第77話
鑑定士が依頼を持ってくる違和感がぬぐえないが、差し出された依頼書を見る。
差し出された依頼書は3つ。
2つは、なんてことない探索の依頼だ。注意書きをするなら、中級ハンターやそれに近いハンターが中心となって受ける依頼だ。
残りの1つは、光学迷彩を使ったウルフがいた遺跡に近い場所で、また洞窟を発見したので、探索依頼が出たものだ。
依頼を出されて経緯も同じで、自分たちで調べるのが面倒で、新人に探索依頼が回ってくるやつだな。
リュウもアルファも、可能なら光学迷彩のウルフとは戦いたくないと考えている。ナビィがいるから関係ないと思うかもしれないが、いたとしても上位個体が率いている集団は面倒なので、極力戦いたくないという感じだな。
ナビィ検索を始めるとすぐに、2枚目の依頼は絶対に受けないほうがいい、と忠告された。それだけ危険だということだな。ナビィが拒否するくらいだから、おそらく相当危険なのだろう。
リュウとアルファも依頼書をめくっている時に、違和感を感じていたので、これは何かあるタイプの依頼だな。わざわざ地雷なんて踏み抜きにいかねえぞ!
「えっと、こいつとこいつで少し考えさせてもらっていいですか?」
「それは構わないが、1枚目と同じような依頼なのに、2枚目を外すのには何か理由があるのかな?」
「決定的な証拠はないですが、嫌な感じがしたのでそれは受けたくないと思っています」
「嫌な感じ?」
「理由は分からないですが、あの透明のウルフがいたところでも、同じように嫌な感じがしたので、俺の中では危機を察知してくれる第六感じゃないかって考えているんです」
「勘か……本来新人の君が勘と言っても、首をかしげる人が多いはずだが、実際に実績を作っていることを考えれば、無視できるほど小さなものではないか。中級でも下位でいいかと思ったが、上位を向かわせるべきか?」
俺に悩んでもいいと伝えた後に、鑑定士自身も悩み始めた。
俺から嫌な感じと聞いて、何か思うところでもあるのだろう。直近で、普通なら死んでもおかしくないようなモンスターを相手と、俺は戦ったからな。その時と同じ嫌な感じがすると言われれば、考えてしまうのだろう。
残りの2つは、俺にとって同じような感じしかしないが、ナビィからすればどうなんだろうか?
『難易度的には、おそらくこの2つは同じだけど、1枚目のほうは戦闘面で、3枚目のほうは探索面で少し難易度が高いですね』
わずかな時間で、依頼地となる場所を検索できるようになったか。もう少し時間がかかっていた気がするが……早くなる分には問題はないので、気にしないでおこう。
で、だ。
同じくらいの難易度だけど、戦闘面と探索面での違いがあるのか。
今回は、ナビィのサポートがあるのかないのかそれだけが気になるな。
『どちらでもいいと思いますが、自力でやればそれだけ身になる依頼だと思います』
アルファが考える前に、リュウが自力でやると言い出した。戦闘面より、探索面のほうが気になるから、そちらをやってみたいとのことだ。
探索用の装備がないのに、探索の依頼ば借り受けると、色々邪推されないかが心配なんだよな。
相性がいい探索系の装備を手に入れられないだろうか?
『今のリュウの能力を考えると、集音系の装備があればだいぶ違うと思います。視覚系に関しては、生まれつきの能力があるので問題ないと思わせています。聴覚系は、調べればわかる通り、ノーマルなのでそこをカバーできるものがあればと思います』
そっか、視力系に関してはナビィのサポートだけど、特殊能力として言い張ることが出来るのか。でも、聴覚に関してはそんな特殊な能力を持ってはいないので、調べられたらウソがばれる……だったら、そっち系の装備ほしいな。
「あの、聴覚系の装備って安く売ってないですかね?」
「ん? 聴覚系ですか? 音ってことだよな? 音か~、おとおとおと……あっ! もしかしたら、あれが使えるならありかもしれないですね。ちょっと許可を取ってくるから、待っていてください」
鑑定士がブースから離れると、ナビィが資格をサポートして、どこへ向かったのか分かるようにしてくれた。
ナビィのサポートがあれば、壁の向こう側だって何もないのと同じように見える。やろうと思えば、女性の裸だって見れるんじゃないか?
『アルファは、そういうのに興味があるんですか? 気になるのでしたら、私の姿も裸にしますし、可愛いなと思う人だけ裸にしましょうか?』
いやいや……興味があるというよりは、男ならある程度持っていておかしくない欲求だろ。だからと言って、四六時中女性の裸を見たいわけじゃないわ。
『では、見たい時に言ってくだされば……』
この話はなかったことにしよう。残念だとは思うが、タダ裸を見たいだけなら、旧世界のデータにそういうのがあるだろ。
例えば目の前の美人が裸だったとして、その裸を見てどうしろっていうんだよ、ただただムラムラするだけだろうが。
『……そういうものですか?』
ナビィには、よくわからないらしいな。知性があってもそもそも生物として定義できない存在に、繁殖行為について説明したところで、子孫を増やす行為だとしか聞こえないだろうからな。
そんなことは、もうどうでもいい。
鑑定士はどうやら、ギルドマスターの元ではなく、倉庫のほうに向かって言っているな。許可って誰にとるんだろうか?
倉庫へ着くと、迷いなく目的の場所へ移動している。こんなに雑多としている倉庫の中に、どこに何があるか覚えてるのか?
箱ティッシュ1箱分くらいの大きさの何かを手に持ち、帰り道にどこかの部屋によりそこにいた人へ声をかけている。
「お待たせ。発見した人から許可をもらってきたから、少し使ってみないか?」
何かもよく分かっていないのに、鑑定士は俺に使うようにすすめてきた。
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