第61話

 簡易的な防衛陣地を作った俺たちは、いつ攻められてもいいようにモンスターのいた方向へ、銃口を向けている。


 モンスターに動きがないのが不気味だ。


 あれだけの戦闘音を洞窟の中で発生させたのに、こちらに向かってくる様子がない。


「あれだけの音を出したのに、こちらへ向かってこないのは、普通なのですか?」


「ん~どうだろうな。モンスターの領域内であれば、音を立てようものなら津波のように襲ってくることもあると聞いている。


 動物をもとにしているから、大きな音がしたからといってこちらを見に来ることはないともいわれている。実際のところは、何も分かっていないってことだな」


 100年以上も戦い続けても、相手の行動原理がほとんど分かっていないらしい。


「だけど、有視界内や索敵範囲内に人間がいた場合は、ほとんどのモンスターが逃げることなく襲ってくると言われている」


「ほとんどということは、例外的な存在もいるってことですか?」


「俺は遭遇したことないが、強化種よりもっと上の立場のような奴が、不利になると逃げるといった報告が上がっているようだな。


 ゴリラのシルバーバックは、強いだけでなく危機回避能力にも長けているって噂だしな。そういったこともあり得るのかもしれないな」


 なるほど、リーダーは強いだけでなく賢いってことか。


 強化種はどちらかというと戦闘要員だし、この前見た光学迷彩のウルフは偵察要員だな。そう考えると、真にリーダーと呼べる相手には、まだ会っていないことになるな。


『この人の言う通り、一番手ごわいモンスターがギリギリのところで逃げた、という報告が全世界でありますね』


 おっと、世界単位で検索してましたか。いつもより若干リアクションが遅いと思ったら、黙り込みではなく検索範囲を広げてただけか。


「ウルフが来なければ、爆弾を設置して入り口まで戻る感じですか?」


「おそらくそうなるだろうな。この人数でモンスターの領域へ行けなんて命令はありえない。そもそも、周辺の哨戒任務でこんなことをしていること自体、契約上おかしいからな」


 おや? ならどうしたて、その任務を受けているんだ?


「多少リスクはあるが、それに見合った報酬を上乗せさせたからな。複雑なつくりになっていないのであれば、俺1人でもある程度対処ができると踏んで、この任務を受けている。もちろん、お前にも追加報酬はあるからな」


 任務が変更されたときに疑問に思うべきだったな。本来ありえない任務変更がされたのに、こちらの意見を全く聞いていない。どう考えてもおかしな話だった。


 俺が任務を拒否しても、1人でやるだけだから問題なかったと、笑いながら言っていた。明確には聞かれていないが、それらしいことを聞かれて問題ないと言っていたから、先行させたんだとさ。


 まぁ、ナビィがいるから俺にとっては、問題ない場所ではあったよな。


 俺が行かないといえば、強化弾を全部買い取っていただけだと追加で話してくれた。


 信用されているのか、見定められているのかわからないが、あまり深くかかわってはいけない気がすると思い、そこからは無言になりモンスターの襲来に備えていた。



 30分ほど守っていると、後方から爆破技師が到着し爆弾の設置を始めた。


 特に襲われることなく、すべての爆弾を設置し終えた俺たちは、無事に穴から出ることが出来た。


 今から爆破する場所は、間引き部隊の下を通りモンスターの領域を爆破することになる。なので、先に間引き部隊へ連絡をしていて、ベースキャンプとなる場所が移動していた。


 移動する前の位置が一番効率のいい場所になるのだが、爆破するため残っておくわけにもいかず、移動した形らしい。


 すべての準備が整い、侵攻用か偵察用かは分からないが、モンスターたちによって作られた穴を爆破する。


 連続的に爆発が起こり、穴が封鎖された。


「あれ? モンスターの領域で騒ぐと、モンスターが襲ってくるんじゃなかったでしたっけ?」


「襲ってくるが、それを見越して街から追加の人員が来ているから、ここら辺は問題ないはずだ。いくつか来るだろうが、これだけ開けた場所なら、3桁は同時に来ないとたどりつけんよ」


 こっちは爆破技師を合わせて5人もいるからな、だとさ。


 こっちに来る心配より、派遣された追加人員に巻き込まれないように注意するほうが、大事なことだと注意を受けた。


 各街には超人ではないが、使い捨てを前提に戦闘に特化した完全義体の囚人がいるため、そいつらが派遣されているのだとか。


 制御関係は街の方で握っており、解除することは不可能なんだとか。とにかく、街に害をなす敵と戦うための存在と化しているのだとか。


 戦闘能力の高い、奴隷兵ってところだな。


 守るために戦うが、持たされている武器が強いので、周辺の地形が変わることすらあるんだとさ。


『モンスターの領域を犯しても、際限なく襲ってくるわけではないので、波を食い止められればいいと考えているのでしょう。そういう意味では、使い捨ての奴隷兵は効果的ですね』


 何かあっても、自爆装置があるので、周囲の敵を根こそぎ刈り取ってくれるんだってさ。


 地形が変わるのは、最後の自爆の所為だろうな。自分の意思で動けないらな、死刑になったほうがましだよな……


『死刑にするのがもったいないから、街を守る兵器としての人生しか選べなくなるのです。旧世界でも、アンドロイドの性能が向上したときに、兵器として使われていたらしいですし、こういう部分は変わらないですね』


 今も昔も、自分の意思のない兵器が存在していたってことか。


 アルファの時代には、そこまでのことはできなかったが、それに近い状況にある人たちはいただろうな。


 モンスターの波が押し寄せてきている場所では、ドッカンドッカンと俺たちが使っている通常兵器とは桁違いの威力を発揮した兵器が使われている。



★☆★☆★☆★☆★☆


 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 『フォロー』や『いいね」をしていただければ、モチベーションにもつながりますので、よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る