第13話

 目を覚ますと……昨日無理をしたためか、体中バキバキになっている。筋肉痛にもなっているし、昨日気付けなかった怪我までしていた。かなり無理をしたので、体のあちこちに怪我をしていたようだ。


 かすり傷程度なので、ここから病気にかかったりするようなことはないだろう。


 日課のストレッチを始めるが、何か変な感じがする。体を動かすことは何の問題もないのだが、気分的な違和感がある……原因が分からないこの不安感が、俺の体を蝕んでいく。


 ……リュウの記憶にもアルファの記憶にも、こんなことは一度もなかった。


「ナビィ、俺の体に傷や怪我意外に身体的変化はあるか?」


『少しお待ちください。旧世界の使われていないリソースを引っ張りだして、スキャンに力を注ぎます』


 ナビィは簡易的にだが、俺の体を調べることが出来る。雑談の時に教えてくれた能力なのだが、これは俺だけでなく他人にも同じことが出来るのだとか。


 CTやMRI程正確ではないが、旧世界では医者の診察を自宅で受けれるようになっていたらしく、簡単な検査をできるシステムが張り巡らされていたらしい。


 その機能をフル活用して、自分だけでなく他人のスキャンも可能なんだとか。


『いたる所に筋肉疲労と擦過傷などが見られますが、それ以外に目立つモノはありません。心拍や内臓機能も大きな変化はありません。ですが、少しだけ頭部に熱があるように見受けられます』


 頭部に熱……違和感の存在はそれか?


 ペタペタと顔や頭を触ってみるが、ほのかに暖かく感じるだけで、他には特に何も感じられない。


「なんかが変だな……こういう時は、どうするのがいいと思う?」


『そうですね……遺物探索は焦らなくてもできますので、今日はゆっくり休んでみるのもアリではないでしょうか?


 不安や違和感があるのであれば、無理をする必要はありません。現場で何が起こるか分かりませんので、万全を期していくべきだと思います』


 どうせ1日2日で終わる話でもない。状況によっては1週間、1ヶ月とかかる可能性だってある。ただでさえ貧弱な体なんだから、精神状態くらいは万全にして向かうべきだよな。


 昨日体を酷使したから、体の方にも問題があるし、今日は配給を受け取ったら寝るか。



 配給を受け眠りについていると、アラート音で起こされた。


『リュウ、危険があるわけではないけど、気になることを発見したので、起こさせてもらいました』


 俺が目を覚ますと、ナビィの合成音声が聞こえた。


 すぐに寝る前の違和感が消えていないか確認され、確認するとまだ違和感がべったりと体に張り付いているような感じだった。


 その可能性として、いくつかの映像が映し出された。


 あの不良ハンター3人組が使った発信器の情報を見つけた同類のハンターが、その情報を探っていたらしい。


 あの発信機は、昨日の段階で壊したので、俺の居場所などを掴むことは出来ないが、メモが残っていたようで、そのせいで俺を探し回っていたようだ。


 しばらく監視される可能性がありそうなので、もう一度通信機を使って、不良ハンター3人組のように排除した方が、安全だろうとのことだ。


 確実な証拠があって俺を追っているわけではないので、立て続けに同じようなことが起きても問題ないと、ナビィは判断しているようだ。


 いくら偶然だったとしても、スラムに住んでいる孤児に何が出来るか……って話だからな。


 まだ日が沈む前なので、さっさとリークしてしまおう。


 通信のできる場所へ移動して、ナビィに集めた情報をサクッと流してもらう。相手が不良ハンターでなかったら、到底できない事だったな。


 悪いやつらは、考え方も似るのだろう。使い捨てとはいえ発信器を付けたという事は、金の匂いを感じ取っての事だろうから、その相手を探そうと思ったのだろう。


 俺が寝ている間に、俺とあいつらが遭遇したところにも足を伸ばしており、手掛かりがないか探していたようだ。


 ナビィってAIとかではなく、俺の特殊能力みたいなものだよな? 自発的に色々してくれるのは感謝だけど、どうやって学習しているんだろうか?


 俺の脳内にナビィがいたりするのか? それとも俺がどこかと繋がっていて、そこにいる何か……だったりするのだろうか?


 シリコン生命自体が謎過ぎるから、俺の体の中にそいつらがいるのかもしれない。モンスターのように侵食されるわけではなく、共存という形を選んだ群体かもしれない。


 ……ん? 何で急にこんなこと考えだしたんだ? ナビィが便利過ぎるけど、得体のしれないものを使いすぎるなってどこかで考えてる?


 いや、確かに良く分からない存在ではあるが、俺を助けてくれる大切な仲間なんだから、疑ったら失礼だな。


 ただ自分の事は気になるから、ナビィに少し調べてもらうことにした。


「ナビィ、今までにナビィのように、色んな情報にアクセスできるような能力の持ち主がいたか、探せたりしないか?」


『えっと……私と同じような存在がいたか? ということですね。全部の記録を調べるとなると、時間がかかりますので、気長にお持ちください』


 だとさ。この街だけでなく、旧世界のデータも、他の街のデータも調べるから、いつ終わるかは分からないらしい。


 ってか、やっぱり生きている他の街もあるんだな。


 現代のネットワークでは繋がっていないが、旧世界のネットワークを経由して、現代の街のネットワークに侵入するらしい。


 ん? リアルタイムで他の街の情報が手に入れられるって、かなりすごい事じゃないか? どうやって知ることが出来たか説明できなければ、信用されないとは思うけどな。


 最悪な事を考えれば、街の偉い奴らに捕まって、奴隷のように一生こき使われる可能性だってある。むやみやたらに口にしていい能力じゃないな。


 ただ、今回のようにイニシアティブをとれることは、かなり有利に立ち回れる能力だな。


 ナビィが、追加の不良ハンターのデータを各所に送りつけ終わり、自分のアジトへ向かう。


 体の違和感は消えないが、今日はゆっくりすると決めたので、もう一度寝ることにした。



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