第3話『2つ目』

 12月になった。


 そろそろ受験も近くなって来たというところだ。


「はぁー。どこ受けよう。」


 あのアイス事件以来、量弥は命令してないし。


「お前、受ける高校決まったのかよ。」


 量弥が俺に聞いてくる。


「受けるとこぉ?決まってねぇよ。」


「まぁ、そこそこのとこ行くよ。」


 実際そのつもりだ。

 圧樹の生活費とかも払わにゃアカンし、あんま金かかる私立とかにいってられん。

 あとバイトはオーケーなとこかなぁ。


「ならさ、一緒にここ行こうぜ!」


 そう言って量弥はある学校のパンフレットを見せてきた。


「え…」


 俺はそれを見た瞬間固まった。


 目の前のパンフレットには

白魔学園しらまがくえん』と、でかでかと書いてある。


「マジで言ってる?」


 俺がこんなリアクションをするのも理由がある。

 この学園は倍率がとんでもなく高い上に試験がとっても鬼畜。

 まぁその分卒業後は中々いい職につけるのだが。


「じゃ、これ2つ目な。」


「俺が聞くとでも?」


「あっれー?いいのかなぁ?お前の妹ちゃんに君が妹モノが好きなのバラしちゃうよ〜?」


 は?え?は?


「なんで知ってんだよ!?」


「桃源に聞いた。」


 桃源というのは俺の幼馴染である桃源 佳奈とうげん かなの事だ。


「アイツもなんで知ってんのかなぁ?」


「部屋入った時にそういう本があったらしい」


「ナチュラルに不法侵入じゃん。」


 ちょっとあいつに対する恐怖心が高まったわ。


「ま、とにかく!ここ受けるぞ。」


「…へいへい。」


「じゃ!明日から特訓な!」


 そうして謎の約束が交わされた。

 問題はその帰りである。


 ​───────

「やめてください。」


 路地裏で女性が男性数人に囲まれていた。


「いいだろ?嬢ちゃん。優しくするからよ。」


 うわぁ。ああいうのをmonkeyって言うのかな。


 無視しようとしたのだが、さすがに人間としての倫理観が素通りすることを止めた。


「…ぎり勝てるかな?」


 そう呟きながら俺はmonkeyたちの前に行った。


「すいません。さすがにこの方が嫌がっているので、あまり宜しくないかと…」


 俺がそう言うとmonkeyの1人が俺の胸ぐらを掴んできた。


「なんだ?このガキ!」


 そう言って俺の腹を殴る。


「ゔっ。」


 俺はその場に崩れ落ちる。

 助けようとしていた女性にも心配されてるし

 我ながら情けない。


「チッ!ヒーロー気取りがよ!」


「もっと奥行こうぜ」


 monkeyこと男たちは俺を罵倒しながらどこかへ行こうとする。


「すとーっぷ」


 ​俺がそう言うと男たちはその場で動かなくなる。


「パンチって結構いてえな。」


「さーて。」


 俺は男に近づきながらこう言う。


「俺を殴ったの、お前だよな?」


 そう言って、空気中から取り込んだマナを全身から放出する。

 一応威圧感を出すためだ。


「ヒッ」


 小さく、男が悲鳴を出す。


 俺は男が動けないように。っつってもビビって動けないと思うが、念の為、髪の毛をしっかり掴んで、腹を殴る。


「ッッ!ゔぉえっ。」


 男が吐き出す。

 そこまで強烈だったのだろうか。

 まぁ、マナで強化しているから妥当ではあるか。


「……まだやる?」


 俺がそう問うと、男たちは一目散に逃げ出して言った。

 俺が殴った男もふらつきながら去っていった


「大丈夫ですか?」


 俺は人あたりの良さそうなスマイルを顔に貼り付ける。


「っ。はっ、はい!」


 少し返事が遅かった気もするが、まぁ大変なことになりかけてたので仕方ないか。


「もう暗くなるので帰った方がいいですよ。」


「あのっ!ありがとうございました!」


 ……


「じゃあ。さようなら。」


 俺はそう言って路地裏から出ていった。


 今日の晩飯なんだろ。

 そう考えながらかえった。

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