受けてこよう。
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