第45話

 あの女は、あいつの父親があいつにつけた、護衛兼お目付け役といったところか?


 街の外であったら銃を向けてきそうだな……っと、まぁ身なりも良かったし、いいとこの家の出なのだろう。そんな奴がハンターの真似事なんてしないか。


 ナビィが探してきた情報だが、四葉の企業系の会社ではないが、そこそこ稼いでいる会社の三男のようだ。


 後継者は長男に決まっており、次男は補佐役として長男を支える立場についたようだ。この2人の中は良好だが、末っ子の三男……お坊ちゃんは、問題児で頭痛の種らしい。


 こんなに出来の悪い弟がいれば、頭が痛くなるってもんだな。


 あのお坊ちゃんが、護衛の女が来てから強気になったのは、以前にもトラブルを起こし絡まれたことがあるそうで、その時に襲ってきた敵を全員完膚なきまでに倒していたから、強気になったと思われるだってさ。


 要は、お坊ちゃまに害を加えようとしなければ、俺が襲われることは無いだろう。他にもいたようだから、単純に戦力が2倍というわけではなく、連携を取られれば、何倍も手強くなる。


 あの場で戦う選択肢はなかったから、ひいて正解だったな。


 お風呂へ入るが、暖かいお湯が冷たく感じるほど、護衛の女と正体不明の監視者に恐怖したのだろう。


 リュウは比較的安定していたが、こういった耐性の無いアルファは、かなり震えていた。


 宣言通りお坊ちゃまは、父親に俺との件を話すが、まったく相手にしてもらえていない。正確な報告が護衛の女からされると、お前が悪いと怒鳴られていた。


 俺を襲え! とか命令を出すような人間じゃなくて助かった。


 その映像で印象的だったのは、『お前が雇っているわけではない。私が私のお金で、護衛を雇っているのだ。お前が容易く扱っていい存在ではないのだ! 身の程を知れ!』と、怒っていたことだな。


 この父親から信頼を受けている長男と次男は、ここまでの人物かは分からないが、少なくとも三男のクソガキのような、バカにはなっていないだろう。


 それにしても、金持ちの子どもだったか……それとわかっていたら、関わらなかったんだがな。


 ナビィに言わせると、大したことが無いと思っていたから、監視されていた時に情報交換をしなかったのだとか……これは、俺が悪い。俺の基準をナビィに伝えていなかったので、自己判断しただけだからな。


 モノによっては、明確に指示を出す方がいいってことだな。


「俺の事を監視していたもう1人の特定はできてたりする?」


『もちろん、出来ています。リュウの前に出てきた女と、こちらに視線を向けていた1人と、それの近くで警戒していたもう1人を監視しています』


「了解。後、坊ちゃんの家族とその周辺も可能な範囲で監視してくれ」


『危険な3人と、クソガキ1匹とその親は厳重に監視しておきます。連絡を取った相手も、監視対象にする予定ですが、問題ないですか?』


「そんなに監視して大丈夫か?」


『問題ありません。タダ監視するだけですので、自分には大して負担はかかっていません』


「無理しないように頼むよ。それにしても、嫌な奴にあっちまって気分が悪いわ……風呂に入って、のんびりとしよう」


 旧アジトに比べれば何もかも広いが、部屋よりもお風呂が気に入ってここを選んでいるので、ゆったりと入ることが可能だ。


 4人が同時に入って足を延ばしてもぶつからない位には広い。という事は、1人で入ると……


 お風呂にこぼれるくらいお湯を張った後に、縁に頭を乗せリラックスすると、お風呂に浮かんでいるような状態になる。


 銭湯や温泉では、他に人がいてできないけど、家にこのサイズのお風呂があれば、やりたくなるよね。


 リュウには分からないので、1人で楽しんでいるような状況だな。


 のんびりと、浸かれる幸せを噛みしめていると、


『リュウ、クソガキがどうやらハンターになるようです。リュウのように小さくてもハンターになれるなら、自分にだってなれる! とか言って、1人で登録に行ったようです』


 あいつがハンターになって、何があるんだか……


「装備はどうなりそうだ?」


『お金はあまり出してもらえなそうですが、それでも強化外骨格は購入するようです。リュウと同性能くらいでゴッツイタイプの強化外骨格のようです』


 あまり出してもらえないと言っているのに、簡単に街に住んでいる一般家庭の平均年収の何倍もの値段なんだけどな。


「あいつ1人なら問題は無いと思うけど、護衛の奴らがついてきたら……面倒なことになるな。向こうから銃を向けてきて、こっちも銃を向け返したら、護衛に撃たれそうだな……」


『依頼で被らない限りは、避けるように行動すれば問題ないと思います』


 これからは、注意して動く必要がありそうだな。


「まぁ、広い荒野で偶然遭遇することの方が珍しいわけで、そう簡単には合わないよな」


 ナビィがいなければ、気を付けることもできなかったからな。不意な遭遇が無くなったと考えればいいか。


 体がふやけるまで入った後は、帰り道にお店で買ってきた牛乳をグイっと飲む。この体ではくだすことがないので、好きな牛乳をグビグビ飲めて嬉しいな。


 アルファの体が合った頃は、牛乳が好きでも飲むとお腹をくだしてしまったので、飲むのをひかえていたんだよな。


 この牛乳は、乳製品のお店で売ってたのを、瓶に詰めてもらって買ってきた物だ。


 この世界は、コンビニのようなモノは無く、スーパーもある街とない街があるそうだ。


 買い物が1ヶ所で出来るように商店街を街が作り、そこに行けば色々購入できるようになっている。


 20時くらいまでは買い物ができるところもあるが、夜には購入に行くのではなく、食事処に食べに行くのが普通らしい。


 酒を飲んでいるマナーの悪い大人もいるので、お店選びは慎重にする必要があるだってさ。


 俺は、屋台で買ってきたので、問題ない。


 アルファは、独り暮らしで料理はそれなりにできるので、食材を買ってこようかと思っていたが、訓練が大変で料理する体力まで残っていないから、基本的に買い食いになっている。



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