第19話

 少し大きな保管庫へ足を伸ばしてみると……ほとんどが空だった。残った残骸などや部屋の特徴から、ナビィはここに生鮮食品などが置かれていたのではないか? とのことだ。


 初めは腐っていたが、さすがに長い時をかけて、ほとんどが風化してしまったのだろうか?


『少し違いますね。凡そ600年前の技術を進化して使っていますが、食べ物が腐るとこの部屋のシステムで、ウジなどがわかないように、すぐに劣化する技術が使われています』


 ……? 食料が飽和してたのか? 保管庫で食材が腐るなんて発想は、無いだろう。話を聞く限り、この保管庫は冷蔵庫も兼ねているはずだから、なおさら腐るなんて発想は出てこなくね?


『勘違いしているようですが、非常事態に食料品が腐ってしまうと、衛生状態が悪くなるので、周辺にかなりの悪影響が出てしまうんです。なので衛生管理のために、導入されていたシステムです』


 未来には、良く分からないシステムがあったんだな。


 そのまま、一番大きなサイズの保管庫が並んでいるエリアへやってきた。


「アウトドア用品店か……この時代にもあったんだな。いろんな場所が開発されているから、自然の残っている場所が少なくて需要が減っているかと思ったわ」


『食料の生産技術が発展して、農村部に導入されると、周辺の自然を残すための政策が進んで、2000年代に比べると、はるかにキャンプなどに行っている割合が多かったようです』


 破壊だけじゃなくて、きちんと整備も進んでいたのか。


「で、キャンプ用品は、重すぎて持ち運びに不便だけどどうなんだ?」


『かなり良い品ではありますが、大きなものは持ち運べないです。軽くて使いやすそうな、2人用くらいのが1つ2つ確保できれば、いいのではないでしょうか』


 性能的には全部持って帰って売りたいところではあるが、俺に持ち帰る能力がないので、使うか分からないが、確保出来たら確保しておいた方がいいのでは? という感じか。


 大型のモノは、ベースキャンプを作る時などにかなり重宝されるらしく、性能の良いモノになればかなりの値段になるんだとか。


 これだけでも、情報屋などに情報を売れば、それなりに儲けを出せるだろうという事だ。


 いくつか小さめのテントを物色してみた。


 一応知識があったから、簡単に立てられたと思う。素材については良く分からないけど、かなり丈夫で快適かもしれないな。


 シュラフもあったので、いくつか物色しておいた。寝具として使うのに悪くないし、何より軽いので持ち運びに便利だ。中でも一番うれしかったのは、エアークッションだった。


 今の寝床は硬くて、寝具もまともなのがないので、寝るたびに体がバキバキになってしまうからだ。シュラフとエアークッションはいくつか確保しておきたい。


 いくつか開けた中から良さそうなものと同じ商品を、保管庫の入り口へ移動させておいた。


 ここから運び出すのは、シュラフ⇒エアークッション⇒テントの優先度だな。前の2つは手に持てばいいが、テントは持ち帰るの厳しそうだな。


 3つ目の大きな保管庫へ入ると……当たりは当たりなんだけど……


『価値は高いですが、持っていることがバレれば、スラムでは確実に狙われて身の危険がありそうですね。ですが、いくつか確保しておきたい物でもあります』


 アウトドア用品の続きで、リュックや丈夫な衣服が並べられていたのだ。


 これらに使われている素材は、防刃性能や耐火性能が高く、身の安全を守るためにかなり優秀なんだとか。強化外骨格や強化スーツ、ナノマシン強化などをした人たちが、よく着ているらしい。


 高価な装備を汚さずに済むから着ているのかな?


 リュックはいくつか確保しておきたいな。衣服の方は……正直、体に合うサイズがないので、確保したところでいつ着れるようになるか分からない。


 それ以外のモノは、性能は高いが今作られている物でも十分使えるので、あまり高くは買い取ってもらえないと、判断したようだ。買われるとしても、お金持ちや研究用だろうと。


 1日かけて、この建物にある物資の確認は終わった。


「売るのが難しそうだけど、買いたたかれるのが分かっていると、何を売っていいか迷うな……回復薬は、可能な限り多く確保して、それ以外はどうするべきだろうか?」


『売るのに適しているモノが少ないですね。回復薬にいたっては、売りだせば絶対に問題になります。ですが、中の遺物が思ったより価値があるモノが多く、情報を売るのには適しているかと思います』


「問題は、情報屋が俺に金を払ってくれるか……場所を確認したらスラムの孤児だからと言って、用済みで殺される可能性が高くないか?」


『確かに可能性は高いですね。で、売るのは情報屋ではなく、ハンターギルドへ売るのはどうでしょうか? 情報屋に売るほど高くなることはないですが、安全を考えるとそれもありなのではないでしょうか?』


 なるほど、情報屋はどちらかというとグレー寄りの危険地帯だが、ハンターギルドは確実に白側である。まぁ、時と場合によっては危険なこともあるが、今回の事例に関していえば、安全が確保されると踏んでいる。


 細かい説明ははぶかれたが、ハンターギルドには、遺物を大量に発見した際に報告すると、遺物の売り上げの何%かを貰うことが出来る……という仕組みがあるんだとか。


 新人ハンターが遺物を見つけた際に、先輩ハンターに利益を奪われないように作られた仕組みらしいが、報告者はハンターである必要はないらしい。


「そっちの方向で考えようか。とりあえず、運び出す荷物を少しでも多くしないとな。リュックをそのまま、保存用のリュックにするのはありか?」


 アウトドア用品として、リュックが大量にあるので、リュックをそのまま段ボール代わりにするのはありかと思い、ナビィに聞いてみた。


『そうですね。下水道は問題ないと思いますが、ここから入り口までの2kmほどが気になりますね。その間は特に注意が必要になりますね』


 ここにあるカバンは、俺が持つには高価過ぎるから、見つかれば明らかに不審がられるな。不良ハンターでなくとも、情報を引き出そうとするだろうな。中身を見れば特に……



★☆★☆★☆★☆★☆


 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 『フォロー』や『いいね」をしていただければ、モチベーションにもつながりますので、よろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る