第88話

 自重以外にも、アーマーやバックパックのリュック、その中に食料など、他にもFLAR-11が2丁。強化外骨格のパワーアシストがあるとはいえ、自分の体重と同じかそれ以上の重量を身に着けて走っている。


 普通の人間だったら、自分と同等の重さを背負って走り続けるなど、不可能だろう。そう考えると、強化外骨格ってすごいな。


『今の速度で走り続ければ、おそらく1時間後には街に到着するわ。40分後には、リュウの通信機でも通信可能圏内に入るので、ギルドへ連絡を入れるのがいいと思います』


 確かに、先に連絡を入れられるなら、ギルドが対応しやすいか……


『いえ、そうではありません。おそらくですが、あの進化したモンスターがこちらを追って、入り口の瓦礫をどかしてくる可能性があります』


 マジか……逃げ切ったと思ったが、まだ追いかけられる可能性があるのか。


 長距離を走るコツは、回復と走る体力がある程度釣り合っているところで、全力で走るということだと思っている。


 釣り合っている状態と言っても、徐々に体力は減っていっている。


 それでも走り続けられるラインで、走り続けるのがコツだとアルファは考えている。


 マラソン選手は走り切れば終わりだが、俺たちは走り切った後に行動を行さにといけない。下手したら、途中で追い付かれてモンスターと戦わなければならないのだ。


 体力をすべて使い切るような走り方はできない。


 体力に関しては、強化外骨格のパワーアシストで問題はない。だけど今回のケースに関しては、パワーアシストを使うのは諸刃の刃だったりもする。


 1時間ほどで到着できるとは言え、強化外骨格のエネルギーを使い切る勢いでエネルギーを使っているので、切れた瞬間に動けなくなってしまう。


 体力的な問題ではなく、重量的な問題でパワーアシストがなければ、動けなくなるということだ。


「ナビィ、途中でエネルギーを入れ替える時間はあると思うか?」


『何とも言えませんが、今入れ替えたところで大して効果はないと思います。行動時間が変わっても10分程度かと』


「10分でもかなり違うが……いや、その10分でも、かなり貴重な時間になるはずだ! 今スグに交換する! ナビィ、条件に合う場所を見つけたらマークを頼む」


 ナビィに条件を言い、その条件に合った場所を探させる。


 条件と言ってもそう難しいものではない。リュックを下ろすという行為をしたくなかったので、腰を下ろした時にリュックも一緒に乗るような場所を探してもらったのだ。


 交換に置いてネックになるのが、背負っている荷物なのだ。この重さがあるせいで、パワーアシストが切れると動けなくなってしまうためだ。


 アーマーも問題ではあるが、こいつは体を守るために大切なもので、泣き言は言っていられない。


 座った際に荷物が安定する場所なら、アーマーの重さだけになるので、動くことは問題なくなる。


 20分後にちょうどいい場所があるようだ。


 思ったより良い位置にあったな。違うか、交換後の稼働時間を考えて、ここらへんで交換させようってことだろう。


 その場所へたどり着き、エネルギーパックを取り出して、交換していく。


 交換したパックをリュックに突っ込み、街へ向けて走り始める。


『リュウ、アルファ、例のモンスターが入り口の瓦礫をどかして、外に出てきたわ。こちらに向かって走ってきているから、おそらくあなたたちはマークされているわ』


 モンスターの速度を考えると、街にたどり着く前に追いつかれる計算のようだ。モンスターを連れたまま街に近づくのは問題だけど、今回の場合はギルドの確認不足と、イレギュラーが発生したから何とかならんか?


 稼働時間を多少減らしたとしても、連絡が取れる圏内に入るまで、予定以上の出力で走り続ける。



 圏内に入ったので、すぐにギルドへ連絡を入れる。


「今街の外から連絡しています。ある遺跡の探索中に2段階目の進化をしている最中のモンスターと遭遇して、逃げてきました。追われているかは分かりませんが、100km以上離れたところにいたハンターを追いかけたという事例があったので、追われている前提で今話しています」


『ちょっと、お待ちください。今、街に向かって走っているということですか? モンスターを連れてくる行為は、厳罰に処されます』


「だったら、俺に死ねっていうのか? 俺が持っている武器では、どうにもならない可能性があったから、逃げてるんです。もともとは、ギルドが進化直前のモンスターがいるのを把握してなかったのが問題なのでは?」


『そうだったとしても、モンスターを街に連れてくる行為は重罪なんですよ!』


「お前じゃ話にならん、もっと上の人間に変われ。お前じゃどうにもできなくても、上の人間ならなんとかできるやつがいるかもしれないだろ? さっさと変わってくれ」


『そんなことできません!』


「そうかよ、ギルドに電話したのが間違ってたわ。直接偉い奴に連絡するよ!」


 こっちは命がかかってるんだよ!


「ギルドマスターか?」


『おや? 今依頼を受けて外にいるんじゃなかったのでは?』


 ギルドの受付に話した内容と同じことをギルドマスターに伝える。


『それは確かにまずいけど、クラス3のモンスターってことは、進化当時近くにいれば間違いなく追ってくるだろうね。理由は分からないけど、進化する時に近くにいたハンターを何故か襲う傾向が強いんだ』


 クラス3というのは、普通のウルフがクラス1、進化や強化種がクラス2、その先がクラス3と、進化や強化の回数でクラス分けされていると、耳打ちを受けた。


「で、俺はどうしたらいい? あんたもここで死ねっていうんじゃないよな?」


『あ~、電話を取った受付は、まだ新人でモンスターの脅威を学んでいる最中なんだ。クラス3の話となれば、話が変わってくるのを知らないんだ。許してやってほしい』


「こういった対応で死んだ人が0人だったら許すけど、実際に同じような状況で死んでいる人っているよな? しっかりと教育していないギルドの責任だと思うが?」


『こちらにも優先順位があるんだ。こんなレアケースのことを、ぐちぐち言われても困るんだよ』


「レアケースだからハンターが死んでもいいってことか? まぁ、俺が死ねば、あんたらが遺跡の権利を全部引き継ぐことになるから、死んでくれた方がいいのかもな」


『そんなことはないが……この状況では、そう思われても仕方がないか。今回は、こちらのミスでもあるから、特級戦力を動かそう。ちょっと前に体を動かしたいと言っていたから、ちょうどいい機会だ』


 特級戦力とかかわらなくてはいけなくなった……



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