第72話

 ショッピングモールから家までは、歩いて30分ほどかかった。


 大きな商業施設ということで、住宅街からは離れた場所に作られていたからだ。街ですべてが完結しているのに、商業施設が遠くになぜあるのだろうか?


『それは、やはり外出をしている気分になるように、ということらしいですよ。アルファの時代でいえば、ちょっとコンビニまで、スーパーまで……その距離で外出とは言わない人が多かったのでは?』


 ……家に引きこもっているような人たちからすれば、家の外=外出だったけど、毎日職場に言っている人たちからすれば、外出とは違う感じがするよな。


『特別感を出そうということもあり、住宅街からは離れた位置に作られているようです。モノレールがありますので、それに乗ればすぐにつきますが、乗り物に乗っての移動は、特別感がありますよね』


 乗り物があるのか……モノレールどこ?


 モノレールが通るような橋はないけど、どこを走っているんだ?


 そんなことを考えていたら、ナビィが駅を教えてくれた。お絵が何も聞かなければ、歩いて30分の道を歩かせようとしていたのだろうか……


 駅に着き時刻表を見て、納得する。


「ナビィが、モノレールのことを話さないわけだ。次が40分後となれば、歩いて帰ったほうが早いもんな。それに、モノレールっていうから、上を走ってるかと思えば、下水より下を走ってるじゃん……地下鉄でよくね?」


『線路の形状から言えば、電車ではなくモノレールだと思います。全自動とはいえ、利用する人が少ない時間は、車両も少なくなっています』


 電気とかには余裕があるのに、定期でグルグルさせているわけじゃないんだな。必要分以外のエネルギーは、全部第一次産業に回されている感じだな。


 太陽の代替をできるようになった光源を使った農業でも、衣食住を支える物を生産しているから、第一次産業と呼んでも間違いではないだろう。


 野菜の中には、特定の色の光を当て続けると、成長が早まるといった研究記録があったはずだから、第一次産業って言って問題ないな。


 どうでもいいことを考えながら家にたどり着くと、一台のミニカーのようなものが玄関の前に止まっていた……


「ナビィ、あれなんだ?」


『あれは、ショッピングモールで作ったリュックを、届けてくれた配達車ですね。生体認証が一致しないと、荷物を受け取れないようになっているので、盗まれることはほぼないですね』


 壊されて盗まれることはあるが、そんなことをすればすぐにつかまり犯罪者の仲間入りなので、本当に金に困っていてどうしようもない奴がするくらいだとさ。


 荷物が破損した場合は、その犯罪者から取り立てるようで、補償も問題ないのだとか。


「俺が変えるより先に荷物が届くのか……そのルートで送ってもらえれば、早かったのではないだろうか?」


『箱に梱包されて運ばれるつもりでしたら、問題ないと思いますよ』


 想像して、それはないわ……とか思ってたら、生きた物を運ぶことはないので、リュウを運ばせることはできませんけどね、だってさ!


 最近、ナビィは冗談まで言うようになってきた。ますます人間っぽい発言が増えてきたわ。冗談なんていらないけどな。おやじギャグまで言い始めたらどうするか……


 届いたリュックの箱を開け、しっかりとつくりを確認する。


 リュックと一緒に保存箱も一緒に送っていたので、それがきちんと入るかも確認しておく。


 保存箱を出し入れするのは、ぴっちり作ったせいもありだしにくいが、箱を出さずとも横から取り出せるタイプの保存箱を選んだので、箱さえ入れてしまえば問題なく取り入れができる。


 保存箱には、中を汚さないようにするには、包み袋か専用の箱を使うと汚れないとあったが、包み袋はまだいい。箱を使えば、その専用の箱は汚れるから、弾を移す際に結局ケースが汚れてしまうので、除外だな。


 使い捨ての袋か、お店で包みを一緒にもらうかのどっちかだな。


 いつも買っている場所なら、少しお金を足せば包んでもらえるから、それで十分か? 今までは、包みのまま入れてても、漏れたりすることがなかったから、保存箱の中ならまずこぼれることはないだろう。


 最悪、洗うか拭くかすれば問題ないだろう。細かいことはこれ以上気にしてもしょうがないな。


 とりあえず、使いやすくはなったな。まだサイドや下につけてもらったベルトを活用させる道具は持っていないが、そのうち使うこともあるだろう。


 明日は仕事をするつもりなので、カスタムFLAR-11の弾丸を詰め替えておかないとな。


 取り出すのも入れるのも、簡単にできるようになってはいるが、何せ数が数なのでそれなりに時間がかかる。


 面倒だけど、射撃訓練もしておく必要はあったし、いざという時に使う可能性があるから、弾丸は入れ替えておかないとな。


 訓練用の弾は、いちいちそろえておく必要もないので、ケースにざざっと入れておくだけで問題はない。そういう意味ではカバンの中に入れない弾丸は、きれいに並べる必要がないので、扱いは楽でいいな。


 20分ほどで弾を入れ替えた俺たちは、カスタムしていない通常のFLAR-11の整備をして、マガジンと弾丸の確認をする。


 特に問題はなかったので、ナビィの座学を受けた後、寝ることになった。



 いつもの道を通り、いつも買っている露店の食事を購入し、おばちゃんに言われた通り、保存箱を買ったことを話し、追加でお昼用の食事と予備を購入して、ギルドへ向かった。


 首筋がピリピリして嫌な感じだが、違和感はかすかにしかないので、死ぬようなことはないだろう。


 ギルドに入ると、


「やっと着やがったな、てめぇ!」


 急に大きな声が聞こえ、誰かと争っているのだろうか?


 平和ボケしていたわけではないが、俺が狙われる理由もほとんどないわけで、警戒が薄かった。


 急にアルファの視界がボケたと思ったら、リュウが体を動かして何かを躱した後、すぐに戦闘態勢に入っていた。



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