第6話『嵐の前の静けさ』

「量弥ぁ!助けてくれええ」


 情けない声を上げて、朝一番でそんなことを言ってきたのは俺の親友である張間蒼太だ。


「…なにがあったよお前」


 こんなに取り乱す蒼太は久々なため、何があったのか聞いてみた。


「それがさぁ!とにかくヤバくてやばいことになったんだよ!!」


「やばいのはお前のボキャブラリーだよ」


「とにかく!俺は近々死ぬかもしれない。」


 なんで?


「はぁ?」


 自然とそんな声が出る。

 そりゃそうだ、友人が死ぬとか言い出したら誰でも困惑するだろう。


「そのために昨日会あったことを説明するんだが──」


 どうやら蒼太が言うにはヤバ女(めちゃ美人)に個人情報を特定されたらしい。




 何言ってんだこいつ。


「…おまえさぁ、とうとう妄想こじらせたか?」


「んなわけねえだろ。リアルだよリ ア ル!」


 そこまで言うならリアルなのか。こいつもそんな無意味なウソは言わねぇだろうし。


 俺は顎に手を当て、少し考える。


「ならまぁ、その女とかかわらないほうがいいんじゃないかな?」


「そのうえで何をするかを聞きたいんだよ!お前そういうの慣れてそうだし。」


「ひどくね?」


 こいつなかなか言うなぁ。

 話から脱線するところだった。


「まぁとにかく。相手がアプローチをしてこない限り、見かけても絶対反応しないことだな。」

「そんなもんかなぁ…」


 俺だってわかんねえよ!だいいち、お前変な女に好かれすぎなんだよ!


「あ、やべ。俺宿題やってねえわ。」


 蒼太は唐突にそんなことを言い出す。


 こいついろいろと抜けてるんだよな。


「ま、もうすぐホームルームも始まるし、席に戻るか。」


 俺がそう提案したことでこの話は終わりになった。


 一時間目は魔法訓練。通称『魔訓』だ。

 今日は初級~中級魔法の練習をするらしい。


 俺ら男子は教室で、女子は特活室で着替える。


 ぱっぱと着替えて訓練場へ行く。


「今日は初級魔法の復習。中級魔法の習得を目指すぞ。」


 教科担任はそう告げ、魔法の使い方を説明する。


「まぁ知ってるとは思うが中級魔法の場合はとくに、魔法を使う前に、一度深呼吸してマナを取り入れるのがおすすめだ。」

「そして、使いたい魔法の性質と構造をイメージする。」


「土属性、石弾せきだん


 教科担任ががそういうと、指先に石が集まり、それが前方に飛ばされる。


「これは中級の魔法だが、慣れないうちは声に出しておくと成功しやすいぞ。

 それと、くれぐれも人に向けるなよ。」


 そんな説明が終わると、それぞれが練習を始める。

 この授業だけはみんな真面目に受けるのだ。

 なぜか、それは楽しいからだ。


 といっても俺は中級まではつかえるから特にやることはないんだがな。

 まあでも復習はしとくべきか。


 そう思った俺はとりあえず使える魔法を片っ端から使っていった。


「やべぇ、疲れた。」


 授業が終わるころにはすっかり息が切れてしまった。


 そのあとは国語、社会、英語…と主教科が続いていった。


 受験まであと2か月。

 もう大詰めだな。


 蒼太は…たぶん心配いらんな。あいつあれで意外と頭いいし。


 このまま何事もなく受験できるといいんだが…

 どうにも嫌な予感がする。


 大規模な地震のうわさもされてるし、最近はうちの町でのきな臭いニュースが多い。


 本当に何も起こらないことを願うばかりだ。


 ──────

 あとがき


 次回からはやっと本格的に魔法を使ったバトルになると思います。

 今のとこは蒼太と量弥についてわからないと思いますが。どんどん掘り下げていく予定ですので、よろしくお願いします。

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