第20話

 時間的に今ここから出ると、他のグループと遭遇する確率が高い。もう少し遅くなってから、安全を確保して出る方がいいだろう。


 まだ時間があるので、リュックをいくつも運び出し、回復薬を詰めていく。


「そういえばさ、回復薬以外の医療関係の遺物って持ち帰らないのか?」


『価値は高いのですが、専門的な知識や技術が必要になるので、リュウが遺物を売れる場所では、高く買い取ってもらえないと思われます。なら、安くても買いたたかれる心配のないハンターギルドの方がありだと思います』


 適正価格で買い取ってもらっても、その数%しかもらえないが、安全やその他いろいろ考えるなら、ありなんだろうな。


 回復薬はリュック1つに200個近く入っているのではないだろうか? そのリュックが30個ほど積みあがっている。


 これでも半分程なので、最終的には60個ほどにリュックが増えるのか……体の前後で持ったとして、30往復必要か。1日3往復は頑張れるだろうか? それで10日、見つからずに運び出せるかな?


 今日は、背負ってきたカバンに缶詰めを少しと、医療品から俺には良く分からないが、ナビィに言われたモノをいくつか入れ、背中にリュック、腹側にカバンという形にした。


 両手にシュラフとエアークッションを2つずつ、かなりの重装ではあるが重たい物は缶詰くらいなので、重くは感じないな。


 遺物の施設から出る前に、10km以上先までナビィに調べてもらう。


 徒歩で帰っている俺と同じスラムの人間は、いなさそうだ。それ以上先から車で帰ってくるハンターも探してもらっているが、20kmほど先に狩りを続けているハンターがいるくらいで、遭遇する可能性は少なそうだ。


 繋がっている穴から這い出て、入り口を閉じておく。


 重いということはないが、体ができていない子どもの体である俺は、予想以上に体が疲れている感じがする。


 何とか下水の入り口に到着し、見つかる可能性が限りなく低いルートを通って、アジトの近くのマンホールまで移動する。


『リュウ、明日は、アウトドアの所で靴を探してみませんか? 動きやすい靴が見つかるかもしれません』


 そっか、アウトドア用品って、キャンプとか調理道具だけじゃなくて、衣服だってあるし、靴があってもおかしくないか。


 アウトドアに使う靴といえば、頑丈なものあるけど動きやすいものもあったはず。後は、濡れても気にならない、沢歩きとかに使う靴もあった気がするんだよな。


「それなら、椅子とかも持って帰ってくるのはありかな?」


『優先度は高くないですが、ある程度持ち帰った後に、両手で持って帰れる物であれば、持ち帰っても良さそうですね』


 色々持ち帰った最後か……確かに優先度は高くないな。椅子はあっても無くても何とかなってるし、寝床を改善できるから、そこに座ればいいか。


 可能なら持ち帰る、という事で疲れをとるかな。


『リュウ、ハンターで徒党を組むなら、持ち運びの椅子などは需要があるけど、1人ならそこまで需要はないのは覚えておいてください』


 どういうことか聞いてみると、1人や少数であれば、移動手段として使う車などで休めるので、少ないスペースをそういった物で埋めることはないのだとか。


 持ち帰られる量にも影響が出るので、無駄なものはもっていかないのが、ハンターなんだとか。もし上等な椅子が良いのであれば、車のシートをこだわろうとのことだ。


 理に適っているな。バイクだった場合はどうするのかといえば、基本的にバイクは索敵や斥候、日帰りで行ける距離の移動に使われる物なんだとか。


 バイクでは、荷物を持ち帰れる量が減ってしまうので、ある程度数のいるハンターグループが、遊撃として使ったりすることもあるそうだ。


 俺には縁がなさそうだな。索敵や斥候に関しては、ナビィが全てしてくれるからな。それを補助できる装備の方が優先になるから、どちらにしろ車だよな。


「車を手に入れたとしても、地下を探索している時とかに、盗まれたりしないのか?」


『盗まれることはあります。それをさせないように、ハンターたちは色々な工夫をしていますが、多くの場合は守りを残していくというモノですね。


 ハンター同士は、特別な事情がない限り戦闘が禁止されており、証拠を残さなくても殺した場合、バレる可能性がかなり高い。


 管理情報に、死んだ時間が記録されるため、その時に近くにいた人たちが犯人候補としてマークされるので、隠すことがほぼ不可能なのだ。


 後は、アンドロイド等を守りで残していることもあります。この場合も、壊されたら管理情報に記録され、一撃で記録装置と視覚装置を壊さないと、管理情報に映像も残ってしまうらしい。


 コスパの関係上、少数のハンターではアンドロイドを使うのは難しいが、大きなグループになれば記録を残すために、連れていることもあるそうだ。


 アンドロイドか……車両固定の重火器を扱わせるのであれば問題ないそうだが、単体で運用するのは能力が低く、ハンターの代わりをするのは難しいそうだ。


 動いて戦うとかになると、アンドロイドよりは戦闘用ロボットなどの方が、使い勝手がいいとのことだ。


 アンドロイドと戦闘用ロボットの違いは、使われている人工知能の差が一番だと言われている。


 外見でいうと、アンドロイドは人間に近く、戦闘用ロボットは人に限らず最適な形をしている。


 俺の主観では、アンドロイドは汎用、戦闘用ロボットは特化している気がするな。


 ただ戦闘用ロボットの場合は、壊されても記録に残らないので、連れ歩く形か拠点防衛に使うのがベターとされている。


「どっちにしても、俺には高望みだよな……他の人間は信用できないから、いずれはアンドロイドが欲しいところだな」


『旧世界で作られたアンドロイドであれば、今のハンターでトップの超人たちほどではないですが、それに近い水準の戦闘力を有しています』


「そんなのが手に入ればいいけど、お金で手に入るモノじゃないだろ? それに、旧世界のモノってなると……セキュリティが厳しいんじゃないのか?」


『知られていませんが手順を間違わなければ、アンドロイドは暴走することなく起動した相手に従います。ただ、一度間違って起動されたアンドロイドは、マスターの停止コードを受けない限り、暴れ続けるそうです。


 この世界にマスターはもう存在しないので、破壊するか内臓エネルギーをすべて消耗するまで止まらないです』


 そんな事聞いて発見したからといって、安全だから起動させます! とはならないぞ……



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