第75話

 追放処分というのは初耳だが、街に入ることが出来なくなるだけで、手段を選ばなければ街の近くにいられるんじゃないか?


 そんなことを考えていると、


『今の時代の追放処分は、奴隷兵よりはマシですが、それに近い罰になりますね。特に、ギルドマスターが言った、4つ以上離れろというのは、実質死刑に近いと言われています』


 おや? だいぶ物騒な話じゃないか……


『あくまでも、一般人が追放処分を受けた場合で、ハンターだと事情が変わってきます。移動手段があるのであれば、問題なくたどり着ける可能性は高いですが、この街を含め3つ目の街までは入ることが出来ないので、補給の問題があるようです』


 あ~入れないってことは、物資の補給ができないってことだもんな。でも、スラムに入って何とかなりそうな気もするけど……


『スラムは街の中ではないと思われがちですが、住んでいる人間が街の人間ではないというだけで、あの場所も街の中の判定ですので、スラムでも入れば銃殺されます』


 恐ろしや!


『追放処分を受けたのがこの6人だけですので、そこそこ大きかったグループですから、追放処分を受けていないハンターもいるでしょう。そういったハンターが物資を買いに街へ入れば問題ないかと』


 そうなると、俺の行動範囲次第では、こいつらと鉢合わせになる可能性もゼロじゃないのか……すぐに監視できるようにマーカーをお願いする。


『おそらく、当分被ることはありませんね。追放処分を受けた人間を受け入れる街は、非常に少ないですから。それこそ、犯罪者の塒と呼ばれる街くらいしか、入れないですね。


 ですが、まれにそういった環境からでも、這い上がって高ランクのハンターになるモノもいるので、そこは注意をしておいた方がいいでしょう』


 追放処分ってことはそれなりの罪を犯しているわけで、普通ならそんな奴らを街の中には入れたくねえよな。


 単独で追放処分であれば死刑と同じでも、6人一緒だし仲間が助けてくれるなら、問題なく都市間の移動はできるだろう。それに、追放されても行ける都市がここから5つめの街にあるそうで、そこにたどり着けるだろうだってさ。


 あまり近いと、フラグが立ってすぐに遭遇する羽目になりそうだけど、大丈夫だろうか?


 そこらへんはナビィが調整してくれるようなので、特に気にしなくてもいいだってさ。


 ナビィさん、よろしくっす!


 それよりも、こいつらが追放処分になったのなら、すぐに街の外に出してもらいたいんだが……それに、ギルドマスターの掛け声がないと、動き出せないんだけど、まだかな?


 追放処分が言い渡されて5分くらいたったところで、クソガキとその仲間たちの目が覚め、お守りの人から連絡がいっていたのか、仲間が駆けつけて回収していった。


 クソガキは最後まで喚いていたが、頭に拳を食らて2度目の気絶をしていたな。



 処分された6人がいなくなったところで、ギルドマスターが、


「さて、日常業務に戻ろうか。馬鹿どもの所為で時間が奪われたから、さっさと行動しないと色々間に合わなくなるぞ!」


 といい、ギルド内にいたハンターたちが慌ただしく動き始めた。


 俺も動こうとしたのだが、それを制すようにクソガキとその仲間を気絶させた、ギルドの職員に呼ばれたのでついていくことに。


 いつもの部屋に呼び出され、そこにはギルドマスターがいた。


「ご苦労さん。かなりきつい処分を出しておいたのに、まさかお前に突っかかっていくとは思わなかったぜ。そこらへんは、こっちの考えが甘かったから、許してくれ」


「実害はなかったから別にいいですけど、今後のことを考えると、制圧しないで頭を撃ち抜いておけばよかったって思ってます」


「それは掃除が大変だから、思いとどまってくれてこっちとしては感謝だな。それにしてもあの常識知らずは、お前さんをなんで恨んでるのかね……私には、理解しがたいよ」


 理解しがたいとは言っているが、俺に物資補給を断られ、弾を奪おうとしてリーダーに止められた……だから、俺がいなければ何もなかった、と思いたかったのだろうな……だってさ。


 ほぼ正確に把握しているじゃん!


 そもそも、俺がいなくてもあの穴は見つかっただろう。たまたま俺が一番初めに見つけただけでな。


 もしその時にこいつがいたとしても、リーダーはおそらく連れて行かなかったと思う。理由は、準備不足だな。


 あの時は、リーダーも俺から強化弾を買っていたし、クソガキはすでに弾丸がなかった。同じ状況であの場面に立つなんてことはないが、どう考えても安全が確保できないだろう。


 撤退したい旨を伝えたところで、今回は調査をするように言われたはずだ。


 そうなれば、足手まといを連れていくことはありえない。そう考えるとリーダーが1人で入っただろう。まぁ俺に実力がなければ、弾だけ買い取って1人で入っていた可能性だって高い。


 どう考えても、クソガキが悪いのにな。


「仕方がないだろう。あの年代の年頃……でなくとも、自分の所為ではなく人のせいにしたがるものだ。しかも自分より小さかったお前さんが優遇されれば、お前さんに八つ当たりをしたくなるのだろう」


 アルファは理解しているが、リュウには理解しがたい状況のようだ。


 ここに呼ばれたのは、そのまま依頼を受けさせるような状態ではなかったので、俺はここへ呼ばれたようだ。


 可能なら今日は依頼を受けずに帰って、家でゆっくりするようにだとさ……


 ここまで来たついでなので、射撃訓練だけして帰ろう。


 まだほとぼりが冷めていないので、しばらくここにいないといけないようだ。


 その間に色々な話を聞いたが、1つ面白い話を聞いた。


 俺が街の外でクソガキにあった場合、殺しても何の問題にもならないそうだ。相手は殺したことがすぐにバレるので、手を出してくるようなことはないだろうだってさ。


 俺が殺しても問題ない理由として、今回のトラブルでは退去命令が出た段階で俺とクソガキの関連性がシステムに登録され、街の中ではさすがに問題があるが、街の外では俺があいつを殺しても犯罪にならないんだとか。


 細かい理由は分からないが、旧世界のシステム……住人を管理しているシステムが、犯罪だと判断しないので、罪にはならないんだとか。


 殺人における例外事項のようなものだと、ナビィは言っていた。


 30分ほど話してから、射撃場にこもっていたのが功を奏したのか、注目されることなく家に帰ることが出来た。



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