第92話

 片足と仲間3人を失ったハンターたちが駆け込んだのは、超人付属部隊の詰め所として提供された建物だった。


 その中に入ると、遺跡の中に地雷が仕掛けてあり、ハンターを殺すために仕掛けられていた! と、嘘を吐いていた。


 そのほかにも、自分たちの都合のいいように情報を捻じ曲げ、仲間3人を殺した地雷を仕掛けたハンターを探すように喚いていた。


 仲間を殺したのは、お前たちだろ。1人はモンスターに殺されてたけど、残りの2人はお前たちがフレンドリーファイヤで殺したんだろうが……


 半信半疑のまま行動を開始する超人付属部隊の隊長。遺跡の情報をギルドから引き出すようにと命令していた。


 すぐにハンターギルドへ乗り込んだ超人付属部隊は、受付の人間を脅して情報を引き出そうとした。


 すぐにギルドの暗部が動き、その行動は阻止されるが、次に超人付属部隊が銃を取り出したため、話がさらにややこしくなった。


 超人部隊は、遺跡の情報を渡さなければ発砲すると喚くが、すでに暗部以外のギルド職員は退避しており、完全に敵対行動に入っていた。


 おそらくギルドマスターは、このことを予想しており、何かがあったときには逃げるようにと、命令を出していたのだろう。俺たちがリークした情報を信じて、よくここまで動いたな。


 それ以外にも、軍が動いており、全身義体の街に命をささげた軍人が、ハンターギルドへ向かっていた。


 同時に、超人とその弟子たちにも連絡がいっており、めんどくさいと言いながら行動を開始していた。


 直接行動を起こしていた超人付属部隊の隊員以外に、情報収集のためにハッキングまで始めた隊員がいた。


 こいつら、自分たちのためなら、犯罪はしても問題ないとでも思っているのか?


「ナビィ、可能な限りあのハッキングを邪魔できるか?」


『あの程度なら、すべての情報をシャットアウトしてあげるわ』


 すげえ自信だな。こちらの情報を一切残さずに、情報のリークを簡単にやってのけるナビィなら、この程度朝飯前なのかもな。


 ハッキングチームなのか、そこに映し出されているハンターたちは、1人残らず悔しそうな顔をしているので、ナビィに完封されているのだろう。


 ギルドマスターへ、超人付属部隊の人間にハッキングされているから注意だと追加で情報を流すと、ギルドマスターはどこかへ連絡を入れた。


 次の瞬間、超人付属部隊のいるエリアが停電となった。


 この街は、ブロック式でも採用しているのか、一部の電源を簡単に落とすことが出来るらしい。


 軍の別動隊が超人付属部隊のいる建物を囲んでおり、抵抗するなと警告している。


 ギルドには持ち出さなかったが、超人付属部隊の方には装甲車だけではなく、巨大な強化外骨格……ロボットのようなものまで持ち出していた。


 こんな装備もあるんだな……


 超人付属部隊の方は、これで決着がついたようだが、ギルドのほうは依然緊張感があふれていた。


 暗部と実行部隊の睨み合いが続いていると、ギルドの入り口に超人とその弟子が軍の人間と一緒に入ってきた。


『お前ら、何してんだよ?』


 超人から放たれた言葉は、付属部隊の実行部隊へ向けて言われたのだが、実行部隊のハンターは自分たちを助けるための言葉だと勘違いし、ギルドがいかに悪いか、自分たちの視点で見たもの並べて言っていた。


 超人の弟子たちは、溜息を吐いて一番近くにいた実行部隊の人間の頭を飛ばした。同時に2人の仲間が、弟子たちに殺され混乱した実行部隊のハンターが、銃を撃ち始めた。


 暗部が取り押さえようとする前に、残っていた実行部隊の6人の手足が切れた。


 動いたのは超人で、その場で剣を振るって、一番離れていたハンターで15mほどの距離を、無かったものとして切り飛ばしたようだ。


 ナビィもその姿には絶句しており、どういった物理現象で起こった奇跡なのか……


 手足を切られ、強制的に大人しくさせられたハンターたちに、弟子たちが色々な質問を始めた。


 それと同時に、ギルドマスターが現れ、


『できるだけ、トラブルは起こさないでほしいとお願いしておいた初日に、何があったんですかね?』


 俺たちから情報をリークしているので、すべてを知っているのに、あえて知らないふりをするようだ。


 超人もその弟子たちも、現状がつかめていないので、聞いているところだから待ってほしいと。


 全容が分かり始めたところに、超人付属部隊の隊長が軍によってギルドへ到着した。


 話を聞いた超人は、


『てめえらが偉いんじゃなくて俺が偉いのに、なんでお前らが威張ってんだ? しかも、勝手に俺の名前を使って脅すとか、俺のことをなめてるのか?』


 と切れていた。


 超人付属部隊は、超人が所属している組織が超人のサポートにつけるだけであって、この部隊自体には何も権利はない。だけど、困ったときに派遣される部隊であるため、多少のやんちゃは許す傾向にある。


 それで調子に乗ったのか、今回のようなことをしでかした……というのが、今回の大まかな経緯ということだ。


『で、お前らは、勝手に遺跡探索に行って、片足と仲間が死んだから、遺跡に地雷を仕掛けた人間を探しに来たと……馬鹿かお前ら?


 職務中に勝手に持ち場を離れたことも問題だが、未探索の遺跡は発見者以外に、ギルドから依頼を受けたものしか入ってはいけないという、ルールがあるのに勝手したお前らが全面的に悪いだろうが』


 未探索の遺跡にも種類があり、巨大な遺跡でない限りは、発見者か依頼を受けたハンターしか入ってはいけないという、ルールがあるんだとか。俺は知らなかったよ。


 俺が初めて発見した遺跡は、規模的には巨大ではないが、中身を考えると巨大な遺跡と遜色がなかったため、ギルドの指示に従わず大きなグループが動く可能性が高かったので、回りくどい手法をとったのだ。


『無断で遺跡に行った2人は、後で犯罪者として引き渡す。どうせ片足がなく金もないから、奴隷兵にでもしてくれ。この前の氾濫モドキで酷使して、今メンテナンスをしてるって話だからな、ちょうどいいだろ』


 超人のその一言で、片足を失ったハンター2人は奴隷兵になることが決定した。


『銃を撃ったこの6人も、そちらの隙にしてくれていい。奴隷兵でも脳だけ取り出してどこかの管理をさせるのも、自由にしてくれ。命令を出したこいつだけは、こっちで回収したいからな』


 なるほど。超人としては、隊長だけは何とか連れ帰りたいから、他の奴らを売り飛ばしてでも連れていきたいわけか。


『すまないね。こちらの依頼で派遣されてきたのに、面倒ごとが増えてしまったな。数が減っても、問題なさそうなのかな?』


『銃が使える人間が減るのは困るが、犯罪を犯すような奴らを使うのはどうかと思うからな。何人か、射撃の上手いハンターを借りたいところだな。銃はこっちで用意するから、腕だけよければ問題ない』


 超人って、危ない人間ばかりと聞いていたけど、実際はそうでもないのかな?


『リュウ、アルファ、こいつは超人の中でも、善良な方だからまだいいけど、危ない奴になると目が合うだけで撃たれるらしいわ』


 善良な超人だから、こういった街の支援に回されてんだろうな。事前の話と違いすぎて驚いたわ。ナビィの言ってたのは、付属部隊の方だったんだな。


『いえ、この部隊の情報はそこまで集めておらず、他の超人と一緒だと思ってしまったのが今回のミスです』


 ナビィにもミスがあるのか……なんてどうでもいいことを考えながら、この先どうなるか不安な思いでいっぱいになっていた。



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