第11話
マンホールの蓋をこのまま持ち上げると、スコップが落ちてしまう可能性があるな。となると、支えながら持ち上げるか?
てこの原理を使っても、俺が通れるだけの隙間が作れないから、マンホールを持ち上げる以外の選択肢はないんだよな。
後は、手の届く範囲につっかえ棒のようなものがあれば、また話は変わってくるか?
スコップをグリグリと動かしながら、外が見える隙間を一生懸命覗く。
手の届く位置には特に何もなかった。ナビィのアシストで大体は分かってはいたが、やはりないとなると自分の力だけで持ち上げるしかないか。
10分程悪戦苦闘すると、スコップを横から縦に変えることができ、隙間が一気に広がった。まだまだ頭が通るほどではないが、この隙間に肩を入れれて押せば、自分の体をつっかえ棒代わりに押し上げられるかもしれない。
の前に、さすがに休憩しないと、手も足も疲れが溜まってしまっているので、少し休憩が必要だ。
30分程休んで、再チャレンジ。
何回かチャレンジすると、マンホールの蓋を押し上げに成功し、頭を通し体を通した。腰まで通したところで体を反転させ、腕の力でさらにマンホールの蓋を押し上げ足も外に出すことに成功する。
問題は、このマンホールの蓋をどうするかだな。一気に置いてしまうと、大きな音が鳴ってしまうので、マンホールの蓋を移動させてから静かに置くことが求められる……
まだ、マンホールの蓋はぴったりとはまる、そこにあり続けている。まずはここから外すことが必要だ。
蓋を立てる事には成功したが、この蓋はかなりの重量だ。特に成長不良の今の俺の体では、かなり重く感じる。
何とか転がすことで外すことに成功し、少し離れた位置へ転がす。立てたままにできるならそれでもいいのだが、近くに立てかけられる場所が見当たらない。
立てかけるだけなら出来るかもしれないが、立てかけてもそのまま倒れてしまう可能性が高い。そうなれば、俺の命はないだろう。
今は夜で、警戒心が少し緩んでいる時間帯。そんな時に建物に侵入してきた俺を、生かして帰すことはないだろう。
下水道からやってきたことを考えれば、昼間だったとしても生きては帰れないだろう。
近くにクッションのようなものがあればいいのだが、そこまで都合のいいことなど無い。
一気に倒せば支えることが出来ずに、指からマンホールの蓋が落ちてしまい、大きな音をたててしまうことだろう。
マンホールの蓋を倒すことは出来るだろう。だけど、最後に指を抜いた後の床に置くところで、音が鳴ってしまうだろう。
指を抜くところをどうにかすれば……それこそ、適当なモノをはさんで、最後までおろす必要はないか。
よし、良さそうな破片のある場所へマンホールの蓋を転がして、足で移動させられる位置に破片を置き、何とか音を立てずに目的を達成することが出来た。
一応回りを悪人しながらやっていたが、再度周囲を確認する。
視界に映っているマークに大きな動きはなく、俺に気付いている様子は見られない。
通信機への最短距離を通っても、気付かれることはないと判断し、足元に注意しながら通信機の位置まで移動する。
……思ったよりでかいな。携帯やスマホをイメージしていたのだが出てきたのは、週刊少年誌を3冊くらい積んだくらいの大きさだった。
さすがにこれを抱えて梯子を下りることは無理だ。
カバンを取りに帰るしかない。通信機を入り口の近くまで移動させ、自分のアジトへ戻りカバンを持ってもう一度通信機の元へ。
見つかることなく通信機を自分のアジトへ持ち帰ることに成功した。
ナビィに指示をしてもらい、動作確認をしていく。何とか軌道はしているが、出力が弱いようだ。
受信設備のある装置の近くまで移動すれば、問題なく送受信可能なので、例のデータを送ることが出来るとのことだ。
カバンの中に入れておくだけで問題ないとの事なので、その受信機の近くまで行く必要があるようだな。
その場所は……夜に行くには危険な場所なので、明日の昼、ブロックバーの配給を受けた帰り道に、そこへ寄ろう。ちょうど帰り道なので、昼間であれば危険の少ない場所だから。
目を覚ますと、全身がバキバキだった。体をほぐしながら、今日の準備を始める。ナビィは、昨日から準備を始めてくれているので、データを送るのは1分もあれば問題ないらしい。
情報を送る場所も精査しており、同時に6ヶ所へデータを送信すると言っている。
3ヶ所は、一応犯罪を取り締まっている場所ではあるが、癒着や賄賂でまともに機能していない場所だ。残りの3ヶ所の内2ヶ所は、まともに機能しているとは言い難いが、ここまでの情報があれば動くかもしれない場所。
最後の1ヶ所は、この街の執行機関だ。それと同時に6ヶ所へ送った事が分かれば、街としても動かざるを得ないだろう……との判断で、街のニュースサイトにもデータをかき込むらしい。
用意周到というべきだろうか? あの3人がいなくなれば、安心して丘の下へ向かうことが出来るだろう。
日課にしているストレッチをこなし、配給の時間まではナビィと情報を交換する。
いつもと変わらない。配給を貰い、受信機の近くで多めに2分程休憩してから、アジトへと戻っていく。
データを送ってすぐに、6ヶ所の内3ヶ所……何とか機能している場所が動き出した。
ナビィの映し出す映像と実況を聞いて、各勢力がどう動くのか見守ることにした。
例の3人は、ハンターとして街の外へ出ているため、この情報を手にしていない。気付くことがあるとすれば、つるんでいるグループからの情報提供だろう。
動き出した3つの勢力は、まず初めに動いていなか3つの勢力への介入を始めた。この状況になっても動かなかったため、さすがに見逃すことが出来なかったようで、トップの人間が何人か切り捨てられるようだ。
もともと決まっていたかのような速度で決まり、組織の改革を始めた。
関係者や家族が騒いでるようだが、この人たちも下っ端なようで、この街の偉い人たちの子弟の身代わりにされるため、どうにもならないようだな。
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