第90話

「刀であんな硬そうなモンスターの体を落とすなんて、本当に意味が分からないな。しかも、切ったのが弟子だからあの程度だけど、本人だったら多分細切れにされていただろうね」


 切ることが出来る刀だったとしても、初めは切ることが出来ていなかったから、切るためには技術が必要なのも理解している。


 あの人たちが振る刀は、俺の銃よりはるかに強いってことだよな。


『リュウがあれをできるようになるには、少なくとも今より高性能な強化外骨格を着て、刀を振ることに慣れる必要があるでしょう』


 パワーアシストだけでは、どうにもならない世界ということらしい。太刀筋を考えて振れない限りは、あのモンスターのことは切れないだろうだとさ。


 超人は、あれより硬いモンスターを簡単に切るらしいけど、本当にどういう原理なんだろうな……力と硬い武器で、力任せに破壊するならまだわかるけど、キレイに切り裂くのは本当に意味が分からん。


「さて、今回の探索の依頼だが、これで終了とする。遺跡で得た情報を提出して、報酬を受け取ってくれ。全部を調べ終わっていないと思うが、今回はギルドの失敗もあるから、あとはこちらで引き継ぐ」


 逃げてくる前までに収集した遺跡の情報をギルドマスターへ送り、確認をしてもらう。


「思ったより深かったんだな。それと、君が装甲ウルフと呼んだモンスターの一部を持ち帰っているんだよな? なら、帰りにそれを倉庫に提出しといてくれ」


 すっかり忘れていたが、体の一部でもかなり重かったあいつの頭とかを持ち帰ってきたのを思い出して、終わったら倉庫へ持っていく必要があるそうだ。ここで引き取ってもらいたいけど、無理だってさ。


「他のハンターにも見習わせたいな。途中とは聞いていたが、十分まとまっていたから、これ以上の報告は必要ないぞ。っと、超人と弟子の2人は問題ないが、ついてきている部隊は面倒な奴らが多いから注意しろよ」


 そういえば、あの3人は特に嫌な感じはしなかったな。問題は、超人や弟子ではなく、その付属でついてきている部隊のハンターだったのか。


 最初からそういう風に聞いていたけど、てっきり超人がトラブルを起こしているのかと勘違いしていたわ。


 ナビィに付属の部隊の人間をマークしてもらって驚いたが、結構な数がいて驚いた。


 ハンターだけではなく、部隊の人間全員なので100人を超える数がマークされたようだ。ハンターの色だけは、濃くしておいてもらおう。


 ハンターは、ギルドに併設されている飲食ができる場所にたむろっているな……あの近くを通らないようにすればいいか。


 ギルドマスターの執務室から出て、受付に話をしてから、一度ギルドの外へ出て倉庫へ向かった。


 ギルドの中を移動して倉庫へ行くこともできるが、そうするとハンターたちの近くを通る必要があるので、そこを通る選択肢はなかった。


 受付で話をしている時に、お前らの尻拭いに来てるんだから、ここの代金を払えよ! とか、恫喝まがいのセリフが何種類も聞こえてきたからな。


 まるで自分たちが処理するかの如く言ってはいるが、実際に戦うのはあの人たち3人だろ……サポートのお前たちが、なんで粋がってるのか理解できなかった。


 倉庫に入って、受け取りの人に、過去に報告があった希少種の体の一部だと伝え、重たい体の一部を取り出して渡す。


 鑑定人たちも驚いていたが、データを調べてこいつが重たい理由をすぐに理解していた。


 たとえるなら、紙の本を持ったつもりが、中身が全部金属でできていたような重さなので、ギャップにビックリするんだよな。


 超人の弟子たちが倒したモンスターも、こいつと同じかそれ以上に重い可能性が高いな。


 用事が終わったので出ていこうとすると、ギルドの受付の人が倉庫へ走りこんできた。


 回収班の職員に、街のすぐ近くにモンスターの死骸があるから、この座標に回収しに行くように指示が出たようだ。


 強化外骨格がなければ持ち上げられないらしく、同行してくれるハンターを探しているが、持っているハンターはこの時間にここへいることは少ない。まだ仕事をしている最中だろう。


 となると、俺がいるけど周りには強化外骨格のことは知られたくないので、無視を決め込む。


 付属の部隊の人間に頼めばいいのでは? と思ったが、あいつらは武器だけを支給されているハンターで、強化外骨格なんて言う高価なものは身に着けていないんだとか。


 何をサポートしているのかわからんが、装備していないのだから仕方がないよな。


 いくら探しても見つからなかったようで、ギルド職員はハンターに依頼するのをあきらめ、市場で義体化している運送屋へ連絡を入れ、同行をお願いしていた。


 向こうも仕事なので嫌もなく、30分もあれば終わる仕事でお金ももらえるわけで、すぐに出発していった。ハンターのほうが安く上がるから探していたようだが、大した額じゃないから外部に依頼した形になったな。


 っと、早く出ないと超人とその弟子たちに遭遇しそうなので、足早に帰路へ着いた。



「いらっしゃ~……君か。今日も補充かな?」


 補充することになった物を聞いて、驚かれてしまった。普段より多めに弾を使ったが、それ以上に地雷を全部使い切ったことに驚かれた。


 まぁ、回収できる地雷を全部使い切ってしまったと言われれば、どんなことに使ったのか気になるよな。


 守秘事項でもなかったので、今回の依頼の話をしてランク3が生まれたから、全部置いて逃げ出してきたことを話した。


 それで納得してもらえたが、ギルドに遺跡の中に地雷を仕掛けたことを、再度伝えるように念を押されて、店を出た。



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