第48話 絶体絶命
ガブリエルの双剣がカンダタの首元に飛ぶ。その瞬間、鋭い風切音が彼の耳を捉えた。これは、喰らえばまずい。カンダタは後ろにのけぞってそれを回避する。だが、ガブリエルの攻撃は止まらない。剣を振り下ろした姿勢のまま、彼はカンダタを両足で蹴った。カンダタは咄嗟に両腕で十字架を作り出してそれをガードした。そのあまりの威力に、彼は後ろに大きく吹き飛ばされる。
その隙を、ガブリエルは見逃さない。彼はカンダタとの距離を急速に詰めると、剣を凄まじい速度で振り回し始めた。それに対して、カンダタは体を縦に回転させて避けると、即座に立ち上がり、自身の握る刀で襲い来る剣戟の嵐を弾いていく。
「ははっ!良い反応だ!じゃあこれは……どうだ?!」
ガブリエルは、ゲラゲラ笑いながら、徐々に剣戟の頻度を加速させ始めた。その刃の嵐に、カンダタは思わず後ろに下がる。
「はは!死なねえか!じゃこれは!?これは?!これはぁぁぁぁ?!!!!」
悍ましい笑顔を浮かべながら、ガブリエルは次々と攻撃を繰り出す。その凄まじい速度で繰り出される攻撃に対応できず、カンダタは後方の倉庫の壁に叩きつけられた。
「おいおい……見てたんだぜ?俺の部下をぶっ倒したんだろ?さっさと立ち上がれ、カンダタ。」
この天使、あの戦いを見てやがったのか。こいつには、生半可なやり方じゃ叶わねえ。カンダタは立ち上がると、自身の瘴気を解き放った。
「なるほどな……中々どうして強えじゃねえの。じゃ、行くぜ?」
ガブリエルも、それに応えるように瘴気を放つ。だがその瘴気は、カンダタの体に纏われているものをはるかに超えていた。続けて、彼は神性を放つ。もはや自身とは比べる事さえ烏滸がましい程のオーラに、カンダタはガタガタと震え始める。恐怖しているのか、俺は。
「良いぜ、カンダタ。お前の全身全霊を見せてみろ。」
ガブリエルはクイ、と右手の指を動かし、カンダタを挑発した。ギリ、と彼は歯を食いしばる。舐めやがって、やってやろうじゃねえか。彼は刀を握りしめると、地面を強く踏み込み、ガブリエルに向かっていく。ここまでのウリエルとの修行で、俺も強くなってる筈だ。このまま、終わらせてやる。ガキィィィン、と激しい金属音が鳴る。剣でガードされたのか、とカンダタは思う。だが、実際は違った。ガブリエルの首に、その刀は受け止められていたのだ。そんな、馬鹿な。傷一つ、つけられないというのか。
「はぁ……この程度か、カンダタ。」
ガブリエルはため息をつくと、落胆した表情をカンダタに向ける。体が動かない。そのくせ心臓はバクバクと鳴っている。どうすれば……どうすれば……カンダタは必死で考える。だが、やはり臆する体は動いてくれない。そうする間に、カンダタの首は、ガブリエルの双剣に貫かれていた。
「あ……」
小さい声を漏らし、カンダタは倒れる。
「残念だよ、カンダタ。この程度だとはな。俺をもっと強くしてくれるかと思ったんだが……。まあ仕方ない。そのままくたばってくれ。」
ガブリエルははあ、とため息をつくと、倒れ込むカンダタに背中を向けた。
……………………………………………
「くそ!なんなんだ……なんなんだこいつは!」
美琴はミカエルに拳を振るが、それは空を切った。先ほどまでいたはずの彼の姿はどこにもない。周囲でメラメラと舞う炎は、徐々に気温を上昇させていく。
「この……!」
牛頭と馬頭は、同様に武器を振る。しかし、やはりそれは空を切ってしまう。
「焦ると良いことはありませんよ、3人とも。」
3人の死角から、ミカエルは話しかける。
「くそ!」
3人は同時に攻撃するが、やはり彼は姿を消してしまう。美琴は、納言の死体に目を運ぶ。彼の体はメラメラと燃え、その場に横たわっている。体が燃えるのでは、再生も間に合わないだろう。
「あら、よそ見ですか?……それは良くない。」
ミカエルはその隙を見計らうと、牛頭と馬頭の頭を掴み、隣の倉庫の壁に強く叩きつけた。
「大丈夫です、楽に殺して差し上げましょう。」
ミカエルは、その場に倒れる2人に向けて、自身の握る剣を振り下ろす。
「やめろぉぉぉ!!」
その剣は、間に割って入った美琴によって阻止された。だが、燃え盛る剣のダメージは、彼とて防ぐことはできない。剣を受け止めた彼の拳は、ジュゥゥゥ、と音を立てて焼けこげていく。
「クソ!」
美琴はもう片方の腕を振り回し、ミカエルとの距離を作る。
「はあ……はあ……!」
凄まじい痛みが、彼の拳に走った。ウリエルの炎とは違う、持続的にダメージを与える炎。それはジワジワと彼の体力を削っていく。
「なるほど……貴方がたは思ったよりも厄介ですね。では……私も本気で行きましょうか。擬似固有神器解放・
ミカエルの剣は、さらに燃え盛る。何が起きるんだ、と周囲が身構えたその時だった。ミカエルが分身し、20体以上の数で3人を取り囲んだのだ。
「そんな……馬鹿な……」
ミカエル達は一斉に襲いかかると、3人の腹部を次々と突き刺していく。そこからは血液すらも垂れる事はない。何故なら、炎の熱で焼けこげてしまったのだから。その場に倒れ込んだ3人は、もはやピクリとも動かなかった。
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