第84話

 干渉できると信じて、指の先から超音波を出すイメージ……エコーが実際に超音波を出しているのかわからないが、指から出して指で受け取る。


 全身で受け取っている時と解像度は違うが、中のことを調べることに成功した。


 2匹のウルフは扉を開けないのではなく、グレネードによって瀕死の状態になっていたのだ。


 ただ、それ以外にもう1匹の反応がある。動き回っているのだが、ウルフとは違い動きが重く感じる。だけど、姿はウルフ……四足歩行のモンスターだと分かる。


 しばらく観察するが、違和感しかないモンスターが中にいるようだ。


 一番気になるのは、お前どこにいたん? ということだ。


『リュウ、銃はカスタムFLAR-11の方を使ったほうがいいです』


 ノーマルの方でいこうとしたら、ナビィから銃を変えるように注意を受けた。ナビィが注意するってことは、通常の方だと火力が足りないって判断したってことか。


 となると……硬いってことだよな。


 扉を蹴り破り、すぐに謎の存在に銃口を向け、10発ほど撃ち込む。


 半分は顔、半分は体のどこかにヒットした。


 動きが止まったかと思ったが、銃弾に怯まずにこちらへ走って向かってきた。


 ……走って向かってきてはいるのだが、外装が重いのか動きが遅い。


 いや、普通の人からすればこれでも早いとは思うよ。でもさ、オリンピックの100m最速の速度くらいで来ると思ったら、小学生の短距離走だった感じなんだよ。


 倍以上遅いわけではないんだけど、意識のボルテージがマックスになっているところに、この落差だったからかなり遅く感じるんだよ!


 肩透かしを食らったが、問題が発生している。


 貫通弾と発火弾が当たっているのに、目の前のアンノウンの装甲を撃ち抜けていない。


 アルファは逃げるだろうと考えていたが、リュウはその場に足を止め追加で10発ほど撃ち込んだ後に、銃から手を放し無手の状態に。


 次の瞬間、拳を握りしめて、強化外骨格のパワーアシストを全開に。


 手を守るために買った籠手のシールドも全開になっており、そのまま拳がアンノウンの首に突き刺さる。


 さすがに装甲を撃ち抜くようなことはできなかったが、首を痛めたのか体を起こそうとして失敗するアンノウン。


 おそらく首の骨は折れていないが、かなりのダメージを負ったと思う。


 リュウはすぐさま近寄り、足で首を踏みつけ銃口を頭に向けて、貫通と発火の2つの弾をダブルタップのように撃ち込む。


 16発目でやっと装甲を撃ち抜き、追加の4発で命を刈り取ることに成功した。


 周囲に何もないことを確認してから、アンノウンの正体を調べることにした。


 俺の知識にはこんな姿のモンスターはいなかった。


「でも、これってどう見ても、ウルフタイプだよな……装甲を身にまとっているだけで、動きの遅いウルフ……というか、守りを固めて体を重くして、本来ウルフの持ち味である速度を殺して、何の意味があったんだ?」


 アルファは、疑問に思って口に出していた。


『アルファ、遅くなったからといって侮ってはいけません。もし今回、2匹以上の集団で襲われてきたと仮定して、簡単に倒せたと思いますか?


 シールドを使った防御ではないのに、貫通弾と発火弾の混合をあれだけ撃ち込んでやっと壊せたのです。決定打もなくこちらの攻撃が通じず、攻撃され続ける可能性だってあったのです』


 そういわれて、確かに1匹だったから何とかなっただけで、複数いたらかなり面倒な状況になっただろう。


 2匹目以降が普通のウルフだったとしても、こいつが1匹いるだけでかなり面倒になることは間違いない。


『それとリュウ、生物にとって頭は弱点ではありますが、一番守りが固いこともあります。今回は頭ではなく、体……倒れていたので、お腹のあたりを狙ったほうが効果的だったと思います』


 調べていて分かったが、普通のウルフに比べてこいつは頭が小さかったが、厚い装甲に守られており、普通のウルフより大きく見えていただけだった。だけど、この装甲が厄介だった。


 シールドを使わずに、俺たちが身に着けているアーマーより、銃弾に耐えて見せたのだ。


 俺のアーマーなら、最大で10発耐えられればいいほうだが、こいつは初めの10発と追加の10発、頭に撃ち込んだ合計20発の合わせて40発も、装甲を撃ち抜くのにかかったのだ。


 明らかに異常だった。


 一番硬い場所とはいえ、20発撃ちこんでやっとだったが、人の頭と大して変わらないサイズで20発も必要だったことが、異常だ。


 体であれば、10発ほどでなんとか壊せただろうとナビィは判断している。この装甲かなり優秀だと思うのだが……


「この装甲が手に入れば……って思ったけど、こいつかなり重たいな。強化外骨格の装甲にするにしても、シールドを張らずに生身で受け止めるというのは、ナンセンスだな。今の俺みたいに、アーマーの素材ならワンチャン?」


 アルファは、この装甲の使い道を考え始めていた。


 自分で使えるとも分かっていないのに、捕らぬ狸の皮算用のようなことをしている。


『アルファ、それは恐らく旧世界の装備だと思います。正確には、何に使われていたかわかりませんが、何かを守るための装甲として使われていた素材に近い構造をしています』


 構造までわかるようになったのか?


 旧世界の物を取り込んだ、特殊な進化をした個体だったのだろう。ナビィが調べた範囲で、初期の頃に何体か見られたが、最近は報告がなかった個体のようだ。


 この装甲が使えれば、役に立ったかもしれないが、旧世界の技術が使われているとしたら、今すぐに再現するのは無理か。でも、持って帰れば高く買い取ってもらえそうだな。


 パワーアシストを全開にして、引きずって入口へ向かっている。地雷が反応する可能性があったので、いったんセンサーをオフにしてから、ゆっくりと引きずって入口へ戻った。



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