2. ピックアップワゴン「GZ-5000」
私はグローブボックスから魔導車の説明書を取りだした。
それを調べると、確かにサポートシステムの項目がある。
サポートシステムとは、その名前の通りドライバーをサポートするためのガイド役で魔導車の様々な管理状態から周囲の整地状況、サポートツールの使用まで行ってくれる万能なシステムらしい。
この魔導車に付いているサポートシステムの名前はシードらしいから、いろいろと聞いてみよう。
「初めまして、シード。私はルリ、お婆ちゃんの代わりに今日からあなたの主になった者よ」
『お婆ちゃん? メノウ様のお孫様ですか?』
「そう。お婆ちゃんが死んでからもう10年ほどが経つわ。あなたが動かなくなってからだと、もっと長い時間が経っているけど」
『年代情報を確認……エラー。私の停止期間が長すぎたため時代情報を取得できませんでした。正確な情報を入手するため、セントラルシステムへの接続を求めます』
「セントラルシステム?」
シードの説明によると、セントラルシステムとはシードのようなサポートシステムが集約され、情報交換をするための場所らしい。
一種の集会場みたいな感じなようだ。
そこに接続することでいろいろな情報を入手し、機能のアップデート、つまり強化もできるんだとか。
これはセントラルシステムに接続するしかないね!
でも、セントラルシステムってどこにあるんだろう?
『セントラルシステムは地域の中核都市であれば配備されているはずです。この近くですと、ステアにあるはずです』
「ステアかぁ、遠いなぁ」
ステアまでだと魔導バスで半月はかかる距離だ。
エレメントだと歩きでも2日なんだけど、さすがにステアは遠い。
エレメントにはないんだろうか?
『エレメントですか? そのような都市は記録にありません』
「えっ? この村のすぐ側にある大きな街だよ?」
『おそらく私が機能停止している間に作られた都市でしょう。もしかすると、そこにセントラルシステムがあるかもしれません』
「本当!? じゃあ、いますぐにでもエレメントに……」
『その前に「GZ-5000」の車体状況を確認させてください』
「あ、はい」
シードが確認してくれたところによると、この車体は結構ガタが来ているらしい。
まあ、長年放置してときどき磨くくらいしかしていなかったツケなんだろうけど、足回りに不具合が発生しているようだ。
タイヤはパンクしていないけど、サスペンションという部分がぼろぼろで衝撃をあまり吸収できないらしい。
あと、ギアボックスも壊れているらしく、単純な前進や後退はできるけど、複雑な挙動はできないそうだ。
それから、オプションパーツのエアドローンという物も壊れているらしい。
こちらは修理できそうもないので新しく購入するしかなさそうだ。
故障箇所は大体こんなところ。
続いて始まったのはこの「GZ-5000」という魔導車の機能についての説明だ。
この魔導車は「ピックアップワゴン」という車種で、後部に貨物を積むことができる。
積載量はいまの状態だとあまり多くはないみたいだけど、修理をすればかなり大型のモンスターも積むことができるらしい。
最大乗員は5人。
荷台と乗員部の間にはテントなどをしまっておける格納スペースがある。
もっとも、そこに積むテントもいまはないのだが。
ちなみにいまの車体は茶色である。
お婆ちゃんの趣味だったらしい。
最後にこの魔道車の最大の特徴は、悪路を走破することができるオフロードカーであるということだ。
いまでこそいろいろな機能が死んでいてまともに走れる状態ではないようだが、本来であれば荒野や砂漠、ぬかるんだ道などそういった場所を走行するのに向いている魔導車らしい。
そこは修理すればわかると言っていた。
やっぱり、なにをするにもまずは修理か。
うーん、修理するには先立つものが必要なんだよなぁ。
GZ-5000が動くようになるまでだって5年かけての貯金だったし。
だめで元々、お爺ちゃんに相談してみるか。
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