第87話

 敵の数は減っていて、増えることはないのだが、8匹目のモンスターを倒した後、少しすると……全身が警戒を促すような危機感を感じ始めたのだ。


 俺が頼りにしている、違和感によるアバウトなあれとは違い、明らかに近くに危険がある時に、自然と細胞が警戒を行うようなあれだ。


『リュウ、今からすべてのサポートを始めるわ。全力で戦闘に挑んで。ノーマルのFLAR-11には、強化弾のマガジンを、通常武器はカスタムの方を使いなさい』


 ナビィが急に、すべてのサポートを始めた。


 アルファはそれで、何が起こっているのかを把握した。とはいえ、リュウが危険を感じるほどの相手なのかは分からない……



『リュウ、アルファ、今あそこで進化してるのは、2段階目を突破しようとしている。強化種や進化種がさらに強くなるために、進化をしている最中ね』


 リュウはそれを聞くと同時に走り出すが、


「『止まれ!』」


 アルファは、ナビィがすぐに攻撃しろと言わなかったことを察し、ナビィは今攻撃することが危険だと分かっており、リュウの動きを止めた。


 リュウは止まるが、進化する前に倒せば問題ないと思っているので、理由を聞いてきた。


『理由は簡単よ。進化中に攻撃をすると、進化が中断されたりするのではなく、さらに強くなるために異常進化を行うため、進化中は攻撃しないのが決まりよ』


 この異常進化を遂げた中には、領域守護者クラスまで一気に進化して、討伐に来ていたハンターたちを、殺しまわったそうだ。生き残ったのは、100人ほどいた中の2人だけだったとか。


 この2人も、ほぼ死んだ状態で見つかり、何とか蘇生させれたため、命をつなぐことが出来たのだとか。


 そのモンスターは、救援に駆け付けた超人2人に成す術もなく殺されたらしいが、人類最高の戦力が2人がかりだからできたことで、1人だったら負けることはなくても、面倒なことになっていただろう予想されていた。


 領域守護者クラスは大きいため、倒すのに苦労するタイプなのだが、異常進化を遂げたモンスターは、通常のモンスターと変わらないサイズで、ハチャメチャな強さを持っていたため、1人だと追いかけたりするのが大変だったとか。



 進化するのを待っているのももどかしいが、ナビィからすぐに入り口まで戻るように指示が出た。


 ウルフの進化強化系ならまだこちらの銃が効くのだが、さらにその上となると、進化の方向によっては、こちらの銃がほとんど効かなくなる。


 一番厄介なのは、装甲ウルフ以上の硬さになった場合、こちらの攻撃が意味を成すかわからないということだ。


 ここにいた以上、同じような進化をしないとは限らない。装甲ウルフは、こちらの攻撃が一応効いたので、タダの進化種だった。


 さらに上の進化を遂げた場合、動きが早く硬いウルフになるか、動きはあまり早くないが、さらに硬いウルフになるかもしれない。


 正直、どちらに進化しても、俺には手に負えなくなる相手だ。


 もちろん、違う進化の可能性もあるが、そちらに進んだとしてもこちらの攻撃が、どこまで通用するかは未知数だ。


 というか、このあたりに2段階目の進化をするモンスターがいること自体、明らかに異常だ。


 そのレベルになると、守護者の領域かモンスターがたくさんいる場所にいるのが普通なのだ。間違ってもこんな街の近くにいるモンスターではない。


 例外として言うなら、上空だろうか? 空の大半は守護者はいないが、モンスターの領域になっているので、このレベルがゴロゴロ転がっているらしいが、基本的に降りてこないから関係ないらしい。



 入り口まで戻ったはいいが、どうするべきか……


『リュウ、アルファ。大きく分けて、3つほどしか選べる手段はないと思って。1つ目は、手持ちの武器でなんとかあいつを倒す、これは賭けになる部分も多い。


 2つ目は、入り口から出さないようにして、遅滞戦闘を行い車の到着を待つ。3つ目は、入り口を封鎖してから街まで逃げる』


 このくらいしか、今は提案できないと言われた。


 20秒ほど悩むが、リュウとアルファの意見は一致する。


「「逃げよう」」


 1つ目も2つ目も、賭けになる部分が大きい。それなら、一番生存率の高い逃げの一択だろう。


 地雷を回収する暇はないので、入り口を壊すのはいつも持っているグレネードで行う。


 爆破の知識はないので、ナビィの指示に従い、持っている全部……3つのグレネードを使用して、完全に入り口を塞いだ。


 装甲ウルフの死体を運びたいが、体全部を持っていくのは不可能だ……体の一部、頭と前足を持っていくことに決め、袋へ放り込む。


 荷物を背負い、ナビィの指示に従い街へ走っていく。


 荷物を背負ったり、凸凹の場所を走るため、かなりバランスが悪い。それでもパワーアシストのおかげで、問題なく走ることはできている。


 街までの距離はおよそ、40km……フルマラソンよりちょっと短いくらいだ。


『進化が終わって動き出したけど、こちらを追ってくる様子は今のところなさそうです。見た目が装甲ウルフに似ているので、おそらく残れば死んでいた可能性が高いです』


 どんな進化だったとしても、逃げるのが最良だっただろう。逃げると考えるまで、ずっと細胞レベルで警報を鳴らしていたからな。


 逃げ出した今でも、まだ何かあるのか、首の後ろがピリピリして嫌な感じが残っている。


『リュウ、少しスピードを下げて、回復薬を飲みましょう。どこで無茶をするかわかりませんので、早めに回復用のナノマシンを入れておきましょう。もちろん、遺物の方の回復薬です』


 回復薬は、疲れも取ってくれるので、多少無茶をしても直してくれるという安心感がある。


 口に10粒ほど放り込み、飲み込む。


 少し疲れていた体のダルさがすぐになくなり、万全の状態に戻ったと思わせるくらいに、すっきりとする。


 下げたスピードを戻し、さらには加速をして街へ向かう。



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