第23話

「そういえば、昨日はあまり疲れなかったけど、どうしてなんだろ?」


 雨の中を歩きながら、昨日俺の体に起った疑問を口にしていた。


『それは、回復薬を飲んだからです。疲れを除くだけでしたら、遺物の回復薬を使う必要はなかったのですが、一番性能が低い回復薬がそれだったので使っています。今日も飲んでもらいましたよね? そういうことです』


 どういうことだよ……回復薬って、体の修復をしてくれるものだと思っていたら、それだけじゃないってことか。回復薬で言えば大量にあるから、気にする必要ないか。


 これが無くなるころには、これと同等の回復薬が買えるようになっているといいな。


 家賃が高くとも、絶対に盗まれないようにしないとな。この回復薬が俺の生命線になる気がするので、この点についてもナビィに後で相談するか。


「病院の医療品って、専門知識がないって話だけど、高価な回復薬みたいなのは無いのか?」


『基本的に運んでいる回復薬で事足りるので、こういう場所の病院……クリニックのような場所には、これ以上の物は置いていないんです。ハイクラスの回復薬は、救急病院のような大きな所にしか置いていなかったそうです」


 そこら辺にある病院に、腕や足が千切れそうなほどのケガ人は来ないだろうし、骨折くらいなら治せる薬で十分だったのかもな。



 昨日はまだ外に出ていたハンターもいたが、今日は外に出るハンターは確認できず、身を潜めて移動する必要がない。余計なことを考えられるのも、ナビィのおかげだ。


 街の外壁からこちらを見ているカメラもあるが、俺にはナビィのアシスタントで映らないルートを移動できるので、特に気にして歩いてはいない。


 カメラにも注意しているのは、明らかに荷物を持っているスラムの子どもが何度も映れば、その荷物がどこから来るか調べるために人が動くだろうと、考えているので移動する場所は選んでいる。


 雨の日は、モンスターの行動範囲も狭くなるようで、昨日以上に街から離れた位置にモンスターの反応がある。


「ナビィ、雨の日に人だけじゃなくて、モンスターも動きが鈍くなるのは、何か理由があったりするのか?」


『正確な理由は判明していないけど、人と同じで雨に濡れたくないという説や、濡れることでシリコン生命のナニカに影響があるとか、色々な説があると言われているわ』


「理由は分からないけど、モンスターの行動が変わるから、それを事実として受け入れ後付けの適当な事しか分からないってことか」


『生きたまま捕らえることが不可能なので、調べられないのがげんじょうだから仕方がないと思います』


「弱ったモンスターも捕まえられないの?」


『いえ、強いハンターが捕らえることには成功しているのですが、人類に情報を与えないためか、捕らえられたモンスターたちは、自害してしまうのです』


 人間以外の生命体にはない特徴の自殺を、モンスターもするってことか。動物の中には、稀に自殺するモノもいるが、意識的に行う生き物は人間以外では稀だからな。でも、


「自殺しても、体はあるわけだし、ある程度の情報は手に入れられるんじゃないのか?」


『自殺では無くて、自害をするのです』


「自害ってことは、死ぬんじゃないのか?」


『程度の差はありますが、放置すれば最終的に死ぬのは間違いありません。ですが、高級品の回復薬などを使えば、回復させることは可能な状態です』


「じゃぁ、どういう事なんだ? 死なないなら、調べられるんじゃないのか?」


『自害したモンスターは、回復剤を使ってもモンスターとして回復するわけではないのです。モンスターの自害は、シリコン生命の部分を消滅させ、モンスターではなくなる対策をとっているようです』


 敵に情報を与えないために、自分たちに関わる情報を極力消去するってことか。反対に、人間が捕まれば……


「気になったんだけど、生きたまま捕らえられた人間っているのか?」


『確認できている範囲では、行方不明者は出ていますが、生きたまま連れ去られたという話はありません。遭遇すれば、その場で殺し合いを始めます。生身は持ち帰らないけど、義体は持ち帰る姿を見たものがいるそうです』


 人間自体に興味はないってことか? 義体を持ち帰るのは、二足歩行に興味があったりするのだろうか? そうなると、強化外骨格もターゲットになる可能性があるのか?


「二足歩行とか人類に近い姿のモンスターっているのか?」


『何度か確認されたことはありますが、今は見られることはほとんどありません。二足歩行を行うために無駄なシステムを組み込むくらいなら、多脚歩行の方が制御がしやすいからではないか? と言われています』


 そういうモノなのかね?


 ナビィと話しながら、今日は6往復もすることに成功した。


 おそらくだが、回復薬を飲んでいなければ、この半分でも今の俺には厳しかったはずだ。


 明日は、雨のち曇りの予想なので、ハンターたちは行動を開始するかもしれないから、注意をする必要があると、ナビィが教えてくれた。


 しっかりと稼いでいて街にいるハンターたちであれば、地面などのコンディションが悪つければ、外に出ることはあまりないのだが、稼いではお金を使い果たすようなハンターは、外に出ることがあるから注意だとさ。


 そういうハンターには、不良ハンターほどあくどい事をしているわけではないけど、殺さずに人の荷物を奪うことくらいは、普通にやる奴らが多い。


 だから、注意が必要だ。


 この2日間で、荷物運びの要領は得たし、回復薬を使うことで疲れにくくなるのなら、走って移動することは可能だろう。


『確かに走り続けることは出来ますが、エネルギー……体を動かすためのカロリーや栄養は、回復薬で補充できませんので、しっかりと缶詰を溜めることが条件ですね』


 回復剤って、無条件で何でもかんでも直しているわけじゃないのか。缶詰は何度も食べているが、お腹をくだしていないので、問題ないだろう。



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