第2話『gravity』
「おーにーいーちゃーん?」
寝起き早々、我が妹が拳骨を構えていた。
あのあと、ゲームをしていたら結局寝落ちしてしまった。
そのおかげで今、面倒見の良い妹に殺されそうになっている。
「あれだけ夜10時以降はゲームしちゃダメって言ったのになんでしちゃうんだろうね?」
あぁ。やってしまった。
「まーた押し潰されたいのかな?」
いきなり目のハイライトが消えた。
ヒェェ
そう、我が妹である
いつもはいい子なんだけどね…
「ま、とにかく、早くご飯食べて、冷めちゃうから。」
俺たちには親がいない。
だから今は両親の遺産と俺のバイトの収入に頼って生活している。
「わかったよ。圧樹」
身支度をして下の階に降りる。
いつも通り、圧樹の料理が並んでいる。
「「いただきます。」」
食べ始めて少し経つと圧樹が俺の顔をまじまじと見る。
「どうした?圧樹」
「美味しい?」
「あぁ。美味いよ。毎日食べても飽きないし。」
「え、そんな、結婚してこのご飯を毎日食べたい?無理だよ、私たち兄弟だから。」
「でも、お兄ちゃんが一緒にいたいなら、私はいいよ? 」
「そこまで言ってない。」
と、こんなやり取りをほぼ毎日している。
うちの妹怖い…
「じゃ、行ってくるね!お兄ちゃん!」
妹は委員会とやらがあるそうなので早めに出ていった。
「さ、俺も行くか。」
圧樹が出てから数十分ゴロゴロしてから家から出た。
少し歩くと量弥と出会った。
「お、量弥じゃん」
「あ、蒼太」
「で、お前あの後ちゃんと魔法の練習したんだろうな?」
量弥が俺に聞いてくる。
「…ノーコメント」
言わなくてもわかってるくせにわざわざ聞いてくるのがタチが悪い。
「これでいよいよお前も成績がやばいんじゃないかな?」
「っ!うっせーな!俺は本気出せば余裕なんだよ!」
「お、ガチギレでちゅか?じゃあその余裕(笑)とやらを見せて欲しいねぇ。」
うぜええええええええええ!
「おお!やってやるよ!あぁ?」
俺は短気な方なのだ。
それをいつも逆手に取られて、
「じゃあ、今日のテストで点数が悪かった方が、3回だけ相手の言うことを聞く。な?」
「おう!やってやろうじゃねえか!」
何してんだよ俺ええええ!
負けるの分かりきってるだろうがよ!
2時間目になった。
直ぐに先生からテストの内容が説明された。
今回は10体の魔物の複製体をどれだけ早く魔法を使って狩れるか、というものだった。
「ヤバイ、オワル、シンジャウ」
掠れた声で嘆いていると。
「じゃ、俺の番だから、みてろよ☆」
量弥が追い打ちをかけてきた。
しかし量弥も鬼ではないようで
「さすがに可哀想だから手加減してやるよ」
と、希望の言葉を囁いた。
「あ゛り゛か゛と゛う゛!」
こんなに感謝した日は珍しいかもしれない。
しかしその希望と感謝はテスト開始の合図と共に砕け散った。
放出された魔物を量弥は、ヤツは。
3秒で片付けた。
と、言うのも、あいつの固有魔法である『重力』が原因だ。
あいつは開始の合図とともに通常の数十倍の重力を魔物にかけた。
魔物はもちろんその重圧に耐えられなくなり、頭から潰れた。
先生も口を大きく開き、あんぐりとしていた。
「ツンダ。オレノジンセイモウオワリダ」
絶対あいつろくな事しない。
その瞬間俺は、死を覚悟した。
「次、張間。」
気づいた時には順番が来ていた。
「ハイ…」
小さく返事をして、魔物の複製体の前まで行く。
途中で量弥が
「大丈夫、あんまりダメージのないことにしてやるから!」
と、笑顔で悪魔のようなことを言ってのけた。
「開始!」
その合図と共に、俺は
火属性 《火球》
魔法を使って目の前の魔物を倒した。
初級魔法なだけあって威力は低いが、頭に当たれば一撃だ。
そうして『火球』を打ちまくっているとやめの合図が入った。
「張間 蒼太、15秒」
まぁそこそこだな。
いつもならこれで喜べるんだが、勝負(一方的)があるので全くと言っていいほど喜べない。
「おつかれ!蒼太!」
「ふぅ、じゃ、今日アイス奢りな!」
あれ?思っていたより軽いな。
これならあと2回耐えれるかもしんねえ。
そう思うと少しづつ希望が見えてきた。
その帰り、あやつは300円以上するアイスを買いやがった。
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