第15話

 次の日になっても、違和感がうっすらと体にまとわりついていた。


 俺はこの段階になって、ほぼ確信した。この違和感は、何かしらの能力で、俺に危険を知らせてくれる何かだという事を。


 ナビィから話を聞いてみると、立て続けという事でやはり動きが良くないそうだ。昨日言っていた、不良ハンターたちが暴れる可能性があるというのが、動きを遅くしている原因のようだ。


 昨日は確信がなかったけど、俺が寝ている間にナビィが情報を手に入れたようで、不良ハンターたちの動きが予想できないから、捕まえるのに二の足を踏んでいるのだとか。


 基本的に1人で活動しているけど、横の繋がりが強いハンターらしく、色々なグループと一緒にハンター業をしていたりするようだ。


 なるほどね。確かに捕まえにくい気がするな。3人組の方は悪評が高かったからあまり気にされていなかったが、今回の不良ハンターはあまり悪評がないみたいだな。


 上手く隠しているので、バレずにまともなハンターとも組んで、仕事をすることがあるようだ。


 筋肉痛がまだ取れていない部分があるが、体の動き自体は良好だと思う。


 昼までストレッチをしながら、ハンターの能力について少し調べてみた。


 ナビィの情報では、どういう能力の人がいた……というところまでしか調べてもらっていなかったので、今回はどういった能力があって、その能力の効果や使い方などについて調べてみた。


 能力の中で一番多かったのは、五感の鋭敏化だ。視覚や聴覚、痛覚だけでなく、臭覚と味覚も鋭敏化している人がいるそうだ。


 後者の2つは、ハンターには関係なさそうに思えるが、犬程でないが臭いを嗅ぎ分けられるらしい。味覚に関しては眉唾物だが、空気中に含まれる成分の中に、モンスターが発したモノを感じ取れるのだとか。


 他にも、五感を総動員したのか、気配とかもわかるようになるハンターがいるのだとか。


 追加で分かったのだが、超人と呼ばれる人たちの義体化率は、最大でも20%ほどだという事だ。たまたま見つけた情報の中に、超人について調べてみた内容があったのだ。


 義体化率が高すぎると、超人になれないらしい。超人化した後でも、20%を超えると、超人化した時の能力が半分程失われた、という報告書もあった。


 興味を引いたのは、義体化ではなくナノマシンによる肉体強化をしているハンターでも、超人化することがあるようだ。


 超人化するには、生身が必要ってことなのかね?


 義体による強化もナノマシンによる強化も、共通して言えることは、ある程度の動作確認をすれば、そのまま実践ですぐに使える便利なモノということだな。


 言ってしまえば、トレーニングが必要なくなるという事だ。


 義体なら、制御ソフトを入れれば、10人が10人同じ動きをすることが可能だ。他にも、銃を撃つ時の反動なども撃ち消してくれたりする。


 ナノマシンによる強化は、身体能力面だけなので、動きに関しては自分で判断しないといけないが、肉体的強さという面ではほぼ同じとなる。


 義体にもナノマシンにもランクがあり、高ければ高いほどその性能があがっていくという事だな。


 動きが良くても肉体的強度があっても、最終的には自分の頭で判断しないといけないので、そういう部分の訓練は必要になるという事だ。


 ブロックバーの配給時間が近付いて来たので、例の通信場所へ向かってから配給場所へ。


 アジトへ戻り、各署の動きを表示してもらう。


 空間投影タイプのディスプレイって、本当に便利だな。ナビィの能力で再現してもらっているのだが、いくつでも表示することが可能で、簡単に移動させられる優れものだ。


 全部の音声も拾えるのだが、そうするととてつもない事になるので、音声に関してはメインに見ているモノ以外は、動画配信サイトのチャット欄みたいに、右側に表示されるようになっていた。



 余談だが、この時代では、個人による生配信はほとんど無くなっている。個人では儲けを確保できないから、廃れていった感じだ。放送局というのも無くなり、いくつかの団体がまとまって放送しているようだ。


 ニュースは随時流れているので、自分で興味のあるものを見る感じだな。


 各街が通信で繋がるのであれば、視聴者は増えるのだが、今現在街間通信に成功していない。


 無線も短距離でしか通じず、街の間に通信の中継塔を立てても、すぐに壊されてしまうため、街間の連絡は映像や音声、文字データを人間が運ぶ形だ。



 追加でニュースサイトのような場所にもリークをして、情報板にかき込みもしたが、やはり動きは良くない。上の人間が、なかなかゴーサインを出さず、眉間にしわを寄せているだけだ。


 ここまですれば、もう少し動きがあるかと思ったが、証拠などがあっても街を守る人たちは動かないようだ。こんな人たちでも、街にモンスターが襲ってくればしっかり働くんだよな。


 住民に書き込まれている内容としては、捕まえろという声が大半だが、なかには動きづらい事も理解できる……という内容が、同時にかき込まれている。


 おっと、気付いたら不良ハンターが、すぐに書き込みを発見して、自分の事では? と思い、街から逃げる準備を始めていた。


 捕まる前に逃げれば、他の街では手出しをし難くなるから、判断としては正しいだろう。


 この街で起きたことを共有するが、捕まえるか放置するかは、たどり着いた街次第なんだとか。多くの場合は、優秀なハンターであれば放置だが、度が過ぎたり懸賞金がかかっていれば、捕まえる形なんだとか。


 放置とは言っているが、悪さをすればすぐに捕まえられるように、監視されていたりするので、元の街と同じように悪さをすれば、すぐに捕まる可能性が高いらしい。


 街を守るために、優秀なハンターが欲しいのは分かるけど、犯罪を犯していたハンターを監視するだけっていうのは、アルファの感覚だと理解できないな。


 逃げだす準備はしているけど、どうやって街から出てくのだろうか? 乗り物が無ければ、次の街へたどり着けないだろうし、乗り物を使うなら正面から出ていくしかない。


 動き出す前に、逃げてしまおうって魂胆か?



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