第91話
とりあえず、シルバーブレッドのお姉さんにギルドへ連絡するように言われたので、伝えようと思ったが……ギルドに連絡するよりは、ギルドマスターの方がいいだろうと思い、連絡を入れる。
『また君か? 何かあったのか?』
「いや、いつも行っている武器屋で、今日の依頼で地雷を使ったことを話したら、念のためにもう一度連絡をしておくように言われたから、連絡しただけだけど?」
『それなら、ギルドの受付でもよかっただろうが……』
「さっきの件もあったから、受付よりは直通のマスターでいいかなって思って、あんたに連絡した」
『これでも、この街のハンターギルドでは、一番偉いんだがな……』
「それなら、受付の人にしっかりと指導しておいてくれればいいと思いますよ」
黙り込んだマスターから、何かを打ち込んでいる音が聞こえた。
『注意事項にデカく、地雷が残っていることを書いておいた。これで地雷を爆発させる奴は、タダの馬鹿だな。そもそも遺跡にも、その類のトラップはあるから、気をつけられないのは、ハンターの資格がない奴だろうな』
私は忙しいから、もう切ると言ってサクッと電話が切られた。
『購入した地雷は、モンスター用に設計されているので、ハンターの持つ調査機であれば、すぐに見つけられるものなので、何かあったとしてもリュウたちの所為ではないと思います』
ナビィが補足で教えてくれた。あの地雷は、人間には見つけやすく作られてるんだな。
そう考えると……何やら違和感を感じるようになった。
「あ~これ、よくないことが起こる可能性があるな……」
狙われていた時のような、不安にさせるような違和感だ。
「ナビィ、この端末があれば、ハッキングして書き換えることってできるか?」
『問題ないですけど、何か書き換えたいものがあるのですか?』
「ギルド内で処理するようなことを言っていたけど、依頼書のようなものがあるっぽいんだ。それに、最上級の注意書きをしてもらいたいんだけど、出来ないかな?」
『そのくらいなら簡単よ。あのおじさんのアクセス履歴を調べて……これね。ここに、以前にあった最上級の注意書きを真似して……これで良し。書き換えておいたわ』
ナビィに手伝ってもらったが、違和感が消えることがなかった。
人の話を聞かない奴が、この依頼を受けるのか? 地図にも地雷って書いてあるし、依頼の注意書きにも地雷のことは書いてあるし、これで地雷を爆発させたらただの馬鹿だろ……
それなのに、この違和感がなくならないのは、なんでだ!
これは、おそらくあの遺跡で地雷に関する何かが起こるということあろう。俺が交渉して、先にその依頼を受けられれば……
あっ、俺の武器じゃどうにもならないから、中級でもあのランク3モンスターに対抗できる武器持ちを選ぶとか言ってたっけ。
絶対に面倒なことになるのは、決定事項のようなものだな。
トラブルになる相手は知っておきたいから、ナビィに監視を頼むことにした。この依頼を受けるハンターが、どんなハンターなのか……
『リュウ、拙いです。超人の付属部隊が、装甲ウルフの話を聞いて、未探索の遺跡があることを知って、一部のハンターたちが暇つぶしと言って、すでに遺跡へ向かっているようです』
くそが! 話をしたから違和感が発生したんじゃなくて、そのタイミングで遺跡に向かってやがったのか!
このことでギルドマスターへ連絡しても、どうやって知ったのか問い詰められる……それなら、例の方法を使うか。
「ナビィ、もう一仕事頼む。この街の軍とハンターギルドに、無許可でギルドの管理している未探索の遺跡に、超人付属部隊の一部のハンターが向かったと情報をリークしてくれ。前の時のように頼む」
全開使った手口と同じようであれば、信憑性は高くすぐに行動に移してくれるだろうという考えだ。
リークしてもらっている間に、家に着いた。
銃を分解して問題がないか確認し、組み立て直し発砲前までの手順をなぞり、問題ないことを再確認する。
『リュウ、どうやらギルドマスターが暗部を動かすみたい』
暗部? と思ったら、この前トラブルが起きた時に、マスターの護衛をしていた奴らのことらしい。特級戦力だな。超人には及ばないが、かなりの戦闘能力を有している人たちか。
『それでも、もう遺跡に到着してしまったので、戻ってきてからの確保にするようです』
もう到着したのか……
「遺跡に到着したハンターたちの映像は見れる?」
ナビィが手を振ると、ハンターたちの映像が映し出される。
ハンターは5人、武器に関しては超人付属部隊に支給されているもので、俺の武器より3ランクほど上の武器らしい。これなら、装甲ウルフの強化版でもなんとかなるだろうな。
5人全員で遺跡へ入っていき、十字路へ到着した。
警戒する様子もなく、ランク3のモンスターが俺を追いかけてきた時に、地雷が爆発した跡をみて、キレイな道の方へ進もうと移動を開始した。
あ~、馬鹿が……
そうすると、2人目が地雷のセンサーに引っかかったのか、その時点で地雷が爆発した。
その爆発で、先頭の2人の片足が吹っ飛んだ。
これがトラブルの原因か……
片足が吹っ飛ばされた2人は、罵声を吐いているがその声に反応して、俺がまだ探索していなかった場所から、3匹のモンスターが走ってきていた。
ナビィの視覚支援……これは、ナビィの能力ですべてが見えるようになっているので、視覚支援とは違うか。
まぁ、全体を把握できるようになっており、モンスターがいることも把握できていたのだ。
そのモンスターは、ランク3の俺を追っかけてきたモンスターとは別の個体で、通常の進化を遂げた個体が1匹いた。
先頭を走っているのがランク3で、モンスターの存在に気付きハンターが振り返ったときには、すでに首に嚙みついており、すでに死んでいた。
片足をなくした2人は、パニックに陥っており、モンスターと一緒に仲間を撃ち殺していた……
生き残ったのは、片足を失った2人のハンター。
しばらくして冷静になった2人は、片足で跳び刎ねながら出口までもどり、何とか車へ乗り込んで街へ帰ってきた。
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