第43話

 戻ってきたお姉さんは、2つのリュックを持ってきた。


「アーマーを付けた君にぴったりなのは、この辺だと思うわ。背負ってみて違和感がないか確かめてみて」


 そう言われて、リュックを背負う。


 リュックにあうあわないがあるとは思ってもいなかった。旧世界のリュックは簡単に調整できたし、違和感なく運べていたので、そんなものだと思っていた。


 言われた通りに背負ってみるものの、良く分からなかったため首をかしげていると、他のリュックも持って来てくれた。


 前に持ってきた2つと、後から持ってきた物では、明らかに背負い心地が違った。


「リュックは大きいものが良いと思われているけど、大きすぎると調節しても、背負いにくいのよね。戦闘中に背負ったまま戦うことを考えると、あわないものを背負ったままだと、不安が残ると思うけど、どうする?」


 確かに戦闘することを考えると、体に合わないリュックは動きの邪魔になるよな……ナビィも、そこまで高い買い物ではないから、体に合わせて買うべきを言っていた。


 それに、俺のアーマーが中古という事を考えてか、リュックも新品ではなく中古の物を出してくれている。もちろん新品もあるが、色々なことを考えてくれているようだ。


 アルファは、このお姉さんに好感度が高いが、リュウは色々と疑っている節がある。


 最終的には戦闘を担当するリュウが、始めに持ってきたリュックの内1つを気に入ったので、それを背負うことになった。


 後はリュウの意見で、アーマーの上に着る服も見せてもらうことになり、服を選んでいる。


 ファンションに目覚めたとかではなく、マガジンを戦闘中に取りやすい位置に身に着けて置ける服が欲しかったようだ。


 リュックにもマガジンをセットする場所はあるが、背中に手を回すことを考えると、前にあった方が時間がかからないと考えているようだ。


 余程の事が無ければ、マガジン1つで事が足りるだろう。今は不安が残るが、その内問題なくウルフ系のモンスターの群れを、倒すことができるはずだ。


 3匹以上で群をなしているウルフだが多くても6~7匹で、それ以上となると初心者では対処が難しくなる。


 10匹を超えてくると、複数の群れがさらに集まっているので、手を出すと3桁に迫るウルフ系に襲われることとなる。モンスターの生態は良く分かっていないが、ギルドから推奨されている数がその程度という事だ。


 沢山襲ってこないかもしれないが、実際に襲ってきた事例がいくつもあるため、倒せると判断したとき以外は戦いを避けるか、撤退するのがベターな選択という事なんだとか。


 今のリュウの実力と強化外骨格の性能があれば、3匹なら問題なく4匹なら少し危うといったところだろうか?


 相手が動くことを考えると、今1マガジンで倒せるのは3匹くらいだとアルファは考えている。


 素人による銃の命中率が低いのは、銃弾を撃った際の反動……リコイルのせいだ。銃弾を撃ってから銃身を通りぬける僅かな時間で、リコイルによる跳ね上がりが起きて照準がズレるというものだ。


 アルファの生きていた時代に華奢な女性も自衛隊にいて、射撃訓練をしている。訓練風景を見ると、スタンディングで撃っている人は少なく、体を伏せた状態で撃つ姿がメディアで流れることはあった。


 伏せて銃身の跳ね上がりを抑え、体全体でリコイルを受ける場合は、多少の技術があればできるそうだが、それでも100m先の的に当たるとか……多少の技術でなんとかなるモノなのか?



 いろんな疑問はあったがリュウの小さな体でも、アーマーによる衝撃吸収と、強化外骨格によるパワーアシストがあれば、立った状態での銃撃も問題なくできる。


 ナビィからも銃撃に慣れてきたら、アーマーの衝撃吸収も切った状態での訓練をすると言われているので、外的要因を排除した訓練もするみたいだ。


 アーマーを隠す意図はないが上に着るものなので、アーマーが全部隠れる形になってしまった。下半身にもアーマーはついているので、上半身だけ着ていないと考える人間はいないだろう。


 モンスターは、そんなこと関係なく襲ってくるので、見た目にこだわる必要は特にないだろう。


 それより問題なのは良いモノを身につけていれば、不良ハンターに狙われる可能性が高くなるという事だな。


 何故、人とモンスターが戦争している時に、同胞である人間の事を心配して戦わなければならないのか……真に恐ろしいのは、人の心ということなのだろうか?


 そういった事情が無ければ、買える範囲でいい装備を身につけるんだけどな。


 一日の疲れをお風呂で癒していると、ナビィが話しかけてきた。


『ハンターのランクについて、話しておきましょうか』


 そう言って、一方的に話し始めた。


 ランク1~10は初心者、11~30までが初級、31~70までが中級、71~100までが上級、101以上は超級と言われている。


 11、31、71、101には、昇級試験が存在しており、依頼を受けているだけでは、これ以上にあがることは出来ない。試験にパスして、やっと昇級できるようだ。


 上級ハンターであれば、ハンター人口の上位1%になると言われている。中級で上位30%ほど残りの70%近くは初級・初心者が埋めている。


 中級で上位30%というと多く感じるが、その中の半数は30代で停滞しているので、実質15%ほどが中級ハンターの数と言われている。


 その停滞しているハンターの半数は、不良ハンターが占めているので、新人ハンターがカモにされる原因だったりもする。


 その内4人は、この街から追放しているけど、中級ハンターにならずに不良している輩もいるので、一概には言えないのが問題だ。


 その問題もナビィが全部解き明かしてくれるので、注意人物とその関係者には、マーカーを付けてもらっているので、毒牙にかかることは無いだろう。


 シルバーブレッドを選んだ理由も、そういった場所と関係が無いからだったりする。



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