第3話

 私は春男の行動の軌跡を少し追ってみることにした、春男はラジコンカーと道具箱をもってよくこの店を訪れていたらしい、時折、店主の言うことを聞いて掃除や片づけを手伝っていたようだ、空いた時間にレース場でラジコンカーをはしらせていた。

 後日、私は春男のラジコンカーと工具箱を持ってレース場にいってみた。今日は平日ということで初心者でも走らせることができた、以前に春男と何回かはしらせたことがあるので、かろうじてサーキット内を走らせることができた、一緒にはしっていた小学生の男の子が「おじちゃんうまいじゃん」なんてお世辞を言ってくれた。私も調子に乗ってスピードをあげたりして少しレーサー気分を味わってみた。

 その後私は平日の非番の日にレース場を何度か訪れて腕を上げていった。一緒に走ってくれるものも徐々に増えていき彼らと会話もできるようになった。互角のレースができるようになると、話ははずみ、春男を覚えているものにも出会えるようになり、少し春男の世界に近付いていったような気がした。

 ある日、大山をよく知っているという若者に出会った、彼は大山に誘われて何度も賭けレースに参加したというのだ、レースではほとんど勝つことがなかったという、大山のレースの仕組みを知るまでは時間がかかったという、いつも大山の仲間が大山の車をフォローして勝てるように仕組んでいたようだ。

 また彼は春男のこともよく知っているといった。「春男君はおとなしくて気がいいから半ば強引にレースに参加させられていたような気がする、お金も相当カモられたんじゃないかな」、春男がお金をとられていたところを見たことあるの」「春男君は普段、あまりお金をもってないようでお店の涼子さんが時々貸していたようです」

 私は全く知らなかった春男の一面を知った。春男がギャンブルレースに加わっていたことは夢にも思わなかった。春男は裕福な商家の長男で父親は小学生の時に亡くなってしまった、母親はそれを不憫に思いお金には無頓着に育ててしまったのだろう、そこを付け込まれたのかもしれない、涼子も親元をしっていたので気安くお金を貸したのだろう、私は春男の死にお金が絡んでいるかもしれないと思い周辺の聞き込みをさらに続けることにした。

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