第5話
私は保険の件で涼子を詰めようと思ったが彼女に迫るのはまだ早いと思い彼女の周辺を調べることにした。
日曜日のグランプリレースに出かけてみると沢山の出場者が受付に並んでいた、涼子が受付のテーブルに座り手際よく出走料の受領やゼッケン番号を渡していた。私もかろうじて受付に並んだ、順番がきて受付に立つと「あらー」と涼子が驚きの声を上げた、私は「せっかく練習をしたんだから1度くらいはね」と返した、
ピットに行くとたくさんの出場者たちが、自分の車の調整に余念がなかった、私もハンドルやエンジンの具合をチェックしながら出番を待っていた。
レースは10台ずつでルールはアメリカのストッカーレースばりで順位がすべてであった、だから走り方は自由であり、相当荒っぽい走り方が展開されていた、
私の出番がまわってきた、横一線に並ぶといきなりスタートランプがついた、みなスロットルを全開にして車のお尻を振りながら加速していく、私も遅らばせなならフルスロットルにして追い上げた、前を走る白い箱スカのスケールカーが蛇行しながら行く手を阻む、これもひとつのテクニックなのかもしれない、とにかく順位をとるためには何でもありのレースなのだ、私みたいな旧態依然の人間にはとても太刀打ちできない、結局なかなか前へ出ることはできなくて最下位に終わった、それでも私みたいな年の出場者がいたことに皆で健闘を讃えてくれた、とくに私の前を走ったハコスカのおにいちゃんは近づいてきて私に握手まで求めた、彼は、「川野です」と自己紹介をしながら「今度、特別なレースがあるから出場しないですか」と、にこやかにもちかけてきた。私は興味があると言わんばかりに「どんなレースなんだ」と身を乗り出した、「すこし出走料は高いけど賞金がいいよ、3位まで入ればまあまあな賞金がもらえるが」「私の腕じゃまだ無理だな、ところで、以前レースにでていたとおもうが柴山春男のことを知っているか、」「ああ、柴山君なら知っているよ、いつも、このレースにはでていたよ、でもあまり勝てなかった、いつも大山さんにかもられていたな、大山さんは少し汚いから、俺と中山が大山さんの車をフォローさせるようなレースを仕組んだこともある、でも今は大山さんがいないからおじさんも勝てるかも」私は彼の目をじっとみつめながら少し笑みを浮かべながら、実はこういうものなんだと警察手帳を見せた、彼は一瞬固い表情をしたが「なあんだ、ちょっとおかしいと思ったよ、こんなとこにおじさんが入りびたるはずはないもんな、潜入捜査ってやつですか、」「いやそれほどの調べじゃないんだ、何年か前の春男の自殺の件だが、先日の大山の聴取でひっかかったことがあったんでね、すこし再調査しているんだ、」川野のそれまでの親近感のある目つきが少し険しい目つきに変わり別人のようになった、私はすかさず言葉を続けた、「春男が死んだ日のことなんだけど、私はどうしても春男があの場所に1人で行くとおもえないんだ、春男はあんな場所、ましてや夜の9時頃に行く度胸があるとはおもえないんだ、当時のことをなにかおもいだせないかな、」川野は顎に手をやって眉間にしわを寄せた、「そういえば店が終わる頃まで3人でいたような、大山と中島だったかな」
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