第18話 宝石を付けるのが夢なのは純粋だと思う By銃器人格
「デカいな」
「そうだね。他の商会と比べると、何段階も上の大きさだ。中身も結構あるらしいし、優秀な商会だよ」
加えて、本店とは別の支店も、数多く存在するらしい。エルドラグーン伯爵が贔屓にする理由も分かる。俺だってその立場だったら贔屓する。
商会の規模の大きさを細目で見つつ、俺たちは商会へと入っていく。
扉を開けた先には様々な階段などが広がっており、それだけ置いてある商品の数の多さが理解できると言うもの。
ミリャンはそれに感激しているようだけど、俺が最初に感じた感想は別。警戒心が高すぎる気がする。このレベルの商会だと、警戒するのは全くおかしくない。むしろ、警戒しない方がおかしい。しかし、今はそれを過ぎてる。警戒心が過剰であるから、全員に矛を向けている。
厄介ごとが起きなきゃ良いんだけど。
「なあなあ!あの宝石店に行っても良いか!私、幼い頃からの夢で付けてみたかったんだ。ほら、安いものなら買えるかもしれないだろ?」
「そうか、分かったよ。それじゃ、ミリャンの夢が詰まった宝石店に行こうか」
「やめろぉ!その言い方はなんか恥ずかしい!」
ーーー
流石一際目立っていた宝石店かな。ホールでも清潔感が目立っていたけど、美しさが取り柄の宝石店では更に清潔感が厳重だ。入る時にこっそりと仕込まれていた魔法陣が清潔の魔法になる程。
どれも綺麗で美しい宝石であるから、妥当かな。
「ミリャン、気に入ったのは見つかった?」
「いや、中々選べないな。どれもこれも綺麗なのばかりだ。昔、窓越しに宝石店を見たことがあったのだが、ここの宝石は美しさが段違いだ。魔力が含まれていることで美しさに磨きが掛かっているのだろうが、それでもだ」
やっぱり、来て良かったかも。目を輝かせながら見ている姿は、俺にとって至高そのもの。安い物に
俺的にはミリャンに色々と世話になってるから別に構わないのだけれど。ミリャンは良い子だから受け取らないだろうし。
感謝を伝えるのも贈り物じゃ伝わらない。はてさて、俺はどう選択するべきか。どう頑張っても空回りする予感がある。
どうしたものかな。頬を人差し指で掻きながら思考を続けるが、良い案は浮かんでこない。
ほんと、戦い関連以外のセンスは無いんだよなあ、俺。さっきも一言一言が合ってるかどうかすらも分かっていなかったし。
「アヤト!こっち来てみろ。すごい綺麗なものがあるぞ」
「そんなに騒がない方が良いと思うけど。今から行くから待ってて。……へぇ、純白の宝石か。ミリャンに似合ってると思うよ。綺麗で可愛いから、負けることは無いんじゃないかな。もしかしたら勝てるかもね」
たまにあるのだが、人によっては宝石に着けられていると思わせる人がいる。しかし、ミリャンはそれに当てはまらず、宝石を着けていると思わせる。
そういう意味で「負けることは無い」と言ったのは無事に意味ごと伝わったみたい。……照れで顔を赤面させてしまったけど。
そうか、これって殺し文句になってしまうのか。中々見れる物じゃない美しい宝石相手に、釣り合ってるなんて言ってしまった。それも、宝石が付けるのが夢なんて言ってた子だから、相当刺さっているのかも。
無意識に殺し文句を吐いていた事実に羞恥心が生まれてしまうが、同時に自分への感謝が生まれた。無意識とは言え、殺し文句を吐いていたことでミリャンの照れた姿を見れた。
見惚れるほど可愛くて、綺麗で……心の中に熱が生まれそうになる。よく分からない、今まで感じたことのない未知なる熱。だけど、悪くない気分だ。
頬を少し赤く染めた後、ミリャンの綺麗な黒髪に手をポンと置き、少しの間撫でる。それから言葉を出そうとするが、上手く言葉となって出ない。さっきみたいな無意識ではなく、今は意図して言おうとしているからかな。出そうとなっているのに、喉元で詰まって出ない。
何秒か唇をパクパクと閉じたり開いたりを繰り返し、言葉にする。口説きと言うには粗く、サラッと口にすることはできなかった言葉を。確かに目の前の少女には刺さる言葉を。
「あれ、本心だから。嘘とか、お世辞じゃなくて、本気で思ったこと」
「……嬉しいけど、私はそんなのじゃないぞ。私は宝石みたいに純粋じゃない。美しもない。私の本質はな、醜く汚い物でしか無いんだ。アヤトがそう思う理由も、その私を見てないからでしかないんだ」
「ミリャンが自分でそう言うなら、そうなのかもね。まあ、俺は撤回するつもりなんて無いけど」
ポカンと口を開けるミリャンだけれど、俺にとっては当たり前だ。もしかして撤回をするとでも思ったのだろうか。この異世界に来たから威厳らしい威厳を見せてないけど、俺は王だ。自分の発言には責任を持つし、自分が発する言葉には自信がある。
「分かった。お前が撤回するつもりがないということは。……ありがとう」
「ん」
____
☆作者一言メモ
今のところは平穏ですが、多分次回で荒れます。ちなみにですが、今回の章では綾人くんが主に曇ります。楽しみですねえ(暗黒微笑)。
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