第52話

 街についた俺は、リヤカーのようなモノを借りて、遺跡から運び出したウルフ系のモンスターを3匹移し替えて、ハンターギルドまで運んでいく。


 メイン通り沿いにギルドがあるので、こういった光景は良くあるようで、また運んでいるな……程度の視線で済んでいる。


 まぁ、3匹の内2匹は光学迷彩のウルフだったのだが、光学迷彩を使っていなければ、ただのウルフ系のモンスターに見える。


 なので、強化種が率いていたウルフたちを仕留めたから、3匹全部回収してきた新人なんだろうな、といった視線も込みだ。


 モンスターや素材を運んできた場合は、倉庫側へ回りそこから鑑定をしてもらう形になる。


 倉庫へ入ると、俺以外にもハンターがおり、いつになく騒がしいハンターギルドだった。


 いつもは人がいない時間に来ていたから気付かなかったが、本来はこんな感じなんだろうな。


 初めて見る鑑定士の人が俺の持ってきたウルフを見て、「強化種じゃないウルフは、持ち帰って来ても困るんだけど……」と言ってきた。


 そこで発見した時の情報を話すが信じてもらえず、嘘つくとペナルティーがあるから気を付けなさいとまで言われた。嘘なんかついてねえよ!


 このままだと、調べる前に処分されてしまいそうだったので、少し忙しそうにしていたが、俺の事を知っていて朝送ってくれた鑑定士がいたので、声をかけることにした。


 5分ほどで、やっと声をかけられそうになったのだが、俺に嘘つきといった鑑定士が止めようとするので、強化外骨格のパワーアシストを使って、強引に進んでいく。


 子どもに引きずられる鑑定士の図を見て、苦笑している姿が……


 俺が声をかける前に、先にいた鑑定士が事情を説明して、新人の俺が嘘を付いてお金をだまし取ろうとしている、嘘つき野郎だと言い始めた。


 信用されないのは分かっているけど、調べずに嘘つき野郎と断定するのは、本当にムカつく。こいつは、俺が元々スラムの孤児だったことも知っているようで、そのことでも俺の事をバカにしてくる。


「君は、この子どもが嘘を付いているというのだね? では、嘘だと断定した証拠を提示しなさい」


「えっ……? だって、スラムの子どもが言っている事なんて、大半が嘘ですよ? それなのに信じるのですか?」


「信じる信じないではない。嘘だと判断した、決定的な証拠を見せてほしいと私は言っているのだ。それがあれば、信用などと目に見えないモノを気にする必要が無いと言っている」


「私より、あのスラムの子どもを信じるのですか!?」


「はぁ……君は、私の言っていることを理解していないようだな。リュウ、そのウルフを見せてもらってもいいかな?」


 俺の事を知っている鑑定士は、俺がこんなことで嘘を付くとは思っていないのだろう。そもそも、嘘を付いてお金を稼ぐ必要なんて、今の俺には無い事を知っているからな。


 リュウは、こういった説明が苦手なので俺が体の主導権を得て、知り合いの鑑定士……長いな、この人の名前はなんていうのだろうか?


 名札を見ると、ボーマンと書かれていたので、今度からはボーマンと呼ぼう。


 ボーマンに、遭遇した時の情報を伝える。そして、他にも通常のウルフが数匹いたことも話して、ギルドに持たされた記録用の機械を渡した。


 光学迷彩のウルフを10分程調べ、その間に用意させていた機材で記録を抜き抱いていた。


 戦闘記録も残るようだが、詳細までは分からないが、どういった戦闘をしたかを裏付けることができる。


「確かに、普通のウルフとは違うな。普通のウルフには、この部分に機械は埋め込まれていない。それなのにこの2匹のウルフには、同じ場所に見たことのない機械が埋まっているな」


 ボーマンがそう判断したのに、初めに俺の対応をした鑑定士が、ギャーギャー騒いでいる。


 その騒ぎを聞きつけたのかギルドマスターもやって来た。


 それを発見した鑑定士が、ギルドマスターに今回の話を伝え、自分は何も悪くないと必死に訴えている。


 だけどボーマンが判定したように、新しい強化種のウルフがここに2体いる為、鑑定士の言い分が通ることは無かった。


「君は、新人ハンターだからと言って、話も聞かず嘘だと断定したようだな。このウルフが本当に彼の言ったような能力を有しているのであれば、しっかりと情報共有をする必要がある。


 その情報を知らなかったことによって、生まれたであろう被害を考えれば、君の行為は……ギルドへの違反行為だと言わざるを得ない。後で沙汰を出すから、地下で大人しくしていなさい」


 ギルドマスターに冷たく切り捨てられた。


 新人の俺に違反にならないように注意しただけ、などと後付けの言い訳をするが、新人が相手なら真実を確かめてから言うべきだった、と言い訳を聞く耳すら持っていない。


『前にも同じようなことがあったようですね。副ギルドマスターと同じ、貴族出身の困った人材だったようですね』


 なるほどね。貴族出身ってことは俺たちスラムに住んでいる人間を、人間だと思っていない奴らってことだな。


 もちろん、そうではない貴族もいるが、大半はこいつと同じように出身で差別するような奴らだ。


 特に、出身以外誇るものが何もない、貴族籍を抜かれた副ギルドマスターやこの鑑定士のような奴らに多いそうだ。


 後は、ギルドマスターが処分してくれるだろう。俺のおかげで、問題児の2人がいなくなって、ギルドもホクホクだろうな。


 副ギルドマスターは、俺の所為だという証拠は無いから、公式的に1人ってことだな。


 部屋を移動し、俺が手書きした簡易的な地図と記録を照らし合わせ、遺跡の情報を共有した。



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