第65話
「そうだな、まずはこの籠手の希望価格をお前さんから提示してみろ。一応、この籠手には値段がついていて、安くなる限界も値札の裏に記入しておく。記入した値段以上でも、最終的にはその値段で買ってもらうことになるけどいいか?」
「あまり高すぎると手が出ませんが、その話し方からすると、撃っても問題ないと判断するくらいには安いと思っていいですか?」
「まぁ、新人ハンターに吹っ掛けるほど落ちぶれちゃいないから、本当に買える値段じゃなければ、購入しなくてもいいぞ。買う前提でやったほうが熱が入るってもんだろ」
「かなりいい装備に見えますが、アーマーは基本的に初心者しか使わない上に、腕だけしか守らない点を考えると、5万くらいですかね」
「さすがにそれだと、商売も上がったりだ。15万でどうだ?」
「新人にとって15万は、相当な出費ですよ。7万で」
「いやいや、買いたたいたとはいえ、そんな安値じゃ売れないな。12万でどうだ?」
「もう一声! 9万!」
「これが限界だから勘弁してくれ、10万でなら売るぞ」
「っと、こんなもんですかね?」
「及第点ではあるが、テンプレに沿って対応をしただけだから、毎回こんなに上手くいくとは思うなよ。だけど、初めの値段設定は悪くない。明らかに買う気がない安値でもなく、かと言って高いわけでもない、ちょうどいい塩梅だったぞ」
そういって店主が値札を裏返すと、そこには10万と書かれていた。
元々値引きをされる前提で売値を決めていることもあり、本来の値札には20万と書かれていた。
店主は高く売りたい、客は安く買いたい、その間で色々やり取りをするのがこの市なのだろう。
例えば15万で売れれば、客は元値が20万で5万得して、店主は10万で売りたいところ15万で売れれば、5万多く儲けが出たことになる。
今回のように使い勝手がいまいちよくない商品は、一見高く売っているように見えて、値引いてもらえるから、使用用途をよく考えてから交渉するといい、とアドバイスを受けた。
籠手を購入した後も、色々な店をめぐってみるが、掘り出し物や俺の役に立ちそうなものは無かった。
家に帰る道で、
『リュウ、この市は毎回商品が変わるようなので、可能な限り足を運ぶようにしませんか?』
「そうだな。今回みたいに、掘り出し物がまた見つかるかもしれないしな。俺の目ではわからなくても、ナビィが必要なものを何か見つけてくれれば、それを購入してもいいかな」
今回は、初心者の俺にとって、かなり優秀な銃が手に入ったと思う。特に通常弾を900発撃ち続けられるアサルトライフル。
さすがにガトリングガンのように連射は早くないが、それでも秒間10発、900発がマガジンに入っていれば、90秒は撃ち続けられるばかげたアサルトライフルだ。
「そういえば、この銃って強化弾でも撃てるみたいだけど、こっちはもともと入っている銃弾がいいかな?」
ナビィに色々検索してもらい、弾丸の種類を決めることにした。
中にいれられている弾丸を検索してもらっていると、意外な事実が発覚する。
『中に入っている同系統の弾丸で、着弾すると高熱を発する弾丸があるようです。生物系のモンスターだと、堅い骨に当たらないと熱を発しないようですが、機械系のモンスターには、かなり効果を発揮するらしいです』
1発だとそこまで効果は高くないが、複数初当てることで装甲を融解させ、中身をむき出しにすることが可能とのことですね』
確か、入れられている貫通特化の弾も、機械系に有効じゃなかったっけか?
『もしかしたら、この銃の持ち主は、そのことが分かる人に自分の銃を託したかったのではないでしょうか? 貫通特化弾も発熱弾も特殊な弾丸で、元のFLARー11では撃つことが出来ないですからね』
FLARー11唯一の長所を捨てて、特殊な弾丸を込められるように改造されていたようだ。
店主も知らなかった事実で、ナビィが検索してやっと知ることが出来たレベルだ。
帰り道の半ばで、ちょうどよくシルバーブレッドの近くだったので、酔っていくことにした。
「あら珍しい。こんな時間に来ることもだけど、今日は2回目ね。どうかしたのかしら?」
「ちょっと相談というか、聞きたいことがあって寄りました」
俺は市で購入した銃を見せ、合わせて銃弾の話をする。
「お父さん! マガジン一体型の銃って、一昔前に流行ったって言ってなかったっけ?」
説明を受けたお姉さんが、お父さんを呼んだ。
「なんじゃ、急に大きな声を出して……珍しい時間に小童がおるな」
「そんなこと良いから、この銃を見てみてよ」
「見せて見ろ……ほぉ、これは確かに珍しい銃じゃな。汎用性を捨てて、ある一点に特化した改造か。これだと、本来この銃で撃てない、全身機械系のモンスターに有効な弾丸が撃てるようになっているな」
店主に銃を手に入れた経緯を説明する。
「本来であればあまり価値がないものだが、初心者のお前さんには、有用なものとなるだろうな。特に中級者の登竜門と呼ばれている試験で、大分優位に立てる武器だ。エネルギーパックを使えば、通常の使い勝手も悪くないだろう」
おぉ、この店主のおっちゃんは、この銃の特性を理解しているようだな。
「何も不思議なことはねえ。銃弾が900発も入るのに、防御機構のようなものがついていなかったってことは、確実にエネルギーを使用した何かがあるのは、当たり前だ。
もしその機構すらなければ、ただの銃としても役に立たん。10発も弾を撃てば壊れてしまうわい。エネルギーを使用する前提で設計されているものだから、正しい使い方をしないとな」
普通の銃として使えるとか言ってたけど、使えねえじゃねえか! あぶねえな。
拡張マガジン一体型の銃は、本来あるべきパーツを排除して、エネルギーパック使用を前提とした構造になっているらしく、エネルギーがない状態で撃つとすぐに壊れてしまうらしい。
「まぁ、大きな声では言えないが、発熱弾は対人戦でも有効な弾丸だ。今入っている貫通弾も対人戦で有効だ。もし身の危険を感じたら、迷わず撃て。死んでからでは遅いからな」
店主のおっちゃんが物騒なアドバイスをしてくれた。
お姉さんは、この店にも銃弾の在庫があるから、ほしかったら買いに来るように言われた。
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