第40話

 弾丸の種類でも色々あるのに、敵に合わせた戦術も考えないといけない……1人でハンターを続けるのは、困難を極めそうだな。


 ある程度、自分の身を守れるようになれば、情報屋になるつもりだったし、ハンターは趣味でやってもいいだろう。男として強くありたいとは思うけど、肉体的ではなく戦闘って面だからな……ちょっと違う?


 とにかく、身の安全を確保するためにハンターになりたかったんだ。スラムの人間がお金を稼ぐには、スラムで大きなグループの幹部になるか、ハンターくらいしか道はない。


 ナビィのいるおかげで、俺はハンターを目指すことが出来た。運よく遺跡も見つけることができ、大金も稼げた。上級のハンターになるためには、この金額でも大金と言えないらしいけどね。


 個人で使う兵器で高価なものになると、三桁億いくと言われているので、中小企業よりよっぽど稼いでる個人が、この世界にはそれなりにいるんだな……とか思ったりもしたな。


 戦術や銃弾の種類に関しては、今すぐに学ぶ必要はない。必要な時に必要なだけ学べば、特に困ることは無い。


 さしあたって俺が勉強しなければならないのは、この周辺に出てくるモンスターの種類と、その対策だな。


 通常出てくるモンスターと、そのモンスターが進化した種や強化種、極稀に出てくるイレギュラーな存在を含めて、それを学ぶ必要がある。



 座学では、モンスター以外の基礎知識なども学んでいるが、こっちは最悪ナビィに教えてもらえば対処は可能だ。



 戦闘訓練の合間の雑談で、モンスターの話をナビィがしてくれた。


 ウルフ系は、基本的に噛み付き攻撃で相手の動きを止め、数で押してくる戦法を取るのが基本らしい。問題は、ここに強化種と便宜上呼ぶ、重火器を装備したウルフがいた場合だ。


 その場合は強化種がリーダーとなって、通常のウルフが足止めをしている間に、強化種の重火器が火を噴くのだとか。この時、仲間のウルフの事を考えず、一緒に死んでもかまわないといった感じで、攻撃してくるそうだ。


 強化種がいる場合は、通常のウルフに近付かれないことも大切だが、早い段階で強化種を倒さないと、不利になってしまう事が多い。


 数によっては倒す順番にも注意を払う必要がありそうだ。


 インセクト系統のモンスターは、偵察や索敵を中心に行っているので、目がいいという特徴があるらしい。


 機械の目がいい? というのに疑問を覚えたが、同じカメラでも解像度や望遠の能力に差があると言われ、機械を組み込んだモンスターも、それと同じ理由なのだろう。


 人間みたいに目が良い悪いという差は無いが、モンスターには目が良いと遠くまで良く見える……といった差はあるのだろう。


 その能力を使った偵察と索敵か……ナビィの下位互換ってとこだな。


 それはさておき、インセクト系統にも重火器がついている奴らがいるのが問題だ。目が良く遠距離から攻撃できる武器を持っていることが、今回の問題点となる。


 アルファのいた時代のスナイパーの平均的な距離として、遠くても1200m程と言われている。


 銃弾の種類にもよるが、1200m離れていると1.5~2秒近く着弾までに時間がかかる。動いている相手に当てることは、ほぼ不可能だ。


 それが機械の演算能力で撃ち出されれば、重力によって落ちる距離や相手の移動速度が関係なくなる。


 今の世界の銃弾の速度は、威力を高めるために速くなっている。どういう原理で速くなっているかは、理解できなかったが秒速で2000mを超える銃弾もあるそうだ。


 そんな速度出せるものなのか? と思ったが、実際に計測されたデータなので間違いはないだろうだってさ。


 ナビィに脅されるような形になったが、基本的にモンスターたちは人間の街へ近付いて、無差別に撃ち殺すようなことは無い。


 ただ、何かしらの要因でスタンピードが起きた場合は、人間の街を飲み込み皆殺しにすることはあるそうだ。


 領域守護モンスターは、体内の生産プラントをフル稼働して、領域を一気に広げるためにモンスターを吐き出すことがある。それを人間はスタンピードと呼んでいる。


 疑似的に起ることもあり、人間の大きな脅威となっている。


 疑似的なスタンピードは、モンスターの領域で大量のモンスターを引き連れて人間のエリアに戻ってしまった、ゲーム用語でトレインという行為を行ってしまったために起きるものだ。


 トレインによって滅びた街はそれなりに存在している。意図的に街を潰すために起こされたモノもあれば、死にたくないとハンターが逃げた結果起きた不幸な事故もある。


 どちらの場合でも、当事者の死刑は確定。前者の場合は、3等親の間柄まで全員が死刑もしくは強制労働の刑に処せられるそうだ。


 名目上は、人類への反逆行為……となっているが実際は、滅ぼされた街に住んでいた企業一家の生き残りが、嫁いだ先の企業の力を使って過激な復讐に出たためだ。


 とはいえ相手は大量殺人犯なので、世論も処刑には積極的だった。下手に力を持っているので、復讐に対する報復だってあり得た。だから、3等親までを処刑したそうだ。


 親族にまで責任の及ぶ形にしたのは、抑止力の意味を込めて法律として採用したのだとか。


 ナビィがこの話をしたのは、何があってもモンスターを連れて街へ逃げてはいけない……という事を俺に伝えるためだ。


 もしトレインをして、どうしようもなくなった場合は潔く死ぬか、緊急依頼を出してお金で解決するか、自力で切り抜けるか、その3択だと言われている。


 緊急依頼の料金は、かなりえげつない金額となっているので、実際に出されることは稀だ。


 死にたくないからといって金も無いのに緊急依頼を出せば、体を解体されて売られることになる。それでも回収できなかった分は親族へ請求がいき、それでも回収できなければ……泣き寝入りするしかないのだとか。


 企業の連中も、自分たちのやりたい放題は出来なくなった事件の1つだそうだ。



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