第85話
装甲ウルフを入口へ置き、再度穴の中へ。
今度は十字路をまっすぐ進んでいく。もちろん、トラップのセンサーをオンにして、俺以外に反応するようにしている。
センサーで自分以外に反応するようにしているが、実際はどうやって見分けているのかよく分かっていない。何かを感じ取って、地雷は俺だと認識しているようだが、どうやって俺だと判断しているのか不明なのだ。
簡単に教えてもらったが、よくわからないということだけが分かったんだよな。
30mほど進むとT字路にぶつかり、右の通路を進んでいく。可能なら、左の通路にも地雷を置きたかったが、在庫がなかったので後ろの警戒を強めて探索を進める。
全部で4部屋で、その奥は行き止まりになっている。
この4つの部屋の内3つの部屋に、ウルフが1匹ずつ……寝ているのかな? 動かずに丸まっているウルフを見るのは初めてだが、丸まって寝ているようだ。
別の部屋にいるということは、1つの部屋のウルフを殺して下がると……反対の通路から襲われる可能性があるから、却下だな。
なら、1つの部屋のウルフを倒し、そのまま部屋の中へ入って、他の部屋のウルフを迎え撃つか?
行き止まりの通路を利用して、一番近くの部屋のウルフを倒して、一方向から敵が来るようにするか?
後者は近寄られたときに回避する方法がないから、前者の方が戦いやすいだろう。
リュウは、理論立てて考えているわけではないが、アルファと同じような考えを、2秒くらいでたどり着き、準備を始めている。
ちなみにアルファは、10秒くらい考えている。
3部屋の内、どの部屋を狙うかだな。手前2つと奥の1つにウルフがいる。
手前だと、どちらかを撃つときに気付かれて、体制を整える前に襲われる可能性がある。なら、奥の一択だな。
手前の2つの部屋のウルフに気付かれないように、奥へ進んでいき寝ているウルフの部屋を覗く。
銃を構えて撃とうとするリュウを止めて、エコーの出力を意識的に上げる。
装甲ウルフがいないか、念のための確認だ。
おそらく、前の装甲ウルフは、違和感を感じていた塊があいつだったのだろうと、考えていた。
どこにいたか深く考えていなかったから、違和感のあった塊の存在を確認するの忘れてたんだよな……
違和感はやはりないので、銃を構えたままゆっくりと部屋へ入り、完全に中まで入ったところで寝ているウルフの頭を撃ち抜く。
通常弾で問題なく死んだな。
部屋の奥へ向かい、入り口へ銃口を向ける。
銃声がした段階でエコーの反応があり、手前の2部屋にいたウルフが起きて部屋の入口へ向かっていたのだ。
ウルフたちが部屋を飛び出ると、通路で顔を合わせ左右をお互いに見ている。
何かを感じたのか、こちらに向かって移動を始めた。部屋の中から聞いてたら、どちらから音がしたかなんてわからなくねえか? それなのに、こっちに来るのは、聴覚以外の感覚か?
こっちは、見えていないがエコーのおかげでどこにいるか確認できている。
走っていないので、頭が見えた段階で1匹を倒し、入ってきたところでもう1匹を倒すとリュウは決めた。
3・・・2・・・1・・・今!
先頭を歩いているウルフの頭が見え、こちらの部屋を向いた瞬間に、素早く2発撃つ。
1発目は右目を貫通し頭の後ろを吹き飛ばし、2発目は下あごを吹き飛ばした。
距離にして10mほどなので、これくらい簡単にあててしまうリュウだ。
銃声がすると、後ろのウルフが死んだウルフを咥えて、銃の盾にするために突っ込んできた。
馬鹿もいるけど、人間並みに賢い奴もいるのだから、モンスターって不思議な生物だな。
咥えているとはいえ、エコーで正確な顔の位置が分かっているので、盾にしているウルフの上から銃弾を叩き込む。
理不尽に固いということもなく、柔らかなウルフの体は、5発も同じ場所に銃弾が当たれば、その先にある咥えたウルフに銃弾が当たるようになる。
ただ、盾にしたウルフ越しだったので、殺しきることはできなかったが、瀕死の状態にまで追い込んだ。
通路の向こう側から来ないか心配だったが、早めに片付けておきたいので、盾にしていたウルフを蹴ってどかして、頭に1発撃ち込んだ。
痙攣するようなしぐさを見せてから、ばたりと力なく倒れる。
エコーには今のところ反応はない……
通路に出て反対側を睨みつける。
3分ほど待つが、特に何もなし。
一応警戒を強めたまま、4つの部屋を調べていく。
モンスターのいなかった部屋に、遺物の痕跡を発見した。
今まで見てきた遺物は、劣化している様子がほとんど見られなかったが、この部屋にあった遺物は、ボロボロに劣化というか風化していた。
原型が何だったのかわからないくらいにボロボロなんだよな。壊された感じではないので、実は遺物じゃないとか?
『遺物の定義にもよりますが、ここにあった物は確実に旧世界の時代に作られたものですね。ただ正規品ではなく、質の悪いアンダーグラウンドで作られていた、まがい物ですね。
旧世界の正規品の遺物は、コピーしたりまねたりするのは難しいが、まがい物たちは簡単にコピーができるので、企業の需要は高いです』
旧世界では簡単にコピーできたのかもしれないが、コピーしたものを売っている人間からすれば、もうけられればそれでいいので、耐久性などを低くして作っていたそうだ。
一応風化している遺物があったけど、持ち運ぶには大きかったので、放置してきたことにしよう。
他の部屋には特に何もなかった。
通路を戻りT字路の左側へ向けて歩いていく。
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