第24話

 ナビィの予想通り、天気は改善傾向が見られる。ハンターたちも動き始めているので、今日は特に注意する必要があるな。


「ナビィ、向かう時の事なんだけど、大体の時間を知りたいから、誘導や索敵を任せていいか?」


『時間を知っておけば、移動のタイミングなどを考えられますから、とてもいい案ですね。帰りの時間も計って、今後の予定に組み込みましょう』


 下水道の出入り口へ着いた。周囲の確認を行い、敵になりえる動体反応が無い事を確認する。


 アジトから出る前にストレッチをしているので、準備運動の必要はないだろう。


 ルートを表示してもらい、無理のない程度に走って丘の元へ向かう。


 雨にうたれているが、高性能なレインコートも見つけているので、特に句を感じていない。ただ、走ると蒸れるのか少し不快感がある。


 高性能とはいえ、さすがにレインコートを着て運動することを前提には作っていないよな。それでも、多少は湿気を外に排出してくれるので、かなり優秀だと思う。


 凡そ2kmの距離を13分程で走り切る。全力で走っているわけではないが、多少疲れる程度には頑張って走っている。


 体が未成熟な俺が、12分というのはまぁまぁなタイムではないだろうか?


 マラソン選手が1kmを3分ちょいで走ることを考えると、その人たちの半分の速度ではあるが、俺には十分な記録のような気がする。


 徒歩でも30分程で到着できるが、半分以下の時間でたどり着けるのは、大きな利点だ。見つかりにくくなるという、俺にとって一番好ましい結果だろう。


「買い物カートは外では使えないから、ネコ車のような物でもあれば持ち運べる量が増えるかな?」


『見つかるリスクを考えると、前後に背負って往復するのが一番良さそうです』


 やっぱりそうか。ネコ車で多く運ぶと言っても、カバンを3~4こ積めば落としてしまう可能性も出てくる。地面はデコボコだし、歩く速度何かよりかなり遅くなってしまうだろう。


 この場所は、ヒンヤリとしているので、火照った体にちょうどいい。だけど、体が冷える前に行動をしないとな……動くのが大変になる可能性がある。


 クールダウンではないが、体を冷やさないために手足を動かしているのは、アスリートみたいな気分だ。


 背中とお腹にリュックを背負い、リュックが激しく動かないようにきっちりと留め具を締める。


「ナビィ、外の確認を一緒にお願い」


 近くには人はいなかったが、ナビィが街の入り口から俺の通る道を横断するハンターを見つけてくれた。そのおかげで10分程時間をロスしたが、その間に缶詰を休憩室へ運べたので良しとしよう。


 穴から出て下水道の出入り口へ向かう。


 回復薬は重くはないので、激しくリュックが上下することは無いが、歩いている時に比べれば、かなり動き難い……


 そんな状態でも15分で下水道まで到着できた。


「これだと、下水道を歩いている時間の方が長くなりそうだな。時間短縮の意味で走るのはいいけど、汗とか色々なことを考えると、緊急時以外は早歩きくらいで良さそうかな?」


 頭の中ではじき出した答えを、気付かないうちに口に出していた。なので、ナビィが俺の独り言に反応して返事をしたことに、少しビックリした。


『補足されている状態ではどうにもならないと思いますが、危険が差し迫っている場合などは、全力で走って下水道に逃げ込むのはありかと思います』


 丘に向かっている時にハンターに見つかりそうになった場合は、そこら辺を掘り返している仕草を見せれば、その場を凌げる可能性が高そうだと、ナビィが教えてくれた。


 ちょうどスコップも手に入れているし、それっぽい所を掘るのはありだろう。


 お昼までに3往復して、午後になって雨が止むが、活発的に行動をする人たちはいないようだ。切羽詰まっている人間は、雨が弱くなった午前中から動き出しているみたいだしな。


 ガッツリした休憩は、丘の下の施設……は長いから、『遺跡』でいいか。


 休憩は、遺跡の休憩室でとっている。そこにはソファーも置いてあり、ゆっくり休むには最適だった。タオルケットもあったので、寒くなっても羽織ることで暖が取れる。


 午後からは、レインコートを脱げるので、風通しが良くなり厚さを感じることなく動くことが出来る。


 そういえば、今って何月なのだろうか?


『5月16日ですね。リュウに分かりやすく居場所を説明すると、ちょっとズレているけど日本の甲府あたりだと思えばいいわ』


 ……? 甲府って確か盆地だったよな? 四方八方にそれなりの山があるはずなのに、南側にしか山が見えないのだが……一番高いのが、富士山か?


 確か北西には、八ヶ岳があるはずなのだが……何が起きて山が無くなったんだ? 1000年で、こんなに地形が変わるモノなのか?


『長野県や群馬県にまたがってあった山脈は、人間の兵器で半分程が崩れてしまい、残りの半分は巨大モンスターが、破壊したそうです』


 巨大……ナビィの話では、高さ100m、幅200m、長さ500mほどあったモンスターが、移動する平らに整地したそうだ。


 その巨大なモンスターも、かなりの労力をかけて何とか破壊したらしい。


 巨大モンスターの話に驚いていたが、今が5月だという事にビックリしている。俺の知っている5月は、もう暑くなってきて、少し動けば汗が出てくるくらいだったはず。


 なのに、雨という事を加味しても、涼し過ぎる気がする。気候の変化もあったのだろうか?


「これから暑くなるのか……リュウの記憶だと、うだるような暑さは無いが、直射日光は強く日焼け対策をしないと、大変なことになるって感じか……」


 まるで、山の上で生活しているみたいだな。日陰は涼しいけど、太陽は痛いっていうあれだな。


 ナビィに色々教えてもらいながら、午後もアジトと遺跡を往復する。



 1週間も荷物運びを続けていると、俺自身の感覚も研ぎ澄まされて行っている気がする。ちょっとした音でも、気付くようになった。


 機械を使わずに感じ取れる物なので、機械を使っているハンターたちには敵わないが、探索用の機材なんかを使う時には役に立つ技能らしいので、もっと鍛えたいところだな。



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