第89話

 街の城壁が見えるところまで到着する。


 もう少し走れば街に着くというところで、ナビィが


『もう追いつかれることはないと思いますが、すぐ近くまでモンスターが迫ってきてますので、最後まで走り抜けてください』


 街に近づくにつれて違和感があった。襲われるとかいう違和感ではなく、俺と街の間に何かがいるようだ。


 視界のサポートで、3人が街からこちらに向かって歩いてきているのが分かった。


 中心にいるのが超人の人で、左右の2人がサポート役の人たちだろうか?


 少し遠い位置からだが、大きな声で


「今から走り抜けますが、大丈夫ですか?」


「おう、問題ない。新人なのにお疲れさん。後はこっちでやっとくわ」


 真ん中の人が、簡単に答えているが大きな声を出している様子もなく、自分たちに声が届いたのを不思議に感じたが、3人の横を通り抜け街の中へ向かう。


「おっと、そのままハンターギルドに向かうんだぞ」


 超人って、もっと危ない奴かと思ってたけど、思っている以上に気さくな人だったな。


 走り抜けた後は、ナビィがこの3人をモニターしてくれたので、その後の行動や言動を知ることが出来た。


「ギルドの情報では、さっきの小僧の持ってたFLAR-11の強化弾や、貫通弾、発火弾が効かない可能性のある、堅いランク3のモンスターってことだ。お前たちにはちょうどいい相手だろうから、頑張れよ」


 おそらく超人が、お供の2人に倒すように言っていた。


「ちょっと、下手したらランク4以上に硬いモンスターってことじゃないっすか? そんな奴に、この刀通じるっすか?」


 あれ? サポートの人間は、銃器を使っているような話だったけど、この人たちはサポートの人員じゃないのか?


「素材的には、俺の持ってる刀と変わらないから、切れるにきまってるだろ。この刀なら、領域守護者の体だって切り裂けるわ。きれなかったら、お前の技量が低いだけだ。精進するしかないな」


 なんか、超人が鍛えているような感じか? もしかして弟子みたいなものか?


『アルファの考えが正しいようですね。彼らは、サポート役の人員ではなく、弟子みたいな扱いで近くにいるようです』


 ってか、刀で戦える時点で、俺たちより明らかに強いってことだよな……



『補足ですが、中級ハンタートップで、ランク3のモンスターと戦うようになるそうです。初級から中級の半ばまでは、ランク2までのモンスターが基本的に対象になるようです』


 モンスターによって討伐レベルが違うので、一律同じではないようだ。


 ウルフであれば、中級トップでなくともランク3と戦うことはあるが、重量級でパワータイプのベア系は、ランク2だったとしても中級トップが苦戦するくらいは強いらしい。


 ベア系のモンスターは、モンスターの領域か領域守護者の領域にいるのが基本なので、領域の中に入るような依頼を受けられない、中級半ば以下のハンターは、遭遇することはほぼない。


 ほぼというのは、たまにはぐれたモンスターがいて、運悪くそいつに出くわす可能性があるそうだ。


 それにしても、どういう原理なのか、俺だとナビィのサポートがあって、やっと見える距離の追いかけてきたモンスターを、この3人は機材を使わずに認識しているみたいだ。


 その証拠に、


「師匠、動きはそんなに早くないみたいですけど、めっちゃ堅そうですよ」


「こいつくらい切れないと、領域には連れていけないぞ。ここまで硬い奴はそういないと思うが、領域内のランク3~4なら匹敵するくらい硬くなる奴らがいるから、時間がかかってもいいから切り殺せよ」


 いくら銃弾より優れた素材の刀だとしても、人の力で切って何とかなるもんなのか? ナビィの情報だと、俺の強化外骨格より高性能の物を着ているようだけど、しょせんは人が振るう刀だぞ……


 3人とモンスターが遭遇するより先に、俺がハンターギルドに到着した。


 ギルドマスターがにこやかにこちらを見ている横で、顔を青くしている若い受付嬢がいる。俺の対応をした新人だな。若いといっても、リュウよりだいぶ上なんだけどな。


「おかえり、災難だったね。話を聞く前に、私の部屋へ移動しようか」


 ギルドマスターの執務室へ移動するようだな。


「極稀にしかない事例だったから、新人には教えれていなかったんだ。本当に申し訳ない。教育できていなかった私の所為でもあるから、この子には何の罪もないから許してやってほしい」


「死ぬか生きるかの状況だったから、言葉も悪かったと思う。それでお互い様ってことでいいんじゃないか? だけど、1つ言っておくなら、相手が必死に訴えているなら、他の人に相談するくらいはした方がいいと思うぞ」


 新人が自分で考えて自分で対応したからこうなったのであって、近くにいた先輩に助言を求めれば、もっと違う結果になったはずだからな。


 それはギルドマスターも理解しているようで、街の外から連絡が来た場合は特に、1人で判断せずに複数名で判断できるようなスキームを組み立てると言っていた。


 もう一度受付嬢に頭を下げさせると、受付嬢に退出するように指示が出た。


「今回の件は本当に済まなかった。まさかランク3に進化する直前のモンスターがいるなんて、思いもよらなかったんだ。信じてほしい。っと、そろそろあの3人が戦うようだな」


 どこかからの連絡を受けると、テレビの電源を入れた。


 そこには、ナビィほどではないが、3人の姿が映し出されており、もうすぐモンスターと接敵するようだ。


 超人のいるところまで通られたら、超人が切るんだろうな。原理は分からないけど、領域守護者ですら刀で切る変人さんみたいだからな。


 最初の1手で、弟子2人が装甲ウルフの上位種のような奴を切りつけるが、一番柔らかいと思っていた腹の部分に、わずかな傷しかつけられていなかった。


「弟子の刀ですら、あの傷か……お前さん、本当に逃げてきて助かったな。あれを倒すには、最低でも今使っている銃の2ランクは上の銃を使わないと、ダメージすら与えられなかったと思うぞ」


 そんなに硬かったのか……カスタムのほうは実質1ランク上の扱いになるから、カスタムより1ランク上の銃が必要だったということだな。


「強化徹甲弾あたりでやっとってところだろうな。中級にならなければ買えない銃だな。本当にお前はついていたと思うぞ」


 会話をしている間にも、弟子2人と強化装甲ウルフが戦いを続け、堅さに慣れてきたのか、傷が少しずつ大きくなっていき、10回ほど切るころには、足を切り落としていた。


 硬さに慣れるって意味不明なのだが……



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