第50話
1・2・3匹と、ウルフ系のモンスターが通路に飛び出てくる。こいつらは1匹目と違い、透明化をしていない通常のウルフだ。武装もなく、シンプルなやつだな。
ナノマシンに汚染されている動物だから、もっとメカニカルな姿をイメージしていたが、メカニカルなのは昆虫系のモンスターが中心らしい。
昆虫は、大きくなれないから人間の脅威になりえなかったが、ナノマシンに飲み込まれ機械と融合することで、巨大化に成功しているといってもいいようだ。
全身が機械になったため、人間が捕食されることは無くなったが、ナノマシンに汚染されたので人間に敵対している。良かったのか悪かったのかは、謎だ。
強い弾……強化弾に変えたFLAR-11の威力は、激的に変わった。
弾を変えただけでこれだけ威力が変わる理屈は良く分からないが、通常弾がただ穴をあけるだけなら、強化弾は着弾した周囲も一緒に抉り取るような感じだ。
ハンドガンとマグナムくらいの違いがあるのではないだろうか?
そういう俺も、ハンドガンとマグナムがどう違うか何て、良く分かっていないから有名なホラーゲームの印象で考えている。
顔にあたれば顔半分は吹き飛ばし、足にあたればその足をもぎ取っている。3発で3匹を行動不能にして、生き残った2匹に1発ずつできっちりと止めを刺している。
まだ足音が鳴りやまない。
少なくとも3グループは、あの先にいたという事だろう。この後、どれだけ増えるかは分からないが……
4・5匹目は、同時に飛び出してきた。仲間の死体を見ても、なんとも思っていないのだろう。踏みつけてはいないが、無視してこちらに向かってきている。
右のウルフに照準を合わせていると、視界に6匹目が映りギョッとする。
次に現れたのが、お腹の横に銃を装備した強化種だったからだ。
まさかの強化種に慌てるが、射線上に仲間がいるから撃てないだろうと判断して、出てくる順番が悪かったななんて考えていると、
体に軽い衝撃を受けた直後に、爆発音が聞こえる。
一瞬何が起きたか分からなかったが、目の前の惨状を見てすぐに理解した。
あの強化種は、仲間を関係ないとばかりに、巻き込んで俺を銃撃したのだ。
リュウが照準を合わせていたウルフは、下半身がズタボロになっており、もう1匹は死んではいないが穴だらけになり倒れていた。
左右に1丁ずつアサルトライフルのような物を装備している強化種は、仲間ごと俺を攻撃して、軽い衝撃はアーマーのシールドが銃弾を受け止めた際の衝撃だったようだ。
まさかの事態だが、動きを止めるのは死ぬことと同義だ。リュウは硬直した体を無理やり動かし、強化外骨格のパワーアシストを受けて強化種の射線から逃げるように動く。
リュウはおそらく、何かを考えて動いているわけではないだろう。壁を蹴り天井を走りながら射線を躱している。
これは、リュウの身体能力というよりは、ナビィが調整した強化外骨格のおかげだろう。
そんな回避状況の中、5発の弾を撃ち何とか強化種の動きを止めることに成功した。
自分のしたことに驚いているリュウだが、足音が終わっていないことを警告すると、すぐに意識を切り替えた。
既に7匹が死んでいるのに、まだモンスターがいるようだ。
足音がした際に確認した時には、1匹も確認できなかったのに……手前に光学迷彩ウルフがいて、その奥にあいつらがいたってことだよな。奥はそれなりに広いってことか?
強化種の射線から逃げるために近付いていたことに気付いた時には、3匹のウルフが姿を現していた。その距離は凡そ25m程。
ウルフ系のモンスターなら、1秒もあれば接近できる距離だ……
リュウが咄嗟に取った行動は、腰の後ろにつけていた野球ボールほどの丸い球体を取って、ウルフに向かって軽く投げ全力で後退する。
リュウの投げた球体は、放物線を描いてウルフに近付き、ウルフが通り過ぎようとすると急に爆発した。
俺たちは爆風に背中を押されて、吹っ飛ぶかのような勢いで入り口へ向かっている。
リュウの投げたのは、手榴弾だ。
昨日買ったものでは無く、射撃訓練の後に何度か買いに行っている時に手に入れた、手榴弾を今日は持って来ていたのだ。
洞窟のような場所で使うものでは無いが、近距離で爆発した手榴弾は一番近くにいたウルフの頭を吹き飛ばし、少し離れていたウルフ2匹も行動不能にしていた。
通常弾の値段が約100クレジット、強化弾は800クレジットに対して、今回使った手榴弾は40000クレジットはするものだ。
センサーがついており、スイッチを押し味方と登録されていないモノが近付くと、爆発するタイプのものだ。ジャミングの影響を受けていると、誤作動して自爆することがあるので注意が必要。
そんな高価なものを使ったのも、今回使った手榴弾の威力減衰距離が短いタイプだったからだ。
手榴弾は本来、人を殺すための武器ではなく、とにかく負傷者を増やすための武器だ。死んでいれば放置するが、生きていれば助けないわけにはいかない。そういった心理に付け込んだ武器という事だ。
それでも近距離で炸裂すれば、十分に対象を殺しうる武器だし、多少離れていただけでは、完全に回避することは不可能だ。
リュウはそれをアーマーのシールドで自分への被害を防ぎ、効率よく相手を葬るために使ったのだ。
俺だったら勿体なくて使えなかっただろうが、リュウには関係が無かった。自分が生き相手は殺す、そういった心情で動いていたリュウは、迷いがなかったな。
10匹倒したところで、打ち止めになったのか足音が聞こえてこなくなった。
入り口に向かっていたが、銃を構え振り返って確認する。
ウルフの生き残りは2匹いるが、それも虫の息。動こうにも手足が半数もがれているので、動くに動けないでいる。
敵がいないので、マガジンを入れ替えて通常弾を使って頭を打ち抜く。
全員死んだことを確認して、一旦入り口まで戻る判断をする。
その時一緒に、初めに倒した光学迷彩を使っていたウルフの死体も回収しておく。
リュックから使った分の弾を補充する。強化弾は、追加で買っていなかったので補給できなかったが、まだ110発はあるので問題ないだろう。
ゲームと違って、銃弾の管理……マガジンと弾数の管理は大変だな。
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