第2話
非番の日、私は聞き込み捜査に出かけた、本来、捜査権はないのだが、どうしても納得がいかない事案なのでペナルティを承知で走ってしまった。
R模型店はT川の土手に隣接していて、広い駐車場がありその一角にラジコンカーのレース場とミニ四駆のレース場があった、レース場は観客席やパドックまであり本格的な設備を備えていた。マニアたちが関東一円からきて連日レースを楽しんでいた、これだけなら何の変哲もないマニアのたまり場なのだが、実態はレースの裏には賭博行為が行われていたのである。
レース場の傍には円筒形をした銀色の店舗があり、その脇の駐車場にはガンメタリック色のドイツ車が止まっていた、近くにいた若者に聞くと社長の車だというのだ、店内に入るとソファーやテレビが置かれていて、模型関係の商品はあまりなく、たまり場という雰囲気だった。奥のほうには半円形のカウンターがあり店長という名札のついた上村涼子がソファーに深々と座っていた。「やあ、こんにちは、私はこういうものだが」と警察手帳をみせ、社長は」と尋ねると、「父は不在です」と白々しい居留守を使い、「あら、刑事さん、がさ入れは終わってんじゃないの」涼子はふてくされながら話をそらせようとした、「いや、別件なんだ、実は柴山春男の件で少し聞きたいことがあるんだ」「あら、春男君、なつかしいわね」涼子はなれなれしい声を出した、「春男君ならよく知っているわよ、、うちでバイトしていたもの」「私は春男の件は納得していないんだ、当時新人の刑事が片付けてしまった案件だが私は春男の叔父なので本人のことはよく知っているし、当日の足取りも腑に落ちないんだ、また今般取り調べ中の大山の一言も気になってどうしても動きたくなった。」私は言い終わるとすかさず涼子の目を見た、涼子は一瞬焦点をずらし虚ろになった。刑事の習性がなにかを確信した。私は涼子を突き詰めようとしたが、焦りを抑えた。今日はこれで帰ることにした。
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