第74話

「お前ら、絶対に俺の指示以外で動くなよ」


 クソガキの同年代の仲間に銃口を向けた、お守りの人。


「いいかお前ら、銃から手を放して地面に置け、そしたらこっちに向けて銃をけろ。強くじゃなくて、届くくらいの強さだからな」


 まだ俺を殺そうと思っているような目でこちらを見ながら、お守りの人の言うことを聞いて、銃をけった。


 お守りの人が銃を回収すると、改めてこちらへ向き直り、


「これで、君が心配をしているような問題は、何もないと思うが……足元のそいつを開放してもらえないだろうか?」


「……あなたは、俺が何を心配しているのか、本当にわかってますか?」


「ここで銃口を向けられ、君の命を狙う危険性の排除……じゃないのか?」


「違いますね。こいつにどんな話を聞いているかわかりませんが、こいつからすれば多少の因縁があるのだろうと思います。ですが、それはこいつの一方的なやっかみのようなものですよ。


 殺そうとして来るまでとは思いませんでしたが、こうなった以上俺が身を守るためには、こいつが俺に近付けないようにする必要がある。そうでないと、何度も命を狙われる羽目になる」


「……俺が、俺たちの組で絶対にそんなことをさせないから、そいつを放してほしい」


「あんたがこいつを止められなかった時点で、あんたらのグループの信用性はないに等しい。もともと、横暴なグループだったらしいから、それだけみても信用するに値しないと思うが?」


 こいつはどうか知らないが、自分たちのグループが横暴なことをしていた自覚はあるようだ。それを止められなかったのであれば、こいつも同罪というもんだろうな。


「あと、あんたが納得しても、こいつとその仲間が納得しなければ、この交渉に何の意味もない。それに、こいつらがあんたらのグループを抜けたら、どう対応するんだ? ここで開放する理由は、ないな」


 ギルドの受付がドタバタと騒がしくなると、よく見覚えのある顔が受付のあるカウンターから出てきた。


 俺と足元のクソガキ、お守りの人、その後ろのクソガキの仲間を順にみて、


「今の状態から誰一人動くな。私の命令があるまで、その場で待機だ」


 ギルドマスターが、フロアにいる全員に向かって命令を出す。この中にはギルドマスターより、物理的に強いハンターはたくさんいるが、権力では誰もかなわないので、全員が命令に従う。


 いや、足元のクソガキだけは、モゴモゴと何か言っている。


「まずは、この空間を閉鎖しますかね。職員の誰でもいいから、入り口を封鎖して、入ってこようとするハンターに説明しなさい。まぁ4人もいれば問題ないでしょう」


 これ以上ギルド内でトラブルが起きないように、入り口を封鎖するようだ。


「それと君、さすがに銃は口から外してあげなさい。だけど、足はそのままで、足元の黄身も勝手に騒いだり動いたりするんじゃないよ」


 口に突っ込んでいた銃を引き抜いた。


「くそが! 足をどけやがれ!」


 クソガキがそういうと、ギルドマスターが指を鳴らす。


 次の瞬間、受付から1人の男性が飛び出て、俺の足元にいるクソガキの顔面を殴った。


「騒ぐなと言ったよな? まぁ聞こえているかわかりませんが、動いたり騒いだりしたら、ペナルティがありますので、動かないでいただきたい。時間もかかるので面倒です」


 心底面倒だと言わんばかりの態度で、ギルドマスターはやれやれといったしぐさをする。


「で、大体の理由は想像できますが、一応当人たちにも話を聞いてみますか。では、君が話しなさい」


 俺に向かって指をさしたので、説明する。


「俺がギルドに入ってきたら、急に足元のこいつが切りかかってきて制圧したら、その人がこいつを開放してほしいといったが拒否した。俺の安全が確保できなければ、開放できない」


「そうですか。殺されそうになる節は思い当たりますか?」


「一応。前回の依頼で、リーダーの判断でこいつが帰らされたのを根に持って、俺を殺そうとしたんじゃないかと思うが、帰らされただけで殺される意味も分からないので、正直混乱している」


「そうか。君は、こっちのグループに何かあったか知らないんだな。君が恨まれる理由なんて、一理もないのだが八つ当たりで殺そうとした可能性があるな」


 本当は何かあったか知ってはいるが、現状で俺が知っているのは不自然なので、知らないふりをしている。嘘をついたところで、俺には何のお咎めもないからどうでもいいんだけどな。


 それへの質問が終わると、お守りの人へ質問をした。


 クソガキから、前回の任務についてどんな報告を受けているのか質問した。


 そうすると、ビックリ……簡単に言えば、俺がこいつの邪魔をして、自分の持っていた銃弾をこっちに渡さず、殺そうとしてきたと聞いているらしい。


 チームのリーダーが、一緒に戦うことを拒否したため、その段階で銃弾の残りが少なかった自分が帰された……だってさ。


 あってないけど間違ってもいない、すげえ自分勝手な解釈になっている。


「その時の報告は受けているけど、それは正しくない。本当は……」


 リーダーからの報告のまま、お守りの人へ伝える。


 それを聞いたお守りの人は、顔が引きつっていた。一緒にギルド内で聞いていたハンターたちは、失笑している。


 クソガキの仲間は驚いた表情をしているが、すべては俺が悪いと主張を始めた。


「お前らに発言は許してないぞ……」


 そういうと、先ほどクソガキの顔を殴った男の人が、クソガキの仲間に向かって動き出した。


 お守りの人は、マスターに向かって止めるようにお願いするが、耳を貸す気はないらしい。


 仲間の4人も顔を殴られ、意識が吹っ飛び、その場に倒れる。


 顔面殴って、意識がなくなるもんなのかね? 顎とかに当たって、脳震盪を起こすとかならわかるけどさ、純粋な痛みで意識を刈り取ってる?


『リュウ、注意しなさい。あの人の装備している強化外骨格は、一般に売り出されているものではないわ。手に超振動を起こせるようで、頭部に触れただけで脳震盪を起こすわ』


 お~ファンタスティック! 超振動兵器か。あれってめちゃくちゃ破壊力のある攻撃ができるんじゃなかったか? 威力を調整できるようで、非殺傷モードで動かしているらしい。


「ったく、横暴な連中がいなくなったと思ったのに、まだ問題児がいるのか。それもこの街に残しておけば、絶対にトラブルになる奴だな。お前とこいつらは、追放処分だ。最低でも5つ以上離れた街へ自力で移動しろ」



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