第48話

 左の通路最後の道を探索していると、少し人工的なエリアにやってきた。地下室なのか地下通路なのか分からないが、右側の壁に当たる部分が人工物の平面のように見える。


 先へ進んでも他の道と同じく、先にすすめなくなっていた。


「ナビィ、確認だけど、この壁の向こうに何かあったりするか?」


『こちら側は探索が終わっているので、叩いてみてはいかがですか?』


 そっか、こっち側はモンスターもおらず、多少音を出しても問題ないってことか。


 構えていた銃をおろし、壁を叩きながら歩いてみる。


 壁自体が分厚いようで良く分からなかったが、壁の向こうが空洞という感じはしない。みっちりと中身が詰まっているような感じだ。


「ナビィ、向こうは一応建物の中でいいのか? だけど、土か何かが詰まっていて探索は難しい感じであってる?」


『大体、間違いありませんね。1つ付け加えるなら、土に押しつぶされた場所に何か遺物がある可能性はあります』


 人工物があったら、その遺物がある可能性もあるか。一応、今日の探索の報告で上げるべき内容かな。


 ハンターギルドで持たされた調査・記録機器は、どういった動作をしているか分からないので、自分なりに分かりやすくメモを書いておく。


 メモといっても、入り口を入って左側の通路、その中で一番右の通路に人工物のようなものあり……くらいしか書けないんだけどな。


 ギルドの機器がきちんと記録をしてくれているのであれば、この言い方でも問題はないはずだ。もしものために、簡素な地図も書いている。


 リュウが体を動かしている間、アルファが暇だから出来る荒業ではあるが、各分岐までの歩数をアルファは数えて、それをメモするように伝えている。


 高低差の分からない、一本線で描かれた地図ともいえない地図だけどな。歩数が分かっていれば、大体の距離が導き出せるから、これでも十分情報にはなるな。


 緊張しながら進んでいたため、すぐに終わったと思っても、2時間近くかかっていたことに驚いた。集中しているのとは違う時間の進み方だ。


 昼食を食べるにはまだ早いので、入り口付近まで移動して、そこで少し休憩を入れることになった。


 リュウもアルファも気を張っているが、休む時はナビィがサポートしてくれるので、気持ち楽をできている。


 30分しっかりと休憩を取った俺は、入り口から入って右側の通路の探索を始める。


 分かれ道は全部左から調べる。これを徹底していれば、同じところを間違って探すことは無いだろう。一応、マーカーも持って来ているので、間違えることは無いと思う。


 結構複雑な洞窟になっているのが、探索するうえで一番面倒なところだ。


 何度かどん詰まりにあたり、引き返したところで昼食をとることにした。ちょうど入り口付近に戻る必要があったので、タイミング的には少し遅れた昼食だが、休憩するにはいい時間だった。


 右側の通路は広く、左側の数倍はありそうだった。


 ギルドも広さを把握していないので、1日毎の依頼となっており、2日目以降は前日受けたハンターが優先的に受けられるようなシステムになっていた。


「1日で終われるかな……?」


 ナビィがボヤキに反応することは無く、沈黙を続けているのでこの遺跡の広さを測る物差しは無い。


 探索の注意点は……前日のナビィの言うとおりであれば、モンスターがこの遺跡にはいる。そのモンスターは、リュウが対処しきれると考えているため、自力での探索、訓練のために今回の依頼を利用している。


 光源についても、一応持ってきてはいるが、視覚補助はナビィがしてくれているので、光が無くても遠くまではっきり見ることができる。


 最探索を始め3本目の通路を進んでいる時、何やら音が聞こえた。小さな音だが、微かに通路の先から聞こえてきた。


 ウルフ系だったとして、足音が聞こえるってことは、かなり近くにいるんじゃないか?


 小さな奴でも成犬のゴールデンレトリバーくらいのサイズなので、それなりの距離だと思う……


 銃を構えたまま止まり、しゃがんで通路の先を見る。


 15m程先に分かれ道があり、左側の通路は見えないが、右の通路はほぼ直線なので、奥まで見ることができる。


 そちらは、先は無く行き止まりになっている。


 誰がどう考えても、分かれ道の先にモンスターがいる。


 少し下がっておびき寄せて倒すか、分かれ道の先を覗いて考えるか……


「ナビィ、視覚の補正はしてくれるんだよな?」


『補正はしますが、あくまで想定している機材のランクまでの補正しか行いません。あまり過度な期待は、しないでください』


 なるほど、索敵の機械を肩代わりしてくれている感じか。ナビィがいなくても、機材があればできる範囲のサポートってことか。


 ナビィが俺から離れることは無いが、この能力が無制限に使えるかは分かっていないので、それに備えた訓練みたいなものだと思おう。


 少し迷った後にリュウは、通路の先を覗いてから考えると判断した。


 通路の先を覗くには、本来はカメラを使うのだが今回は持っていないので、ナビィが指で代用してくれることになった。機材があれば、このくらいの装備はあるだろうとのことだ。


 指を壁に沿わせて通路の先を見るように指を伸ばす。


 ナビィが、カメラの代わりに映像を出してくれるが、そこにはモンスターは映っていなかった。


 まだ音は聞こえているのに、モンスターが見つからない……


 まさかと思い、元居た通路の方を振り向くが、モンスターはおらず。


 俺たちの感覚が間違ってなければ、音は今カメラを向けている先から聞こえてきている。


 どういうことなのだろうか?



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