第55話
3時間ほど担当エリアを調べた後、次エリアへ移動することとなる。
この移動には、1台の車が使われ1班を乗せて2班の位置へ移動して、1班を卸して2班を乗せる。この流れで、哨戒任務の班を移動させるようだ。
同じエリアにずっといさせないのは、半日も同じ場所にいさせると、後半にどうしてもダレてきて精度が下がってしまうという理由で、交代制になったらしい。
俺らは3班で、2班が降りた後に乗り込み4班の位置まで移動する。
移動の車はギルドの人間が運転しており、リーダーが簡単に報告をしていた。
「ったく、一緒の班にクソガキがいて、何度も何度も止まって任務に支障をきたしやがって……」
ボヤいているように見せていたが、明らかにギルドの人間に聞こえるように声を大きくして、俺の評価を下げようかとでも思っているのだろうか?
この任務の意味も理解していない奴が、俺の評価を下げるか……先輩に成果を取られるだけじゃなく、こんな奴もいるんだな。
「お前ら2人は先に降車して、装備の確認をしていろ。俺はもう少し話すことがあるから、先に準備しておけ」
そう言われて俺ともう1人は降車する。
俺は確認のため、ベストにつけている通常弾のマガジンと、太もものサイドにつけている強化弾のマガジンを確認する。
車に乗る時に、誤射しないようにセフティーをかけていた銃のセフティーを外し、いつでも戦闘できる状態にしておく。
隣にいるやつは、特に何もせずにボーっと周りを見ているだけだった。
こいつ、車に乗る時に誤射を防ぐためのセフティーをしてなかったのか……次からは、あいつの銃口の方向に気を付けないとヤバいな。
時間にして1分ほどでリーダーが戻って来て、哨戒任務が始まる。
「さっきのエリアほどではないが、ここでもモンスターの形跡がいくつか見つかったから、形跡を見つけたらしっかり確認する必要がある。見つけたら報告をするように」
方向を指示して、モンスターに警戒しながら、色んな形跡がないか調べていく。
確かにモンスターの形跡がいくつもあった。死体は基本的に残らないので、残っているモノは足跡だったり、死んだ後に放置され死体が分解された後のようなモノがあった。
哨戒任務で一番街から離れた位置に着たところで、荒野の先に緑が見えた。あそこからがモンスターの領域らしい。境界線上にハンターの反応があるので、あっちは間引きをするチームがいる場所かな?
「リーダー、森とここの中間あたりに、何か動くものがありますが、何かわかりますか?」
俺はナビィのアシストで、そこにモンスターがいることは分かっているのだが、何かが動いたとリーダーへ報告し、確認してもらうことにした。
クソガキは、また点数稼ぎか……みたいなことを言っているが、報告したところで点数なんて稼げないことを、何で理解できないのだろうか?
「どこらへんだ?」
質問をされたので、モンスターのいる方向を指差す。
「おぉ~、良く見つけたな。1km以上は離れているが、確かにモンスターがいるな。間引きのチームが見逃したか、見つからずに移動できる通路があるのか……」
少し悩んだところで、持っていた小さな機材を操作し始めた。
間引きを担当しているギルド職員に連絡をいれているようだ。俺が言ったように、ちょうど中間点当たりにモンスターがいることが伝えられ、どう対処するかを聞いていた。
近い距離であれば、この程度の機材でも通信は可能なんだな。
「詳しく調べる指示が出た。この先、俺の許可があるまで発砲は禁止だ」
リーダーとはいっても、細かく指示を出すわけではない。行動の方針を決める役割を担っているだけだ。だからその指示に強制力はないが、リーダーの指示は適切だった
ウルフ系のモンスターは、瀕死になると仲間を呼ぶ雄たけびを上げることがある。そうすると、50~100匹くらいの小規模な集団が、襲ってくることがあるからだ。
初心者の講習でも教えているそうだが、俺はナビィからそのことを習っている。
見つからない様に遮蔽物に身を隠しながら、モンスターを見つけた付近へ移動していく。
発見したあたりから100m付近までくると、リーダーがモンスターの数に少しビックリしていた。
数にして6匹、2~3グループだけなのだが、自分たちの領域でもないのに、6匹もいることに驚いたようだ。
俺が先日探索した遺跡は例外だが、モンスターは基本的に自分たちの領域以外では、最小数でグループを組む。ウルフの場合は、2~3匹。それ以上集まることは、基本的に無い。
モンスターの数を確認したリーダーは、もう1度連絡を取り、どうするか意見を仰いでいる。
その際に、「1人使えない奴がいるが、今いる数を殲滅するだけなら問題は無いと思う。援軍が来たら、危険だと判断する」と、小さな声で言っていたが、聞こえてしまった。
クソガキは俺の方を見て、お前の事だ! と言わんばかりの顔をしている。
「殲滅の指示が出た。同時に6匹全部倒したら、一度ひくようにも指示が出た。命令は、殲滅後一時退却だ」
「リーダー、質問があります。的確に止めを刺さないと拙いですよね? 強化弾を使うべきでしょうか?」
通常弾でも問題は無いと思うが、リスクを減らすためには強化弾を使うべきか、悩んだのでリーダーに聞いてみることにした。
「瀕死になってしまっても、仲間を呼ぶ前に止めを刺せるなら、通常弾でも問題はない。弾の種類は、自分の射撃の腕を考えて選ぶといい」
なるほど。仲間を呼ぶにしても、雄たけびを上げる前に叩き潰せばいいのか。ナビィ、視界のサポートだけ強めにお願い。
準備が整うと、リーダーから射撃の許可が下りる。
リーダーに割り振られたモンスターへ、銃撃をする。
距離は50m程にまで近付いていたので、問題なくウルフの頭と首のあたりを撃ち抜く。ナビィの調整してくれた、アーマーの反動軽減は優秀だな。
2匹目を撃つと同時に、クソガキが俺のターゲットを狙って撃っていた。
「お前、トロ過ぎだろ? すぐに倒さないから、俺がやってやったんだ感謝しろよ」
そんなことを言ってきた。体格がいい分、俺よりは安定して射撃をできるのだろうが、お前の使った銃弾は、2匹倒すのに20発近く使い、俺のターゲットも10発近く撃ち込んでいた。
それに対して俺は、2匹に対して6発しか使っていない。モンスターに気付かれても1匹ずつ的確に倒すことを選んだ俺は、間違っていないと思う。
3匹倒すのに、1マガジン使い切るとか、本当にバカなんじゃないだろうか?
6匹全部を倒し終わったので、退却をしようと移動を開始する。
★☆★☆★☆★☆★☆
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
『フォロー』や『いいね」をしていただければ、モチベーションにもつながりますので、よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます