第16話
「ナビィ、この不良ハンターが逃げ出したとして、街に帰ってくる確率ってどのくらいだと思う?」
『確率は分かりませんが、同じように逃げ出したのが犯人だった場合、ほとんどの確率で戻ってくることはありません。それだけ悪い事をしている自覚があるのではないでしょうか?』
なるほど。不良ハンターだったとしても、悪い事をしている自覚があれば戻っては来ないか。
『悪い事をしている自覚が無ければ、そもそも逃げようとしないはずですから、今回逃げ出した場合は、帰ってこないのではないでしょうか? 特に親しい仲の人がいるわけでもないようなので』
……人間関係まで調べ上げていたのか、恐るべし!
そもそも悪い事をしている自覚が無ければ、今回みたいに書き込みを見て逃げ出したりしないよな。自分だって思わないわけだし、いなくなってくれるならそれで十分か。
不良ハンターと関係各所の監視はナビィに任せて、俺は勉強を始める。
2日続けて寝て過ごすなんてことは出来なかったので、余っている時間は勉強の時間にするつもりだ。
こんな世界だから、国語や社会はほとんど勉強する意味がない。国語なんて、文字が読めてある程度理解できれば、生きてく上で困ることはない。
社会だって、歴史を勉強する意味はない。勉強したとして、地理くらいだろう。危険な場所を覚えるという感じだな。
歴史で言えば、シリコン生命が現れてから、地球の在り方が変わったから、歴史から学ぶ事は少なくなってしまっている。
数学と理科も、程ほどって感じだな。計算ができれば、騙されることも減るし、ハンターになった時の行動計画には役に立つかな。
理科は……研究者とかにならなければ、詳しく学ぶ必要はないだろう。だけど、どういった化学反応を起こしたりするかは、ハンターをするうえで学んでおいても損はないかも。
では、何を勉強するのかといえば、法律だったりハンターとしての知識だ。ここら辺を学んでいけば、情報屋になった時に役に立つかもしれないからな。
法律は、正直言って読むだけ無駄だった。アルファの住んでいる時代の常識があれば、法に触れることはないので、見るだけ無駄だったわ。法律よりも、ローカルルールを覚えた方が100倍はマシだな。
スラムの人間……税金を払ってない人間……の場合、スラムの区域外に出ると危険とか、夜に自分たちのエリア以外に出ると、殺されても文句は言えないとか、そういった法律に乗っていないルールの方が正直大切だ。
スラム内の事は、ある程度リュウの知識にあるので、それを参考にすればいいが、スラムの外に関しては本当に知識がない。書かれていないルールが大切だったりするので、情報収集していく必要がありそうだ。
自分でグループを作って、とか考えたこともあったが、それをするのにどれだけのお金と戦力が必要になるか……それに、グループの責任も取らないといけないから、俺はそんなことする気は無い。
ハンターとしての勉強の一歩目は、街の周囲で良く出没するモンスターの見た目や行動パターン、弱点などの勉強だった。ある程度お金に余裕のあるハンターであれば、銃器の訓練も一緒にするべきなのだが、俺には無理だ。
この周辺に現れるモンスターで多いのは、ウルフ・インセクト・ワームの3種類のようだ。
ウルフにも種類があって、斥候として装備の無い奴、重火器を装備した奴、ミサイルを装備した奴など、複数のタイプが存在している。基本的に3体以上集まって行動するのが特徴だ。
インセクトは、多脚歩行型ロボットという感じだ。こいつらは基本的に偵察タイプしかこの周辺にいない。少し離れてモンスターが増えてくると、戦車の大砲のような物を付けている奴がいたりする。
良く分からないのは、ワームタイプのモンスターだ。見た目は細長い蛇みたいなのだが、地上を移動せずに、地中を移動するタイプなのでワームと呼ばれている。成人男性の腕位の太さで、平均2~3m程の長さ。
武装は特にないが、死角からの嚙みつきや巻き付きが、主な攻撃方法だ。毒を使うわけでもないのに、噛みつきに意味はあるのだろうか?
疑問に思ったので、ナビィに調べてもらうと、生身であれば服と一緒に髪切ってしまうらしい。思った以上に力が強いようだ。歯が鋭利なのかもしれない。
思ったより種類はいないが、オプションのようなモノがあるんだな。それを考えると、戦い方を工夫しないと、1人ではかなり危険かもしれない……
雑魚でも数が多ければ、それだけでゲームオーバーになる可能性が高い。
さて、不良ハンターはどうなったかな?
『一時は、出ていくか悩んでいましたが、最終的には出ていくことを決めたようです。決めた後の動きは速く、門番の兵士たちに話をつけ、余裕を持って持っていけない物を売り捌いています』
どうやら、明日の朝には出ていくとのことだ。車は自前のがあるようで、詰み込めないものや運べないものは、全部売り払っているみたいだな。一生懸命値段交渉している姿が、空間投影ディスプレイに映し出されていた。
そういえば、違和感がかなり弱くなっている。出ていくことが決まっているけど、まだ出て行ってないから違和感が弱く残っているのだろう。
明日は、出発できるように準備をしておこう。配給の時に違和感が無ければ、念願の丘の下を探索しに行こう。どんな遺物が待っているんだろうか!
「はぁ、体を拭くだけじゃなくて、お風呂に入りたいな……手足がふやけるくらい入ってたいわ」
『税金を払って、街へ住まないと難しいですね。大きなグループでも、上の人たちしか入れていないです』
スラムの大きなグループでも、お風呂に入れるのは偉い人だけなのか……もっと多いと思ってたけど、1割にも満たないらしい。後は、お湯で拭くのが精いっぱいらしい。
それでも、俺みたいに水タオルではないから、さっぱりするんだろうな。
お風呂に入れるようになるためには、どれだけお金を稼ぐ必要があるのだろうか……
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