gravity tension
さぼてん
序章
中学/異常事態編
第1話『テンション』
この星には当たり前だが重力がある。
万有引力と遠心力とも言い換えられるかもしれない。
この星にいるものはみな、下。正確には星の中心に引き付けられている。
では、今目の前で起こっていることを説明しよう。
雲から覗く太陽、日向ぼっこにちょうどいい屋上、そして目の前には壺がひとつ。こちらに向かってきている。
距離的にはこちらに来る前に落ちるだろう。
本来ならば。の話だが。
この物体は直立している俺、
ん?なんでこんな冷静なのかって?
こんなの日常茶飯事だからだよ。
「…ここでぇ!」
タイミングを合わせ…
「ふんっ!」
ブリッジをする。
と、壺は俺の後ろの壁に当たり、少しはねた後、壁に引っ付く。
「なんで今ので避けれるんだよ、キモ」
壺の飛んできた先から声がする。
とても聞きなれた。忌々しい声だ。
「キモ。じゃねぇ!!」
体をガバッと起こし、声の主を睨みつける。
「あとちょっと遅れたら俺がどうなったか分かってんのか?あぁん?」
俺は日頃の恨みも込めてそいつの胸ぐらをつかみながら言う。
「…別に避けれたんだから良くない?」
そうケロッと言ってのけたのは
爽やかイケメン(クズ)こと
「大体さぁ、お前はいっつも結果論でしか話さないよな、もうちょっと俺の事も気づかうってことも覚えた方がいいぞ。」
「はいはい、メンド」
「あのなぁ…ハァ。」
これ以上言っても無駄だと知っているので怒りを精一杯溜息に乗せて発散させる。
そんなこんなで少し話していると直ぐに休み時間の終わりを告げるチャイムがなる。
「次の時間なんだっけ。」
俺がそう聞くと
「魔訓じゃね。」
と、量弥は答える。
魔訓。とは魔法訓練のことだ。
そう、この世界には魔法という力がある。
俺は嫌いなのであんまし知らんが。
俺は授業中、ぼーっとしていた。
仕方ないだろう。やる気が出ないのだから。
気づいた時にはもうみんな帰りの用意をしていた。
「おーい、量弥ぁ。」
もう帰る用意ができていた量弥に呼びかける。
「あー、はいはい。そういう事ね。」
もう10数年の付き合いになるため、大体察してくれる。基本クズだが、そこら辺はありがたい。
量弥はカバンから男子にしてはやけに綺麗な時のノートを出し、俺に渡す。
「今日中に返せよ。」
そう釘を刺された。
「はいはいっと」
俺は基本嫌いな授業は無駄に時間が長いので聞いていない。
その点、量弥のノートは要点だけをまとめていて、分かりやすく、かつ短時間で終わる。
まぁとにかく。さすがに成績を落としたくないから後でこうやってノートを借りてそれを見ているわけだ。
受験シーズンも近いからか授業の内容は復習になっている。
内容としてはマナと魔力、魔法と固有魔法についてだった。
まぁここはそこまで苦手な訳じゃないが一応読んでおこう。
───────
マナ…空気中にも存在する物質。ほとんどの生物が体内にそれを取り込んでおり、これを使うことで、魔法を使うことが出来る。
魔力…取り込んだマナを体内で自らのエネルギーに変えたもの。これを使うことで、固有魔法が使用可能。
魔法…火、水、雷、風、土の5属性が基本となる。
義務教育を終えるまでにはこの五属性の初級魔法は使えるようになる。
固有魔法…その人にしか宿らない特殊な魔法。
親族間などでは遺伝することもある。
───────
と、まぁこんな感じだった。
正直魔法にはいい思い出がない。
俺が魔訓の授業が嫌いな原因の一つでもある。
「あ、そうだ。明日は受験のために実技のテストするって先生言ってたぞ。」
「ブッッ!」
マジかよ…
やばいかもしれねぇ。
…帰るか。
今更考えても意味ねぇし。
どーせ大した高校行かねぇし。
うん!そうだな、帰ってゲームしよう。
そうして俺は無理にテンションを上げて帰って行った。
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