第4話

 3時間ほどひたすらに岩などを取り除いていくが、この体では効率が悪かった。一応、扉のような壁は見つけることが出来たが、20cm程しか顔を出していない。


 これでは開けることもできないので、今日の所は入ることは難しそうだな。


 最大の救いは、この入り口が少し入り組んだ洞窟のような先にあった事だろう。簡単に見つかる場所にはないし、俺の体格でやっと入れる場所なので、大人には入るのは難しいだろう。


 スラムの子どもたちなら、俺と同じような体格の子どももいるので、休憩場所として使われている可能性は、ゼロではないだろう。


 入り口が狭いせいで荷物を運び出すのが大変なんだよな。小さな石でも数多く持って出られないので、入り口を掘り進めるのに時間がかかっている。


 簡単に見つからないように石を積み上げて、入り口を隠しておこう。


 穴から出て、街の中に入る下水道の位置を確認する。


 街の壁からは、およそ2kmほど離れているようだ。思ったより遠い位置にいたんだな。人や魔物を示す赤いマークが、結構早い速度でいくつも移動しているのが分かった。


 乗り物に乗って移動している人たちだな。そのなかで、いくつかゆっくりした反応なのが、俺と同じスラムの人間だろう。


 ナビィの話では、俺の出てきた入り口以外にも、3~4つは入り口が存在しているとのことだ。


 スラムのグループは……おそらく4つ。そこまで多いわけじゃないんだな。いや、確認できる範囲で4つっていうのは、多いか?


 俺たちの住んでいる街の人口が、およそ500万。増えたり減ったりはするが、このあたりで推移しているらしい。


 人口は、自動的に割り振られる管理情報を元に統計を取っているので、間違いなくこの数字はあっている。


 地下道で人とは遭遇したくないので、しっかりと4つのグループの動向しっかりと確認しながら、他の人間にも注意をする。


 ナビィが感知範囲を広げて、しっかりとサポートをしてくれるので、今日俺が街の外に出たことを知る人間はいないだろう。


 4つのグループの最後のグループが、下水道の半分を過ぎたあたりで俺も下水道へ入り、自分のアジトへ戻っていく。


 ナビィの案内で、アジトに一番近い出口へ誘導してもらうと、俺のアジトから目と鼻の先にあった。


 直線距離で20mもない位置だったので、驚いたものだ。しかも建物の中であり、出入りするのに人目につかないのは、かなり有利ではないだろうか。


 今日の進み具合を考えると、中に入れるのは数日後だろう。あの中にはかなりの物資があると思う。俺基準だから、ハンターをしている人間からしたら微妙かもしれないが、近場に金になる場所があると分かれば、根こそぎ持っていかれる可能性は高い……


 売りに行くのは、俺が回収できる範囲で物資を回収してからだろう。


 時間を考えれば、夜も活動ができた方がいいのだが、モンスターは何故か夜になると狂暴性が増して、街の近くまで移動してくるらしいので、ハンターでもないのに夜の行動は無謀に近いだろう。


 入り口が狭いアジトの中で、色々考えていると、ナビィがそろそろ寝るように促してきた。


 お前は俺のオカンか? そう思わなくもないが、体が不完全な成長をしている今、無理をすればすぐに死んでしまう可能性も高い。


 調べた範囲では、病院で遅れた成長を正常に戻すことも可能だし、強化外骨格ではなく体を機械に作り変えることも可能らしい。俺の中では、かなりSFチックなものだな。


 できれば肉体は生身でありたいが、生きるために必要であれば、最悪機械化も考える必要がありかもしれないな。


 理屈は分かっていないが、全身機械化は最終的な強さで言うと、鍛えられた生身の人間を越えられないらしい。


 強度うんぬんの話ではなく、反応速度の問題らしい。機械に勝てるわけないだろうと思うが、ハンターの中でも覚醒者と呼ばれる人たちは、戦闘においてのみなのだが、機械より鋭い反応を示すらしい。


 その反応速度を強化外骨格で底上げし、全身が機械のハンターより成果を上げるんだとさ。


 とはいえ、超人と呼ばれる人たちの肉体強度は、俺の住んでいた時代から考えればあり得ないものだ。生身なのに、機械化ハンターの中級者上位の肉体強度を持っているので、そのランクの銃器では痣ができるくらいのダメージしか与えられないらしい。


 寝るように促されたのに寝ないため、再度促された。


 久しぶりにガッツリ動いたので、体は疲れている。しっかりと疲れを取らないとな。明日は、入り口発掘の続きをする必要があるからな。


 先ほどまでは目が冴えていたのに、眠ろうと思ったところ、すぐに睡魔が襲ってきた。やっぱり、疲れていたんだろうな。すぐに眠りに入ってしまう。



 朝目が覚めると、体の疲れは問題なかったのだが、未発達の体を少し酷使してしまった影響か、筋肉痛になっている箇所があった……本当にもろい体だな。


 運動不足の中年より筋肉痛になりやすい体ってどうなのさ……


 そんなことを思わなくもないが、小さなころからスラムに住んでいる人間の大半はこんな感じらしいので、考えるだけ無駄だな。


 銃を撃つのにも、しっかりと鍛えなければ、反動で骨が折れることもあるそうなので、銃器を使うようになったら注意が必要だな。


 良く分からん食料のブロックバーの配給までは、まだ時間がある。今後の事を考えて、ストレッチでもしておくか。継続すれば体は柔らかくなるし、柔軟性が増せば体への負担が減るっていうしな。


 ナビィに簡単に説明すると、どこかから拾ってきた映像データから、立体英道を視覚内に映し出して、適切なストレッチの仕方を教えてくれる。


 気になると言えば、何故か美女の立体映像なので、目のやり場に困るくらいだ。歳の所為か、美女の際どい立体映像だったとしても、性欲がピクリとも反応しない。


 アルファの記憶を辿れば、ある程度の性欲は持ち合わせているはずなので、リュウの精神や体の影響で、性欲がないのだろう。


 何はともあれ、無駄な欲求が無いという事は、助かる要因でもあるのでこの体に感謝だな。


 人間の三大欲求の内2つが満たされてないのに、良く精神的なバランスを崩さないものだな。歳を考えても、性に興味を持ち始める時期なのに……もしかして、この時代だとこれが当たり前なのか?


 疑問に思っていると、ナビィが情報を拾ってきてくれた。


「人口が減っているからといって、性犯罪が無くなるわけじゃないし、そっちの店もしっかりと存在しているんだな。もちろん、異常な性癖の持ち主が猟奇的な事をしているのも、この世界でもあるんだな」


 映像ではないが、金持ちの歪んだ性癖の極秘ファイルのようなものを、ナビィが探して持って来てくれた。



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