第七章 偽りの王
■月星歴一五四三年十一月①〈朝の散歩〉
場面切り替えの都合上、七章は短い回が多いです。
この章で一部完となります。
宜しくお願いします。
―――――――――――――
アトラスとレイナが夫婦となって約半年。
二人の朝は早い。
多忙な二人には、なかなか二人だけの時間が取れない。
その為、朝の散歩が日課になっている。
散歩と言っても大仰なものでは無い。
人が動き出す前の僅かな時間、他愛のない話をしながら湖畔の公園迄歩いて、朝日を浴びて戻ってくる。
それだけだ。
だが、その
毎朝、抜け出す様に城を出てくる。
※※※
その日は、月星の大祭が終わり、帰省していたアトラスが戻って来た翌日、久方ぶりの朝の散歩だった。
大祭にはレイナも出席したが先に帰って来ていた。
大祭が婚姻後初の帰省だった為、アトラスには用がある人間が押しかけた為だ。
前年の大祭から滞在していた半年の間に携わった案件の、その後の進捗や確認事項、関連案について話したい等など、なかなか身体が開かなかった。
結局十日以上の滞在を余儀なくされ、竜護星に戻った時には翌月になっていた。
月星とは季節が反転している竜護星ではこれから徐々に暖かくなる頃合いだが、まだまだ朝晩は冷える。
白み始めた空の下、白い吐息を弾ませて何か嬉しそうなレイナ。
理由を聞いても「湖に着いたらね」と教えてくれない。
いつものように、湖畔の東屋に向かう途中、不意にアトラスはレイナをかばう様に背中に追いやった。
「アトラス?」
「三人……てところだな」
それだけでレイナも理解する。
狙われる覚えはいやというほどある二人である。こういう事態も想定の範囲内。二人とも冷静だった。
身構えた二人に刺客の方も気づかれたことを悟ったらしい。
堂々と姿を現した。
アトラスの宣言通り、三人。
いずれも男だが、怪しい格好というわけではなかった。顔が晒されるのをためらう様子も無い。
赤毛に黒髪に茶髪とばらばらだが、肌と目の色素は薄い。
確認できたのはそこまでだった。
申し合わせたように、いきなり戦闘態勢に入る。
だが、方や月星一とまで謳われた剣士とその一番弟子を自称する二人である。
自分の身くらいは守れる自負もある。
夜明け前の湖畔に鋼のぶつかり合う音が響いた。
ーーーーーーーーーーーーー
七章イメージ画(アトラス)
https://kakuyomu.jp/users/Epi_largeHill/news/16818093079400449323
人物紹介はこちら↓
https://kakuyomu.jp/works/16818093076585311687/episodes/16818093079405183440
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます