第39話

 3日後。


 ギルドマスターから連絡があり、強化外骨格とアーマーの偽装が終了したから、ギルドに取りに来るようにだとさ。


 午前中でも問題は無かったようで、すぐに取りに行くことにした。


 そこで渡されたのは強化外骨格だったのだが……


「こんなので、動きをサポートなんてできるのか?」


 疑問に思うほど強化外骨格は薄かった。


 手に持った感想だと、作業用のツナギを2着重ねて、ツナギの間に補強材として何やら硬いものが、要所要所につけられている感じだな。


 ここで来ても、初期設定に時間がかかるので、それは家でやるように言われた。


 1人で初期設定なんかできるか! と言ったが、俺がすることは強化外骨格を着るだけでいいので、特に何かするわけではなかった。


 1時間くらいで終了するそうなので、さっそく家に帰ったら初期設定を始める。


 この強化外骨格ってツナギに例えたように、前にチャックではないが留めるようにできている。ほとんどの強化外骨格は、背中から入って着るタイプなのだが、こいつは腹側から着るタイプだな。


 後ろを留める形だと……1人で着脱できなくねえか?


 そんなことを考えてしまっていた。


『関節が柔らかければ、後ろでも手は届きます。前の方が圧倒的に対応しやすいですけどね』


 俺の心を読むな。質問する時はナビィを意識しているが、自問自答の場合は恥ずかしいからやめて!


 強化外骨格の初期設定が終わると、ウェットスーツのようにぴったりとしたドライスーツのような感じになっていた。


 偏見かもしれないがダイビング用のスーツで、ウェットスーツは体にぴったり張り付くようなイメージで、ドライスーツはダボッとして少しゴツっとしているイメージだ。


 体にぴったりとしているけど、少しゴツっとしている……そんな感じとしか言えない。


 試しに強化外骨格の補助を使ってダンベルを持ち上げるように言われた。


「えっ? 軽っ!」


 ほとんど腕に力を入れていないのに、簡単に持ち上げることが出来た。


 高い金をかけて買うわけだな。銃器もそれなりに重いし、バックパックにも色々物を入れるから、行動する時はかなりの重量を背負いながら移動する必要があるからな。


 これなら、疲れも軽減できるというモノだ。


 アーマーもつけてみたが、特に重さを感じることは無かった。行動する時の基本装備を身に着け、少し動いてみたがそれでも重さをほとんど感じることは無かった。


 背負っているのは、30kgほどなので生身だったら、俺はすぐにばててしまうだろう。


 昼食は近くの食堂で食べた後、ナビィの訓練が始まった。


 流れとしては、強化外骨格を着てからストレッチを行い、そのまま立体映像を使った戦闘訓練。戦闘訓練が終わったら、筋トレや体力トレーニングを行うようだ。


 これからしばらくは、午前中に戦闘訓練、午後に筋トレや体力トレーニングを行い、体力がついてきたら午前と午後を入れ替えて、長い時間戦闘訓練を行うらしい。


 時間がある時は射撃訓練も行えるように、調整する必要があるが、今は銃撃より基礎的な体の動かし方を学ぶターンだと言われた。



 訓練場代わりに使っている下水倉庫で、ストレッチが終わると……


『人間の形をした人形を投影するから、その通りに体を動かしてください』


 何かの格闘技の準備体操か? と思うような動きを、真似することになった。効率的に体を動かすために、ナビィがどこかから拾ってきた映像を元に、この準備体操は作られているらしい。


 ラジオ体操の格闘技版みたいなものだと、自分を納得させ体を動かしていく。


 次にナイフを併用した格闘術の真似へ移り、準備運動の締めくくりに、ナイフを併用した格闘術を人形相手にすることになった。


 人形が人形相手にナイフを振りかざしている姿はシュールだが、やっていることはかなりえげつない。


 ナイフにおける戦術は、浅くてもたくさん切りつける事だが、この時代ではシールドなどもあるので、浅い攻撃だとシールドの消耗が少ないから、一撃一撃が致命傷となる急所を狙うのがベターなんだとか。


 アーマーのシールドでも守りにくいのが、脇と股関節。体の内側にあたるので、シールドを発生させると体に干渉してしまうのだ。


 そのため、滑り込ませるように刃を突き立てるのが、シールドを無視して攻撃を仕掛ける手段のようだ。


 違う部分のシールドに阻まれることもあるが、一点集中の突きと同じなので、シールドのエネルギー消費は激しい。銃弾も先が尖っているのが多いのは、シールドに高い負荷をかけるためなんだとさ。


 尖っていれば貫通してしまい、傷を最小限にしてしまうこともあるので、何の銃弾を使うかはよく考える必要があるな。


 先が尖っていない銃弾は、そちらはそちらで意味があるようだ。柔らかい金属で衝突した衝撃で砕けたり変形すると、シールドが無い相手に対しては、痛手を負わせることが出来るからだ。


 貫通弾、先の尖った硬い弾を大量に撃ちこんでもいいが、効果的に! と言われれば、撃ち分けるのがいいようだ。


 そのために、スイッチ1つで撃ち分けられる銃が存在していたりするようだ。正直、対人戦以外で尖っていない弾丸を使う機会があるのだろうか?


 対人戦であっても、初級を抜けたハンターであれば、最低でもシールドを使えるアーマーは装備しているはずなので、貫通弾の方がメインになりそうだしな。


『それは違うわよ。モンスターの中には、シールドを体の外ではなく体の中に張るタイプがいるの。重要な器官を守るために、壊れてもいい部分を守らずにね。


 そういうタイプの体を破壊するのには、衝撃力の強い尖っていない弾丸や、爆発系の弾丸を使って体を削り取ってから、重要な器官を貫通弾で壊す方法を取らないといけないの』


 爆発……ロケット弾やミサイルは、嵩張る上にしっかりと誘導する必要があるので、かなり手間がかかるのだとか。


 集団戦であれば、四方から撃ち込んで終了ということもできるが、コストに見合うかは相手次第という事らしい。



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