第8話『異常事態2』
「あいつなにやってんだよ!」
俺は蒼太が走り去っていったあと、小石を蹴飛ばしてイライラを発散した。
「…とにかく、いかないとやばそうだな。」
そう思った俺は、体育館へ向かっていった。
歩くたびに痛みが走る体に鞭を打って駆ける。
そうしてたどり着いた体育館は変わり果てた姿になっていた。
天井のいたるところに大きな穴が開き、壁が突き破られている。
半壊状態だった。
その原因は明らか。恐怖のあまり動くこともできない生徒たちの前に佇む、化け物。
先ほど遭遇した鬼のような魔物だった。
「ウウウアアエエ?」
先ほどよりも感じるマナが数段強くなっている。
おそらくどれだけマナを使っても奴には傷一つつかないのだろう。
そう予想することもたやすい。それほど、俺の感じる恐怖は増していった。
化け物の気迫に気圧されたのもつかの間、目の前にそれが現れたことで、逆に冷静になれた。
「っはっや…!」
あわてて後方に下がる。
先ほどの一撃で近接戦闘が意味をなさないのはすでに把握している。
俺は深呼吸し、マナを目いっぱい吸い取る。
そしてそれを、魔力に変える。
───────
魔力とは、ほとんどの生物が持つ臓器、マナ変換器官によって体内のエネルギーを消費し、マナが変化したものである。
通常のマナと違い、個人にあった性質へと変換され、効率も飛躍的に向上するため、
少量の魔力であったとしても
「ふうううう。」
少年、八重咲 量弥はマナを魔力へ変換することに長けていた。
そして、それによって得られる恩恵は大きい。
八重咲は魔力を開放する。
彼の魔力は広がり、やがて目の前にいる魔物を覆う。
そして
『gravity』
固有魔法を発動する。
八重咲の固有魔法『gravity』は自らの魔力や体液が付着した対象の重力を操ることができる。
しかし、そのためには大量の魔力が必要になる。通常なら、人一人を覆う魔力を作るのに半日かかるのに対し、八重咲はそれを数十秒で終わらせることができる。
八重咲が固有魔法を発動すると、魔物は体育館の壁に落ちる。
魔物は精一杯抵抗し、もがくが、意味をなさない。
そして、ここからが彼の固有魔法『gravity』の真髄である。
『three times』
そう彼が宣言すると、魔物は壁により強く押し付けられ、苦しそうにうめき声をあげる。
彼の魔力に触れる時間が長くなるほど、重力は大きくなっていく。
「ウウウウウウ」
「ギヤ゛ア゛ア゛あ゛」
魔物が絶叫する。
するとそれの周りを覆っていた魔力が一瞬にしてかき消される。
それに驚愕する暇も与えず、魔物はマナをためる。
そのマナの塊を八重咲のもとに向け、今にも発射せんとしている。
「ガアアア!!!!!!」
そこで八重咲は気づく、このままよけると、この先の生徒が死ぬと。
「っ!こっちだ!!」
八重咲は決して冷酷無比な男ではない。
だからこそ、詰められてしまった。
あわてて方向を切り替え、生徒や教師のいないほうに誘導する。
なんとかマナによる砲撃はよけられた。
が、痛めていた足を無理に動かしたことで、二撃目はよけることはかなわなかった。
魔物が瞬時に彼の目の前に現れる、そして、爪を振り上げる。
肉を切り裂く音が魔物のうめき声とともに響く。
「ッッッ!」
痛みで声が出ない。
しかし、死んではいない。
切られたのは幸い、腕だ。
あと少しでも爪が食い込んでいたら、ちぎれていたであろう。
「アアアアア」
魔物はあたかもうれしいようで声を上げて動き回る。
八重咲はあの瞬間、死を覚悟した。
しかし、死んでいない。
ならばすることは一つ。
「お前を…殺す…!」
もう魔力は練られない。
しかしまだ策は残っている。
八重咲は自らの傷口に手を入れ、血を魔物にかける。
『gravity』
それは体液に触れた相手でも使用可能。
そして、血は、より濃い効果を生み出す。
『
数秒後、圧倒的な加重に耐えられなくなった魔物は原型をとどめられないほどに押しつぶされた。
「…ざまぁみろ」
少年は薄ら笑ってそういった。
───────
やっと戦闘場面をかけたものの、八重咲くんの先頭になってしまいました。
次回こそは、主人公の活躍を描きたいと思います。
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