第9話

『リュウ、ちょっと深くにあるけど、マークしたものを掘り起こして』


 急にナビィからお願いされた。


 マークされたモノは、1mは掘り起こさないと見えてこなそうだ。土を掘り起こすよりははるかに楽だけど、手間がかかることには変わりがない。


 ナビィがお願いしてくるので、それなりに俺の役に立つものなのだろう。


 スクラップの山の中腹あたりなので、崩れないようにしないと、スクラップの雪崩に巻き込まれる可能性があるので、注意して掘り進める必要がありそうだ。


「ナビィ、掘り進むけど、危険がありそうだったら忠告してくれ。強引に掘り進めようとは思わないけど、無理に力を加える可能性もあるから頼む」


 ナビィにお願いして、危険がありそうな時だけ忠告してもらうようにお願いした。


 ガラクタの排除を行いながら、スクラップの山の中腹を掘り進めていく。


 スクラップ置き場の荷物は、基本的による運び込まれており、山の表面側が新しく内側に行けば行くほど古くなる。それでも定期的に処理されるので、1ヶ月以上放置されるようなことはない。


 そのため、俺の行為は奇行に見えなくもないが、昨日の取り残しがあるかもしれないと、掘っているのだろうと周りの孤児たちは思っているだろう。


 2時間かけてやっと掘り起こすことが出来た。


 2時間も頑張った割には、スコップのようなものだったため、俺は落胆することになる。


 ナビィが何を思ってこれを掘り返すように言ったのか分からないが、これなら板に毛が生えた程度のモノだろう。


『リュウ、これは確かにタダのスコップではありますが、この時代のスコップです。今は使えませんが、エネルギーをチャージすれば十分に使うことが出来るモノです』


 この時代に作られたものだと言え、所詮はスコップだ。例えるなら、軍用の折り畳みのような、少し小さめのスコップだ。


『リュウは、このスコップの性能を知らないから、そんなことが言えるんです。エネルギーが無くても、とても変形しにくい素材でできていて、例の丘の扉を開けるのに使えるはずです。


 もしエネルギーがチャージできるようになれば、このスコップの先に特殊なエネルギーを纏わすことが出来て、それを利用すればある程度の壁なら壊すことが出来るようになります』


 壊すことが難しいだけで、壁を壊すことが可能なのは聞いていた。それをこのスコップで出来るとは……


 外壁とかに使われている素材は、コンクリートと呼ばれているそうだが、俺の知っている時代のモノとは別物だ。強化コンクリートとでも呼ぶべきものだろうな。


 その壁を壊せるとは……?


『今の世界は、旧世界の物に比べて劣ることが多いですが、全てが劣るわけではない。特に銃器などの武器などは、今の世界の方がはるかに強力になっています。


 強力に進化させないと、モンスターに対抗できなかったという事です。


 モンスターを倒せるようになってからは、旧世界の遺産を探すために、携帯する作業道具の進化があり、その1つがこのスコップという事です』


 一度技術が確立されたモノであれば、簡単に改良ができるようになるから、武器から進化するのは、分かりやすい人類の成長だろう……とナビィが追加で話してくれる。


 アルファの住んでいた時代でも、戦争が技術を進化させる要因の1つだと、よく言われていたから分からなくもないな。


 とはいえ、むき出しのままスコップを持っているのは、さすがに警戒されるか……グループに所属していない俺なら、多少の武装なら問題ないか?


 できれば、鞘のようなモノが欲しいが、ごみとして捨てられたこのスコップにそんなものはない。適当なゴミを拾って、空いている時間に身につけられるようにするか。


 スクラップ置き場は基本的にリサイクルができるモノ……金属やガラスなどが中心だ。上級階級の人間は、スクラップ置き場=ゴミ捨て場という認識で、革製品などを回収させる奴らもいるので、探せばそのうち見つかるだろう。


 革製品を探すのは良いけど、切ったりするものはもっていないから、それに代わるものを探す必要があるか……


「ナビィ、皮製品の加工に使えそうな、穴あけや鋭利な金属、ハサミとかハサミに変わるモノがあったらマークしてほしい。皮の加工って、結構面倒だったはずだからさ」


『了解です。ですがこのサイズであれば、カバンの中に入れることも可能だと思いますが、それではダメなのですか?』


 ナビィに質問されるとは思わなかった。


「しばらくはそれでもいいけど、荷物を詰めるカバンに余計なものを入れたくないんだよな。持って帰れるものが減るだろ? 可能なら、2個3個ってカバンを探して、まとめて持ち帰れるようにしたいな」


『カバンに入れれば、邪魔になるってことですね。ここにはボロボロのカバンならありますが、使い物になりませんからね。良さそうなのがあれば、マーキングします』


 スクラップ置き場で作業すること6時間、今日の収穫はスコップだけか。疲れた体でアジトへ帰っていると、ナビィが止まるように文字で警告してきた。


 俺は、自分の命が狙われていると思い、周囲を確認してしまった。


【落ち着いてください。襲撃ではありませんが、人に聞かれないために文字にしています。


 止まっていただいたのは、すぐ近くにですが微弱な電波が飛んでいるので、調べるために止まっていただきました。壁にもたれたりして、休んでいる風に装ってください】


 通信機があるかもしれないのか……ここのテリトリーって、どこの組だったっけな?


 この街のスラムは、大きく分けて4つの勢力がある。結構適当ではあるが、東西南北を拠点としている勢力がある。東がイースタン、西がウェストランド、南がサウストン、北がノーランドと呼ばれている。


 各組織は独自に別の名前を名乗ってはいるが、街が管理するために使た名前なので、一般的にはこの名前が使われている。


 スクラップ置き場はスラムの南西にあり街に近いエリアで、俺のアジトはサウストンとイースタンの間あたり。となると、ここらへんはサウストンの縄張りか……


 スラムでは、トラブルさえ起こさなければ、比較的安全に通ることが出来るが、注意が必要なことに変わりがない。休む分には、今の所問題ないよな?



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