第8話

 通信機を探して3日が過ぎた。


 やはり状態の良いモノを見つけるのは、困難だった。3日で10個以上の通信機を持ち帰っているが、そのどれもが壊れており、道具無しで修理することは難しかった。


 ナビィが直し方を教えてくれるのだが、通電などを調べることが出来ないので、修理が必要っぽく見えるところだけの修理しかできないんだとか。


 それで直る可能性はあるかもしれないが、時間の無駄だし道具が無ければどうにもならないので、ストレッチや休憩の時間にあてている。


「ナビィ、通信機見つかると思うか?」


『確率で言えば、見つけられる可能性はありますが、高くはないですね。クズハンター3人組は、狩りへ行っていても何度も位置確認をしているようなので、今動けば間違いなくトラブルになりますね』


 1日に何回か俺のいる位置を確認するだけでいいから、大した手間ではないし、運が良ければ金になるくらいの感覚なんだろうな。


 ハンター業だけでも生活に困らない程度には稼いでいるみたいなので、スラムの孤児を相手に遊び感覚かもしれない。


 あの3人組は、ハンター業以外にも後ろ暗い仕事もやっていた。というよりは、ハンター業だけで真面目に稼いでいるハンターは、全体のおよそ半分。残りの半分の内6割ほどが後ろ暗い仕事を手伝っている。


 後ろ暗い仕事にも暗さがあるのだが、明らかにこの3人みたいにブラックな仕事をしているのは、6割の中の半数ほどらしい。


 暗くなればなるほど受け取れるお金が増えるが、その反面罪が重くなるので、黒くてもリスクを考えて行動しなければ、身の破滅が訪れるだろう。


 残りの後ろ暗い仕事というのは、借金を返すためにやらされているハンターたちのようだ。後ろ暗くない仕事をやっているハンターの4割も、大半が知らないうちに仕事で関わっているが、もし捕まったところで罰金で済むようだ。


 ハンターの仕事を請け負う本部のような場所で、割のいい仕事を受けるとそういう事があるんだとか。


 そんなことを調べていたら、ナビィが


『この街の上層部、所謂上流階級の人間の当主や家の中で偉い人たちは、大半がこの後ろ暗いハンターの仕事に関わっているのだから、本当に質が悪いですね。 調べれば調べるほど、犯罪の証拠が出てきてうんざりですね』


 だとさ。


 それを取り締まる自治機構のお偉方に、そう言った人物の身内がついているので、足の引っ張り合いをしない限り、訴えたところで冤罪と言われて、その罪を被されるだけなので、注意が必要だといわれた。


 情報屋をするにしても、こういった輩からの依頼は注意が必要だとナビィに言われた。


 依頼して仕事をこなした対価に、暗殺されるという事もあるので、本当に注意が必要なんだとさ。


 いつの時代も権力者側の人間は、質が悪いな。


 ストレッチ中は探し物ではなく、こういった情報を集めているんだよな。いずれは、必要になる情報だと考え、ナビィが集めてくる情報を聞いている感じだ。


 四六時中探し物の通信機の話をしていると、気が滅入ってくるので気分転換に俺がお願いした事でもある。


 こういった犯罪の情報だけではなく、この街で知っておいた方が良さそうな情報を、ナビィが優先順位をつけて放してくれる感じだな。


 この時代の事を知らないことが多いので、このような情報も集めておかないと、話についていけなくなるかもしれないと、考えている。


 することも無くなり、明日へ備えて休むことにした。



 4日目の通信機探しを始めるために、行動を開始する。


 お昼までは自宅で待機して、お昼のブロックバーの配給を受けて、準備を進めスクラップ置き場へ向かおうとしたときに、


『スクラップ置き場に、例の3人組の1人が来ています』


 何をしに来ているか、確認という事だろうか?


「3日続けて向かっているところに行かないのは不自然か?」


『今日で4日目ですので、休みを挟むのはおかしくはありませんが、これからも来るたびに隠れていると、不自然に思われると思います』


 だよな。今日だけならたまたまで済ませられるが、毎回遭遇しないようにしていたら、絶対に怪しまれるのは間違いない。


 危険度としてはそこまで高くないので、変な疑いをもたれるよりは、変わらずにスクラップ置き場に行くべきだろうな。


 もしスクラップ置き場で何かあれば、スラムの武装集団がそいつらに報復する可能性があるので、めったなことが無ければ手を出すことはないだろう。


 スラムのグループは、お互いに殺し合ったりすることはあるが、外的要因によってスラムの人間が害されると、団結してその者に対して制裁を加える。その害された相手が、自分たちを攻撃する相手でも、団結して制裁をする。


 それは、どこにも属していない俺でも、同じなんだとか。だけど一歩スラムを出てしまえば、そういう事が無くなるので、注意が必要だ。


 スラムより街の人間の方が有利な気もするけど、ハンターの中にもスラム上がりのハンターがいて、トップクラスのハンターも制裁に出てくるので、気軽に手を出してくることはない。


 トップクラスのハンターも出てくるため、街は黙認している状態なんだとか。トップクラスのハンターの中には、街を半壊させるくらい強いハンターもいるので、度が過ぎなければ目をつぶるんだとか。


 街側にも強い人間はいるのだが、事態が収束するまでに街の機能が失われかねないので、こういう状況になっている。


 権力でも暴力でも財力でも、力があれば多少の問題は解決できてしまうんだな。俺もいつか、そっち側に行ってやる……


 緊張しながらスクラップ置き場へ行く。入る前に来ているクソハンターの位置が分かった。特に何かをしようというわけではなく、本当にここに見に来ただけだろう。でなければ、堂々と姿を現してないだろうな。


 10分もすれば、興味を無くしたのか帰っていったので、ここで何かしているのかは理解したようだ。


 しばらく探していると、ナビィが興味深いものを発見したと報告してきた。



★☆★☆★☆★☆★☆


 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 『フォロー』や『いいね」をしていただければ、モチベーションにもつながりますので、よろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る