第18話

 中に入って、少しガッカリする。調べてみない事には、当たりハズレは分からないが、ハズレの多い遺物の1つなので、正直期待できないか?


『リュウ、棚からいくつか適当に選んで、開けて見てください。一応パッケージの裏も確認しましょう』


 ナビィの言う通り、いくつか選んでみる。両手で抱えられるくらいの数だ。


 西暦2000年を生きていた俺には、この状態で売るこれらには違和感が大きいが、この時代ではこれが当たり前だったんだろうな。この状態で売っている物もあったけど、男の俺には縁のない物が多かったと思う。


 とりあえず、開けていくか。


 俺がパッケージをあけ始める。開けている遺物は、衣服系だ。


 素材によってはかなり高額になる物もあるのだが、そういう衣服は基本的に専門店にしか売っていないので、ハズレの可能性が高いという事だ。


『いくつか見てみた感じですが、この建物はデパートのような場所ではないでしょうか? 建物の広さと推定される高さを考えると、他の専門店も多かったと思います』


 大きな建物だから、デパートだとは予想できていた。可能性としては、大きなマンションという可能性もあったが、ナビィが誘導したので遺物が無いという事は考えていなかった。


 マンションだったとしても、部屋の中に遺物があってもおかしくはないので、どのみち手ぶらという事は無いとも考えていた。


 手にできる遺物が多いのは助かるが、さすがにこれだけ多いと自分で利益を全部受け取るのは無理だな。


 気付かれるまで、地道に持ち帰ることしかできないな。


『この保管庫は、おそらく女性の衣服を扱っていた店舗のモノですね。下着類はいい値になりますが、リュウが持っていくのにはかなり無理があるかと』


 確かに男の俺が持って帰るには、微妙ではある。ただ、性能や作りが今のモノよりは上質なものが多いので、値段的には良いモノとなる可能性が高い。


 男の俺に女性の下着の良し悪しなんて分からないから、触れないことにしておこう。


 2つ目の保管庫も先ほどと同じ広さだったが、中身は大きく違っていた。ここには金属反応があり、結構な量が保管されていた。


「デパートにこんな専門店があるもんなのか? アルファの住んでいた時代に比べ、色々な技術が進化しているのに、缶詰の専門店とはね……少なくとも200年は経ってるんだっけ? さすがにそれは食えないか」


『一応確認したところ、賞味期限として表記されているのは、製造から100年ほどなので、味の劣化はしているかもしれないですが、問題なく食べられるものだと思います』


 俺はそれを聞いた時、体が震えた。200年以上前のものが食えるなんて、信用できなかったからだ。そもそも、密閉されたモノだったとしても、200年も経てば形が崩れると思うのだが……


 理解はできないが、謎の技術で作られた缶詰は、食べれるらしい……


『持ち帰ったところで大したお金にもならないですから、リュウの食べる分を確保できれば、十分ではないでしょうか?』


 ナビィは、自分で食べるために確保しろと言ってきた……


『色々考えているみたいですが、リュウが今食べているブロックバーより、この缶詰の方が安全なのですが、何が嫌なのですか?』


「俺の住んでいた時代の日本人なら、半分以上の人が同意してくれると思うよ。200年前の物なんて、食べられないってな。ワインだったとしても、保管方法次第では、誰も飲まないぞ」


『長期保存を目的としている缶詰とワインを比べない方がいいです。加工技術が進み、長期保存ができるようになったのです。


 中には劣化してしまうものもありますが、動かされずに保管されていれば、問題なく食べられるように作られています』


 信用できないが、缶詰の器が劣化していない状況であれば、中身も劣化していないとの事だ。 中には劣化することもあるが、大半の缶詰は食べられるはずだってさ。


『ここで缶詰をあけると、微かな匂いでモンスターやハンターにバレる可能性があるので、いくつか持ち帰って開けて見たはどうですか? 食べられないと思えば、下水道へ破棄すれば問題ないです』


 それなら、確認すればいいか……本当に食べられるか食べられないかは、ナビィが判断してくれるみたいだしな。


『一応、缶詰の器を確認して、持っていく物を決めましょう。10個くらい確保して扉の前にまとめておき、帰りに持っていきましょう』


 ナビィの指示に従い、缶詰を集めて1ヶ所へまとめて置く。


 3つ目の保管庫は、前の2つより大きな部屋だな。棚に積まれている箱も、前の部屋の保管庫より大きいな。


 箱が大きいってことは、中身が軽いってことだよな? どんなものが入っているんだろう。


 俺でも何とか箱をおろすことが出来たが、おろす際に少し硬い音が聞こえた。


 開けて確認してみると、医療関係の遺物のようだ。


『これは当たりですね。専門知識が必要な遺物ですので、かなり効果の高い物だと思われます。ドラッグストアではなく、病院がこの施設に入っていたのでしょう』


 病院は無いと思っていたが、遠隔診断できる設備があるだけで、中にはじかに診てほしい人も多いので、デパートに病院が入っていたのかもしれないだってさ。


 ってことは、薬なんだよなこれって……


「ナビィは、これが何かわかるのか? 液体のモノはさすがに使えないと思うけど、この錠剤であれば使えるのか? 薬だと半減期とかがあるんだっけか?」


『薬の製造番号が分かれば、どんな薬か分かります。手術をするような施設ではないので、高価な回復薬は少ないとは思いますが、安価で大量に作られた回復薬は置いてあると思いますよ』


 回復薬というのは、シリコン生命が降ってくる前に作られた、ナノマシン配合の治療薬で、簡単な傷や怪我ならたちまち治してしまうそうだ。


 シリコン生命が現れる前に、使用用途を決めたナノマシンを作り出すことに成功していたのか……しかも、今も同じようなものが作られているんだとか。


 ここにあるであろう量産品の治療薬が、今の世界では高級品と同等の性能らしい。これは、売りに出すとトラブルになるので、自分で抱え込むのがいいんだとか。


 自分の身を守れるのであれば、売ってもいいだろうってさ。



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