第21話

「じゃあさ、新しくアンドロイドが発掘された場合はどうするんだ?」


『起動させずに隔離施設まで持ち込んで、超人を1人以上集めてから全身を拘束して、その状態で解体するようです。解体も途中で起動してしまうため、情報と使える部品を集める形ですね』


 解体といっても、俺の思っているような解剖よりの解体ではなく、超人の力を使って両手両足をもぎ取り、自爆する前に手足を確保するのが目的のようだ。


 頭部と胸部には、爆弾が埋め込まれているため、今の所回収に成功した事例はないんだとさ。


 手足を回収するだけでも、旧世界の技術を吸収できるので、ある程度は価値のあるものらしい。特に使われている素材の解析は重要で、出来る限り多く回収したいと考えているようだ。


 肝心な部分が回収できなければ、素材だけが良くなるだけじゃないか? 性能を劇的に上げるには、やっぱり使われているソフトというか、人工知能の解析は重要だろう。


 時間が解決してくれることもあるので、それを考えている可能性は、ゼロではないかもしれない。詳しく調べれば分かるだろうけど、優先度は高くはない。


 誰にもバレずに荷物を持ち込むことに成功した。入り口が存在しない隣の部屋に、回復剤と缶詰を移動させ、エアークッションをベッドの下へ敷き、薄い敷布団をその上に……


 その上にシュラフを置く。封筒型の開いて1枚の大きな布団のようにして敷布団と掛布団にしてみた。


 その寝心地は、天と地ほどの差がある。今まで使っていた毛布というかタオルケットのようなモノは、畳んでから枕のようにして使っている。


 認可のストレッチを始め、体の柔軟性を確認していく。まだそんなに時間が経っていないので、柔らかくなったかは不明だ。


『お腹空いているなら、あの缶詰を食べるといい』


 確かにお腹は空いているけど、年代物の缶詰は食べたいとは思えないんだけどな……


『器的に問題ない物を選んできたから、問題はないはずです。缶詰をあければ、さらに詳しく腐っているか分かるので、1つ位試してみましょう。ブロックバーよりかは、遥かに安全です』


 怪しいブロックバーの方が、まだましだと思うのは、おかしい事だろうか?


『一先ず、持ってきた缶詰を全部振ってもらってもいいですか? 固形物が残っていれば、8割以上の確率で食べられるはずです』


 8割……2割は食べられないんだろ? マジで勘弁してくれ……


『その2割も、あけてもらえれば、腐っているかいないか判断できますので、試してみてください』


 先回りされた感じだな。


 試しに15個持ってきた缶詰を、全部振ってみた。15個中2個が固体の感じがしなかったので、腐っていると判断された。


 13個残ったが、一度にこんなに食べられるはずもないし、1つだけ開けることにした。


『待ってください。それをあける前に、腐っている2つを持って下水道へ行きましょう。缶詰の匂いは、嗅ぎ慣れないものですので、建物の中で開けると匂いがこもり、他の人にバレてしまうかもしれませんので』


 そっか、俺たちが知っている匂いといえば、訳の分からないブロックバーと、たまに配給されるスープだからな。街の近くに行けば、屋台からの匂いもかげるが、ここら辺には届かないので不審がられるだろう。


 そこまで臭くないとはいえ、下水道で食べるのか……それなら、ブロックバーだけでもいいのだが。


 それでも、ナビィの言う通りに、まず腐ったと判断した2つの缶詰をあけていく。もちろん缶切りなど必要のない、あのタイプの缶詰だ。


 2つとも見事に液体になっていたが、ナビィの話では片方は腐っておらず、食べられると言われた……が、食べるわけないだろ!


 持ってきた腐っていないと判断した3つの内1つをあけてみる。


 しっかりと形が残っており、ナビィも問題ないと判断した。


「…………」


『食べないんですか? 魚美味しそうですよ?』


 お前、食事なんかしたこと無いだろ! しかも、年代物を食べるのには度胸がいるんだぞ……


 意を決して、おそらくサバの味噌煮を口に運ぶ。味は美味い。食感も悪くない。変わった味は……リュウの味覚では無理だな。なにせ、まともな食事をしたことが無いから、美味く感じてもそれが美味い理解できていない。


 アルファが美味いか判断している形だな。


 アルファの視点では、この缶詰が腐っていると判断できる要素はない。年代物の缶詰なのにすごいな……


 アルファはこれ以上はやめろと止めるが、リュウが止まらずに缶詰1つを平らげた。


 しばらく下水道で様子を見てみるが……腹痛の兆しはなし。トイレがしたくなった場合は、ここでするしかないので、後1時間くらいはここにいよう。


 結局腹痛になることはなく、問題なく食べられる缶詰だった。本当に食べれたんだな……


 体を拭いた後はベッドへもぐりこみ、今までにない快適さを味わった。



 目が覚めると、ナビィから残念なお知らせがある。


『今日は、雨です』


 雨か……他の人間が動かないから、見つからないチャンスではあるけど、体が濡れると負担が大きくなるので、あまり推奨できないと思う。


『準備をして、遺物の施設へ向かいましょう』


「えっ? さすがに雨の日に動くと、すぐに疲れて動けなくなるし、風邪を引く可能性もあるけど、それでも行くのか?」


『昨日、何のために薬を持ち帰ったと思うのですか? 回復剤を2錠と別途持って帰ってきた、黄色い箱の錠剤を1錠飲んでください。ピルケースに回復剤を5錠ほど入れて、カバンに仕込んでおきましょう』


 良く分からないが、ナビィの言うとおりにして、作業を開始する。


 昼前から動くのには、理由がある。配給は天候の悪い日は行わないので、今日は広場に行っても配給はもらえないのだ。理不尽だと思うが、食いつなげるだけマシなので、文句を言う人間も少ない。


 下水の水が増えてはいるが降水量が倍になっても、歩くところまで水が来ることは無いとの事だ。


 下水道の出口へ着くと、服を脱いで下着姿になるように指示を受ける。濡れないように持ってきた袋に、服を詰めてからカバンへ。


 その姿のまま、遺物の場所へ向かう。


 雨が降っていても、ナビィの索敵能力は落ちることはなく、俺に情報を伝えてくれている。


 簡易的に確認できる範囲にいるハンターは、1組で4人だ。俺とは向かっている方向が反対だな。今の所、脅威はなさそうだ。




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