第54話

 ナビィが案内してくれたデータ保管場所には、アルファが生まれる前のアニメから、社会人になる前に見ていたアニメ、そしてアニメ化していなかった呼んでいた小説などもあった。


 全く分からないアニメもあったが、これはアルファがいなくなった世界で作られたアニメだろう。


 知らない小説も、マンガも隣のデータ保管庫にあった。


 正直、これだけでアルファは、十年単位で籠れるんじゃないか? みたいなことを考えていた。


 情報屋とかになれば、情報収集している間に暇な時間ができるので、時間を潰すのにはちょうどいいかもしれないな。



 依頼を受けた次の日は、ナビィの言うとおりにゆっくりと家で過ごしている。


 リュウは、もともとアジトに籠っていることもあって、アクティブな方ではないが、訓練を始めたあたりから体を動かすことが日課になっているので、無理のないストレッチや運動をしたりしている。


『体に負担の少ないトレーニングも、考える必要がありそうですね。次の家では、小さなプールもあるといいかもしれないですね。自重による負担が減って、水中で訓練すれば肺活量にもいい影響がありそうですね』


 馬とかでは聞く話ではあるけど、人間で自重による負担を減らすためにプールって……あくまで、膝が悪い人だったり、ダイエットで使う話は聞くけど、自重の軽減を考えたトレーニングは聞いたことが無かった。


 トレーニングに使っている話は聞いたことあるから、自重の軽減は後付けの理由っぽいな。



 俺は、ナビィのように自由に移動することは出来ないが、体の中にいれば比較的自由に動けるので、リュウが体の主導権を握っている時は、リュウの視界に入らない場所に、空間投影ディスプレイなどで見ることもできる。


 だから、淡々とした訓練や同じような訓練が続くときは、時間を潰すのもありかもしれないな。


 リュウはリュウで、戦い方の教本になりそうな本や動画を要求して、呼んでたりするんだよな。


 どういう原理なんだろうな……何故か真後ろまで見ることができるので、邪魔にならない場所にならない所で、お互い表示してみている感じだ。




 2日目に入ると筋肉痛はおさまっており、予定通り訓練を始めることができた。


 1日訓練を休んだ形ではあるが、体の動きが悪くなるようなことは無かった。午前中に座学で勉強をして、午後はギルドで射撃訓練。その帰り道にシルバーブレッドで、依頼と訓練で使った分の弾を補充した。


 依頼なども見てきたが、遺跡探索のような特殊な依頼は無く、基本的にあったのはモンスターの間引きくらいだった。


 哨戒任務もあるようだが、そちらは人数制限があるので、俺が言った時間には残っていなかった感じだ。


 哨戒任務と言っているが、簡単に言えば街の周辺警戒であり、モンスターと戦うことはほとんどない。たまに近付いてくるモンスターを処理する、簡単なお仕事だ。


 報酬はそこそこだが、安全なのでこの仕事を選ぶハンターは多かったりする。


 リュウもアルファも乗り気ではないが、細かく依頼を受けていかないと、手術を受けられないので、依頼を受けていく必要がある。



 次の日、俺は朝からハンターギルドに来ている。人が多く、ごみごみしていた。そこで哨戒任務を受けることができた。


 哨戒任務は、3人1組のスリーマンセルで、3~4組に分かれて時間で3時間ほどで警戒する場所を変えながら、任務にあたるのが基本だ。


 俺たちのグループは、ベテランっぽいハンター1人と俺よりは身長が高いが、子どものような新人ハンターが1人だった。


 子どものようなといったのは、班が一緒になった時、「こんなガキが一緒の班かよ……これで同じお金貰うってんだから不公平だよな」とか言っていたからだ。


 リュウには、元々この手の嫌味は効かないし、アルファはそれなりに大人だったので、子どもが粋がっているな……くらいにしか考えていなかった。


 装備を見てわかるように、こっちの方が明らかに上だからな。


 アーマーは装備しているみたいだが、俺たちのより性能は低く、稼働時間も短いタイプだとナビィが教えてくれた。


 アーマーの稼働時間が短いのは、大して問題ではないんだよな。シールドが切れるほどの攻撃をくらう前に、逃げるのが正解だからな。


 稼働時間が短いというのは、くらえる攻撃の回数が少ないというだけだ。


 俺たちの班のリーダーは、1人だけいたベテランのハンターがすることになり、リーダーからの命令で俺たちは行動することになる。


 リーダーはリーダーで言葉には出さないが、子どものお守りか……などと考えている表情だな。実際の所、俺たちは子どもだから、そう思われても仕方がない。


 リーダーの指揮に従って準備を始める。


 マガジンの確認と発射のできる段階まで銃を操作し、感覚を確かめていく。


 時間になり、所定の場所へ移動する。



 今回は、ナビィのアシストはありで、制限なくサポートしてくれている。


 自力でやったところで、この手の行動は大した経験を得られないので、全力サポートをしてくれるのだとか。


 街の周辺だけあって、モンスターの形跡はあれど、モンスターの姿は見当たらないな。


 ベテランのリーダーは、警戒を緩めることなく周囲を観察しているが、もう1人は周囲を確認するのも面倒になったのか、中途半端な警戒でお茶を濁している感じだ。


 俺は、全力サポートを受けているがゆえに、普段なら気付かないようなことまでナビィに教えてもらっていた。


 座学に近い教え方をしてくれるので、リュウが面白いほど知識を吸収しているな。


 30分に1度くらいのペースで、リーダーに許可をもらってモンスターの形跡を調べていると、リーダーは感心しているが、もう1人は「点数稼ぎか何か知らないが、動きを止めさせるなよ」とか言っている。


 一応、哨戒任務の備考欄に、モンスターの形跡を調べるように注意書きがあったのに、こいつはそれすら読んでいないのだろうか?


 この先が思いやられるな……



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